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第十九章

俺様ドクターの心配事②

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 門のところで待機していた先生に誘導され保健室へ向かう。途中日陰で座っている生徒達が見えたが、ぐったりはしているものの各自で水分補給できているようだ。

「こちらです」

 保健室には二十名ほどの生徒がいて、冷房が入れられた涼しい部屋で休んでいる。

「状況は?」
「一名が自力で立てないほどの症状です。呼びかけには辛うじて応じますが、自力で水分も摂れない状況です。あとの生徒は少しずつ回復してきています」
「至急病院に搬送しますので、残りの生徒はまもなく到着する救急隊員に診てもらって下さい」

 先着した私達の救急車で急を要する重症者を搬送する。

「どなたか先生が付き添われますよね?」
「はい。彼女の担任が付き添います」
「親御さんには?」
「連絡を入れました。搬送先が決まったら再度連絡を入れます」
「わかりました」

 救急車に乗り込み、息が浅いことから酸素マスクを装着した。

「港浜救命救急センター受け入れオッケーです」

 確認していた先輩隊員の言葉に、柾さんを思い出し気持ちが落ち着く。

 
 実際に柾さんが救急のフロアにいることはあまりないのだが、私の中では港浜救命救急センターの名前を聞くだけで落ち着けるのだらか不思議だ。

 患者は、今のところ痙攣などの症状は出ていないが、ぐったりとしていて、身体が熱を持っている。

「到着します」

 救急車が港浜救命救急センターに到着し、ストレッチャーを下ろす。担任の先生が心配そうに見守る中、処置室に向かった。

「熱中症の患者様ですね」
「はい」
「こちらのベッドに移します」

 看護師が患者を引き継いでくれた。

 空いたストレッチャーを引き取り救急車に戻るために廊下を歩いている時だった。

「あっ、月ちゃん!」
「へ?!」

 病院内で下の名前を呼ばれて驚く。声が聞こえた方に視線を向けると、土井先生が手を振りながら笑顔でこちらに向かって来ている。

 会釈をしようと頭を下げた時――。

 目の前が真っ白になりフラッとよろけて、倒れそうになり踏ん張るが、意識が薄れていく。

「危ない!」

 遠くで誰かの叫んだ声が聞こえたが、そこで私の意識は途絶えた。

 
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