ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~

せいとも

文字の大きさ
上 下
123 / 138
第十八章

俺様ドクターの想定外⑥

しおりを挟む
 ここまできて、遅いかもしれないが柾さんがK-onの御曹司だと実感した。お医者様でも世界が違うのに、ここに私がお邪魔していいのだろうか。私が一人で思い悩んでいるうちに、目の前の門が自動で開いていく。

 開いた門の先は――。

 広大なお庭の中を通る道があり、奥の方に真っ白な建物が見えている。どこかのリゾートホテルに来たみたいだ。柾さんは迷うことなく車を進めるが、私の心臓はバクバクとうるさい。後ろでは、門が閉まり逃げ道を塞がれた気分になる。

 門から住居まで車でも距離を感じる。歩いたら迷ってしまって辿り着かないのではないだろうか……。

「柾さんは、子供の頃からここに住んでいるんだよね?」
「ああ」
「門から家まで遠すぎて、帰るのが嫌にならない?」
「……。プハッ」
「なんで笑うの?」
「嫌になるほど、歩いたことがない」
「へ⁈」
「いつも送迎してもらってたからな」
「……」

 これだけの邸宅に住んでいるのだ。送迎が当たり前なのだと納得する。

 真っ白な洋館の前はロータリーになっていて、ロータリーの横には広大なスペースがあり、高級車が何台も止まっている。柾さんも慣れた様子で車を止めている。

「行こうか」
「ま、柾さん、本当に私で大丈夫?」
「何をいまさら。祖父と父は、先日せっかく会ったのに話ができなかったと残念がっていた。母は、二人だけが会ってズルいと言っていたよ」
「でも……」

 車の中で話をしていると、玄関の扉から女の子が出てきた。

「えっ⁈琴ちゃん⁇」
「琴を知っているのか?」

 もう、今の状況に訳がわからない。柾さんが車を降りたので私も慌てて降りると、柾さんの方に向かっていた琴ちゃんが、私の姿を見つけてこちらに向かってくる。

「月お姉ちゃ~ん」
「琴ちゃん!」

 満面の笑顔で走ってくる姿はまるで天使だ。先ほどの泣き顔が嘘のようにキラキラとしている。琴ちゃんを抱き上げ見つめ合う。

「月お姉ちゃん、どうしてここにいるの?」
「琴ちゃんは、どうしてここにいるの?」

 質問を質問で返すほど私は動揺しているのだ。


 
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。 専務は御曹司の元上司。 その専務が社内政争に巻き込まれ退任。 菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。 居場所がなくなった彼女は退職を希望したが 支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。 ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に 海外にいたはずの御曹司が現れて?!

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...