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第十八章
俺様ドクターの想定外④
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後日、私の休みが土曜に当たっている日に合わせ、午後から休みを取った柾さんと久遠邸を訪れることになった。
何を持っていけばいいのか聞くも、手ぶらでいいという。そんなわけにはいかない……。
朝から大急ぎで身支度し、事前にネットで調べた百貨店で長蛇の列ができるという、数量限定のクッキー缶を購入するために並ぶ。
味が美味しいことはもちろん、缶や中のクッキーの形まで可愛く、オープンからすぐに売り切れると書いていた。幸いオープン前に着いて並んだことで購入できそうだ。三十分ほど待ち、やっと私の番が回ってきた。まだ残ってはいるが、間もなく売り切れるほどの数しか残っていない。大きなアソート缶と自分用にも小さい缶を購入した。
あとは、和菓子の『長谷屋』の季節限定商品を並んで買い、帰ろうと先程のクッキーのお店の前を通った時だった。
すでに全ての商品が完売しているお店からは行列が消えている。店の前には一組の親子の姿があった。よく見ると小さい女の子が泣いている。
「猫ちゃんのクッキー缶ないの?」
「うん、残念ね。売り切れちゃったんだって」
「早く来たのに?なんで?」
お店の人も状況を説明しながらも、小さい女の子が楽しみにしていた様子に心を痛めている表情だ。
「あのっ」
「えっ?」
私がいきなり声をかけたことで、母親は驚いた顔をしている。
「これ。私が自分用に買った分なので良かったら」
「そんなっ」
驚くのも無理はない。普段なら、私もこんなことはしないが、女の子の様子から特別な何かを感じた。
「これどうぞ」
女の子の目線にしゃがみ込み、手渡した。
「いいの?」
「うん。お名前は?」
「琴ちゃん」
「琴ちゃん、可愛いお名前ね」
「ありがとう」
「今日は何か特別な日なのかな?」
「うん。琴ちゃんの大好きな妹の誕生日」
「そうなの?おめでとう。優しいお姉ちゃんね」
「お姉ちゃんのお名前は何ていうの?」
「月だよ」
「月お姉ちゃんありがとう」
琴ちゃんと私の会話を見ていた母親からも、何度もお礼を言われた。代金を渡されるも、私から優しい琴ちゃんへのプレゼントだと断った。
何を持っていけばいいのか聞くも、手ぶらでいいという。そんなわけにはいかない……。
朝から大急ぎで身支度し、事前にネットで調べた百貨店で長蛇の列ができるという、数量限定のクッキー缶を購入するために並ぶ。
味が美味しいことはもちろん、缶や中のクッキーの形まで可愛く、オープンからすぐに売り切れると書いていた。幸いオープン前に着いて並んだことで購入できそうだ。三十分ほど待ち、やっと私の番が回ってきた。まだ残ってはいるが、間もなく売り切れるほどの数しか残っていない。大きなアソート缶と自分用にも小さい缶を購入した。
あとは、和菓子の『長谷屋』の季節限定商品を並んで買い、帰ろうと先程のクッキーのお店の前を通った時だった。
すでに全ての商品が完売しているお店からは行列が消えている。店の前には一組の親子の姿があった。よく見ると小さい女の子が泣いている。
「猫ちゃんのクッキー缶ないの?」
「うん、残念ね。売り切れちゃったんだって」
「早く来たのに?なんで?」
お店の人も状況を説明しながらも、小さい女の子が楽しみにしていた様子に心を痛めている表情だ。
「あのっ」
「えっ?」
私がいきなり声をかけたことで、母親は驚いた顔をしている。
「これ。私が自分用に買った分なので良かったら」
「そんなっ」
驚くのも無理はない。普段なら、私もこんなことはしないが、女の子の様子から特別な何かを感じた。
「これどうぞ」
女の子の目線にしゃがみ込み、手渡した。
「いいの?」
「うん。お名前は?」
「琴ちゃん」
「琴ちゃん、可愛いお名前ね」
「ありがとう」
「今日は何か特別な日なのかな?」
「うん。琴ちゃんの大好きな妹の誕生日」
「そうなの?おめでとう。優しいお姉ちゃんね」
「お姉ちゃんのお名前は何ていうの?」
「月だよ」
「月お姉ちゃんありがとう」
琴ちゃんと私の会話を見ていた母親からも、何度もお礼を言われた。代金を渡されるも、私から優しい琴ちゃんへのプレゼントだと断った。
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