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第二十章

未来に向けて前進あるのみ SIDE柾③

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「ご挨拶に伺う時に持っていく物が、何がいいかわからない」
「……。あなた医療ミスでもしたの?」
「はあ?んなわけあるか」
「じゃあ、後藤さんが言っていた話は、本当に本当なの?」
「何を聞いてるかは知らないが、本当だろう」
「これは一大事だわ。家族構成を教えて」

 こんなやり取りがあり母が用意してくれたのだ。


 いよいよご挨拶に伺う日が来た。月には大量の荷物に驚かれたが、俺はそれどころではない。

 俺との関係を認めてもらうだけではなく、出来れば実家のこと、そして今後のことも一気に話してしまいたい。

 緊張の中、車を走らせ月の実家が見えてきた。いつから待っていたのか家の前には、女性が二人立っている。一人は先日会った月の兄の彼女だ。もう一人の女性は間違いなく月の母だろう。小柄で可愛らしい雰囲気が月によく似ている。

 空いているスペースに止めさせてもらい車を降りたのだが、月の母親のテンションが高くて驚く。同時に、お怒りではなく歓迎してくれていることにホッとした。

 手入れの行き届いた庭に、たくさんのフラワーアレンジメントが飾られたリビング。月のイメージにぴったりな実家だ。

 それにしても、先ほどからずっと月の母の視線が俺に向けられている。

「それにしてもイケメンだわ~」

 しみじみと言われ反応に困るが、受け入れてもらえていると思っていいのだろう。

「お母さん見過ぎ」
「いいじゃない。なんて呼んだらいい?」

 月からの言葉も跳ね除け俺に聞いてくる。

「お好きに呼んでください」

 普通、彼女の母親からなんて呼ばれるのものなのだろうか。月の母親の口から出た驚きの呼び名は『まーくん』だった。小さい頃は親戚からまーくんと呼ばれることはあったが、今でもまーくんと呼ぶ人はいない。月と志乃ちゃんは笑っているではないか。

 月の母親は、天真爛漫というのか、マイペースというのか、なかなか個性的な人だと思う。

 それが、突然本題に入った。ここからが勝負だ。

 姿勢を正し、月の母親と真剣に向き合う。失敗は許されない。

 

 
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