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第七章
家族の定義②
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当日、急にお店を休むよりも前もって決断した方が、お客様にも迷惑が掛からないだろうと店長が判断したのだ。
「各地で甚大な被害が出ているけど、大丈夫かしら」
「私の実家も海沿いの町なので心配です」
「そうよね。何もないといいけれど……」
海で亡くなった父を思い出す。父の仲間達が、そして町の人達が無事であることを願う。
湊翔さんからは、早い段階で当分連絡ができないとメールが入った。きっといつでも出動できるように待機しているのだろう。
私には災害や事故に巻き込まれないようにと祈ることしかできない。
私も食料を買い込み台風に備えた。すでにスーパーは、買いだめするお客さんで溢れている。
「七海、手をしっかり繋いでてね」
「うん」
子供を連れて混み合ったスーパーで買い物をするのは大変だ。それでも、数日分の食料を確保する必要がある。珍しく両手いっぱいになった袋を持って家路を急ぐ。
まだ雨は降っていないけれど、湿った空気は生暖かく不快だ。
夜中から横殴りの雨が降り出し、外では轟々と風の音が響いている。時折、イナズマが光りゴロゴロと大きな音が鳴っていた。
「ママ、こわい」
「大丈夫よ」
カーテンを閉めていても光ったのがわかる。小さい七海には怖くて当然だ。大人の私でも、音が鳴るたびにビクッと反応してしまう。
テレビをつけると、どの番組も特番で台風のニュースを伝えていた。関西地方も甚大な被害を受けていて、東海から関東へ向かって本州を縦断している。各地に中継へ出ている人達も危険なほどの横殴りの雨と突風だ。トタン屋根が飛んでいる映像も映し出されている。
「おうちこわれない?」
「ここはマンションだから大丈夫よ」
「ばあばたちはだいじょうぶ?」
「早めに避難するって言ってたから大丈夫よ」
「じゃあパパは?」
「パパは、台風で困っている人を助ける仕事だから、今は忙しいと思うわ」
「パパはせいぎのヒーローだね」
「本当だね」
無人の船が沖合へ流されたりしているニュースを目にすると、どうか大きな災害が起こりませんようにと祈ってしまう。
「各地で甚大な被害が出ているけど、大丈夫かしら」
「私の実家も海沿いの町なので心配です」
「そうよね。何もないといいけれど……」
海で亡くなった父を思い出す。父の仲間達が、そして町の人達が無事であることを願う。
湊翔さんからは、早い段階で当分連絡ができないとメールが入った。きっといつでも出動できるように待機しているのだろう。
私には災害や事故に巻き込まれないようにと祈ることしかできない。
私も食料を買い込み台風に備えた。すでにスーパーは、買いだめするお客さんで溢れている。
「七海、手をしっかり繋いでてね」
「うん」
子供を連れて混み合ったスーパーで買い物をするのは大変だ。それでも、数日分の食料を確保する必要がある。珍しく両手いっぱいになった袋を持って家路を急ぐ。
まだ雨は降っていないけれど、湿った空気は生暖かく不快だ。
夜中から横殴りの雨が降り出し、外では轟々と風の音が響いている。時折、イナズマが光りゴロゴロと大きな音が鳴っていた。
「ママ、こわい」
「大丈夫よ」
カーテンを閉めていても光ったのがわかる。小さい七海には怖くて当然だ。大人の私でも、音が鳴るたびにビクッと反応してしまう。
テレビをつけると、どの番組も特番で台風のニュースを伝えていた。関西地方も甚大な被害を受けていて、東海から関東へ向かって本州を縦断している。各地に中継へ出ている人達も危険なほどの横殴りの雨と突風だ。トタン屋根が飛んでいる映像も映し出されている。
「おうちこわれない?」
「ここはマンションだから大丈夫よ」
「ばあばたちはだいじょうぶ?」
「早めに避難するって言ってたから大丈夫よ」
「じゃあパパは?」
「パパは、台風で困っている人を助ける仕事だから、今は忙しいと思うわ」
「パパはせいぎのヒーローだね」
「本当だね」
無人の船が沖合へ流されたりしているニュースを目にすると、どうか大きな災害が起こりませんようにと祈ってしまう。
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