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第二章
春休み④
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母が自分のことのように喜んでくれている。
まさか、こんなに早く返事をくれるとは思っていなかった。手紙をもらうとこんなに嬉しい気持ちになるのだと初めて知った。
初めて手紙を出したのも、初めてもらった手紙も、相手は瑞希だ。
一週間という時間が尊い時間に感じた。
手紙を握りしめ、自分の部屋に戻り目を閉じて深呼吸をする。手紙を持つ手が少し震えている。ハサミで綺麗に封を切り、中の便箋を取り出した。
『由奈ちゃんへ
早速手紙を送ってくれてありがとう。
まだ卒業して数日なのに、小学校が懐かしい気がするね。別れの寂しさと新しい生活への期待と緊張でいっぱいです。僕の行く学校には、同じ小学校の子がいないから、またみんなの様子を気が向いた時に教えてくれると嬉しいです。由奈ちゃんも新しい学校生活頑張ってね。ひとつお願いが……。もし、卒業式の日の写真をプリントすることがあれば、僕にももらえないかな?では、また。
瑞希』
手紙を何度も読み返した。丁寧な字で書かれた手紙は、瑞希そのものだと思う。
卒業式の日の写真は、由奈のスマホに保存された宝物だ。
手紙を封筒に戻し、大切な物を入れる缶にしまった。
そして、リビングに戻る。
「お母さん、スマホの中の写真って印刷出来るの?」
「アプリがあったら出来るわよ。お母さんに送ってくれたら印刷してあげる」
「う、うん。二枚ほしい」
母に写真を見られるのは恥ずかしいが、他の方法がわからない。
「まあ、いい写真ね。みーくんイケメンだわ」
「うん」
すぐに母がプリントしてくれた。
「この写真みーくんママにスマホで送っていい?」
「みーくんにプリントした写真を送るんだけど」
「じゃあ、みーくん本人には内緒にしておいてもらうわ」
「うん」
スマホだと瞬時に届く写真も、プリントして渡そうと思うと時間がかかる。少しでも早く写真を瑞希の元へ届けたくて、部屋に戻り便箋を広げる。
瑞希のことを想い一生懸命手紙を書き、写真と共に封をした。
前回は三日かかった手紙も、すらすらと進みあっという間に書き上げた。
明日、瑞希の家のポストへ入れに行こうと思う。
この間にも手のひらサイズの世界では、ピコピコとメッセージが入り続ける……。
まさか、こんなに早く返事をくれるとは思っていなかった。手紙をもらうとこんなに嬉しい気持ちになるのだと初めて知った。
初めて手紙を出したのも、初めてもらった手紙も、相手は瑞希だ。
一週間という時間が尊い時間に感じた。
手紙を握りしめ、自分の部屋に戻り目を閉じて深呼吸をする。手紙を持つ手が少し震えている。ハサミで綺麗に封を切り、中の便箋を取り出した。
『由奈ちゃんへ
早速手紙を送ってくれてありがとう。
まだ卒業して数日なのに、小学校が懐かしい気がするね。別れの寂しさと新しい生活への期待と緊張でいっぱいです。僕の行く学校には、同じ小学校の子がいないから、またみんなの様子を気が向いた時に教えてくれると嬉しいです。由奈ちゃんも新しい学校生活頑張ってね。ひとつお願いが……。もし、卒業式の日の写真をプリントすることがあれば、僕にももらえないかな?では、また。
瑞希』
手紙を何度も読み返した。丁寧な字で書かれた手紙は、瑞希そのものだと思う。
卒業式の日の写真は、由奈のスマホに保存された宝物だ。
手紙を封筒に戻し、大切な物を入れる缶にしまった。
そして、リビングに戻る。
「お母さん、スマホの中の写真って印刷出来るの?」
「アプリがあったら出来るわよ。お母さんに送ってくれたら印刷してあげる」
「う、うん。二枚ほしい」
母に写真を見られるのは恥ずかしいが、他の方法がわからない。
「まあ、いい写真ね。みーくんイケメンだわ」
「うん」
すぐに母がプリントしてくれた。
「この写真みーくんママにスマホで送っていい?」
「みーくんにプリントした写真を送るんだけど」
「じゃあ、みーくん本人には内緒にしておいてもらうわ」
「うん」
スマホだと瞬時に届く写真も、プリントして渡そうと思うと時間がかかる。少しでも早く写真を瑞希の元へ届けたくて、部屋に戻り便箋を広げる。
瑞希のことを想い一生懸命手紙を書き、写真と共に封をした。
前回は三日かかった手紙も、すらすらと進みあっという間に書き上げた。
明日、瑞希の家のポストへ入れに行こうと思う。
この間にも手のひらサイズの世界では、ピコピコとメッセージが入り続ける……。
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