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第六章

黒い影と嫌がらせの正体⑮

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「でも……」

 常連のお客様がこの投稿で離れていくことはないと思うけど、新規のお客様が減ってしまうことは間違いない。

「こんな口コミにも負けないぐらい頑張りましょう!」

 明るく励ましてくれている店長も、きっとショックを受けているはず。ここまで築き上げてきた信頼を失うかもしれないのだ。私に何か恨みがあるのかもしれないけれど、やり方が卑怯で許せない。

 一度拡散されてしまった情報は、そう簡単には消すことができないのだ。そのことを理解したうえで行動を起こしているのだろうか。

 やはりSNSの影響は出るもので、新規のお客様の予約が極端に減ってしまった。常連のお客様は励ましてくれるも、このままでは店の経営に影響を及ぼしてしまう。

 彼女と私の接点がわかれば解決するかもしれないけれど、調べるすべがない。私が店を辞めたら解決するのだろうかと思うほど追い詰められていた。

 モヤモヤとした日々が数日続き、突然事態が動き出す――

◇◇◇

「店長! 凪紗さん!」
「藤木くん慌ててどうしたの?」
「これ見て下さい! これ」

 藤木くんが持っていたのは週刊誌で、その中のページを開いて指差している。

「ええ⁉」
「どういうこと?」

 店長と私は思わず大きな声を上げてしまった。

「凪紗ちゃん、何か聞いてる?」
「いえ……。何も……」

 驚きで心臓がバクバクとしていて頭が働かない。

 そこには隠し撮りされた写真と意味深なタイトル、そして先日の女性と見慣れた湊翔さんの姿が写っていた。湊翔さんは横を向いていて、女性が腕に手を添えている状態で、知らない人が記事を見たら仲の良いカップルに見える。

『伊集院財閥のご令嬢のお相手はイケメン御曹司か?』と見出しのついた記事が載っているのだ。

 イケメン御曹司? 湊翔さんは潜水士で御曹司の意味がわからない。でも、写真は間違いなく湊翔さんで……

 記事の中にヒントがあるかもしれないけれど、知りたくない私がいる。

 知ってしまったら、何もかもが壊れてしまいそうで怖いのだ。
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