手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

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第一章

卒業②

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◇◇◇

「ただいまー」
「おかえり」
「あれ?お姉ちゃん、学校は?」
「今日はお昼までだったの」

 由奈の姉の由香は、二歳上の中学生。由奈にとって頼りになる姉だ。一年間は、一緒の中学に通えることが心強い。

「お母さんは?」
「今日は夕方まで仕事だって」
「そうなんだ」

 由奈が高学年になったことを機にパートを始めた母。由奈が帰ってくるまでに帰っていることが多いが、時々由奈よりも遅い日がある。

「明日卒業式だね」
「う、うん」
「寂しい?それとも中学が楽しみ?」
「うーん、どっちもかなぁ」
「なにかやり残したことはない?」
「えっ?」
「なければいいの。ただ、後悔しても時間は戻ってはこないから。迷っていることがあるなら、後悔しないようにね」

 由香は、ずっと由奈が瑞希を好きなことも、瑞希が受験したことも知っている。そして、悩んでいることも……。

 由香も二年前に小学校卒業を経験し、中学生になってもほぼ同じ顔ぶれで何も変わらないと思っていた。が、実際は中学生になり心も体も成長する。小学生から変わらずに仲の良い子もいるが、微妙に人間関係は変化する。同じ学校に通っていても変化するのだ。違う学校になってしまうと接点は全くなくなってしまうだろう。だからこそ由奈には後悔はしてほしくない。

 今はスマホを持っているのが当たり前の時代。

 中学校への進学のタイミングでスマホデビューする子も多い。小学校の卒業式の後は、新しいスマホで連絡先を交換したり写真を撮ったりと盛り上がる。由奈も、先日スマホデビューしたばかりだ。まだ、家族以外では朱里としか繋がっていない。

 スマホは便利だが、揉めごとの種でもある。簡単に連絡を取り合うことができるが、手のひらサイズの世界は奥が深い。

「あと、スマホの使い方に気をつけなさいよ。何かあったら一人で悩まないでお姉ちゃんに言うのよ」
「うん。ありがとう」

 母と同じことを姉からも忠告された。だが、現役の中学生の姉からの言葉は重い。
 
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