ドクターと救急救命士は天敵⁈～最悪の出会いは最高の出逢い～

第二十一章

エピローグ②

　すでに、私のウエディングドレス姿に目を潤ませている父に、けじめとして挨拶をする。

「お父さん、今までありがとうございました。これからも、私の父であることには変わりないけれど、たくさんの愛情を注いでくれたことに感謝です。大好き」
「月……」

　私は父に対しての反抗期はなかった。高校生の頃、友達が父親に対して嫌悪感を出していたが、全く嫌だと思ったことはない。きっと、父の方が年頃の娘と適度な距離感を保ってくれていたのだろう。大人になって気づいたのだ。

「お時間です」

　式場の人から声がかかり、父と腕を組む。

　中から音楽が聞こえ扉が両側に大きく開いた。

　祭壇の前には、シルバーのタキシードを身に纏った貴公子、いや柾さんがこちらを見て立っている。

　両側には、親族と志乃ちゃん、そして土井先生と限られた人だけだ。

　披露宴には、病院関係者や消防署の関係者も招待しているのだが、どちらも全員に来てもらうことが不可能な職場なのだ。
　
　一歩、一歩と柾さんに向かってバージンロードを歩いていく。

　父から柾さんの元へ。

　二人揃って牧師様の前に並ぶ。

「新郎柾さん、あなたはここにいる月さんを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか？」
「はい、誓います」
「新婦月さん、あなたはここにいる柾さんを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか？」
「はい、誓います」

「指輪の交換を――」

　二人で選んだ指輪をお互いの指にはめる。

「では、誓いのキスを――」

　牧師様からの言葉に、柾さんがベールを上げる。ベール越しに見つめていた視線がしっかりと交わる。

　身長の高い柾さんが屈み、私に口づけをする。

　永遠の愛を誓うかのように、長い長いキス――。

　ここから、まだまだ長い私達の幸せな人生が始まる――。

　

　―END―