102 / 138
第十六章
必死な俺 SIDE柾③
しおりを挟む
ホテルを出てスーパーに寄って買い物をした。月が買い物をしている横でカートを押しているだけで、新婚気分を味わっている俺。
何もかもが順調な始まりで、同棲初夜を楽しもうと思っていたのだ。
だが――。
今日一日鳴らなかったスマホが着信を告げる。画面を見なくてもどこからかかってきたのか想像がつく。出たくはないが、そういう訳にもいかない。
「はい」
「お疲れ様です。救急の堀田です」
「ああ」
「事故があって複数人がこちらに運ばれて来ています。脳外の先生がすでに他の手術に入っていて足りません。久遠先生、来ていただくことは可能ですか?」
「ああ、わかった」
後ろ髪を引かれるが、医者という職業に誇りを持っている。行かない選択肢はないのだ。
「すまない。呼び出しだ」
「はい。気をつけてね」
職場は違えど、同じ医療関係に従事する身として理解してくれているのだろう。
「いってらっしゃい」と見送ってくれる月の手を引き思わずキスをする。名残惜しいが行かなくては……。
お互いの休みはなかなか合わないが、少しの時間があれば今まで以上にマンションへ帰っている。
月がいない部屋でも月の気配を感じる。俺は変態かと突っ込みたくなるが、今まで愛着のなかったマンションに帰りたくなるのだから、月の存在が大きい。
実は以前から、マンションの出入りの際に視線を感じることがあった。今までは、直接影響することもなく放っておいた。だが月が住むようになり、もし月が巻き込まれることがあってはと、コンシェルジュに相談しておいたのだ。
ある日、医局に俺宛ての電話が入る。
「久遠先生、先生がお住いのマンションのコンシェルジュの方から連絡です」
「……」
勤務中だとスマホを見られないことも多いため、コンシェルジュには職場も含め複数の連絡先を伝えていた。緊急用にだ……。
嫌な予感しかしない。
「はい、久遠です」
「コンシェルジュの藤崎です」
「何があったんですか?」
「それが雫石様がマンションの前で女性と揉めているようでして、気になって様子を伺っていたんです。相手の女性が興奮した様子で、雫石様を突き飛ばしたので急いで駆けつけたのですが、相手の女性が私に気づき逃げてしまいまして」
何もかもが順調な始まりで、同棲初夜を楽しもうと思っていたのだ。
だが――。
今日一日鳴らなかったスマホが着信を告げる。画面を見なくてもどこからかかってきたのか想像がつく。出たくはないが、そういう訳にもいかない。
「はい」
「お疲れ様です。救急の堀田です」
「ああ」
「事故があって複数人がこちらに運ばれて来ています。脳外の先生がすでに他の手術に入っていて足りません。久遠先生、来ていただくことは可能ですか?」
「ああ、わかった」
後ろ髪を引かれるが、医者という職業に誇りを持っている。行かない選択肢はないのだ。
「すまない。呼び出しだ」
「はい。気をつけてね」
職場は違えど、同じ医療関係に従事する身として理解してくれているのだろう。
「いってらっしゃい」と見送ってくれる月の手を引き思わずキスをする。名残惜しいが行かなくては……。
お互いの休みはなかなか合わないが、少しの時間があれば今まで以上にマンションへ帰っている。
月がいない部屋でも月の気配を感じる。俺は変態かと突っ込みたくなるが、今まで愛着のなかったマンションに帰りたくなるのだから、月の存在が大きい。
実は以前から、マンションの出入りの際に視線を感じることがあった。今までは、直接影響することもなく放っておいた。だが月が住むようになり、もし月が巻き込まれることがあってはと、コンシェルジュに相談しておいたのだ。
ある日、医局に俺宛ての電話が入る。
「久遠先生、先生がお住いのマンションのコンシェルジュの方から連絡です」
「……」
勤務中だとスマホを見られないことも多いため、コンシェルジュには職場も含め複数の連絡先を伝えていた。緊急用にだ……。
嫌な予感しかしない。
「はい、久遠です」
「コンシェルジュの藤崎です」
「何があったんですか?」
「それが雫石様がマンションの前で女性と揉めているようでして、気になって様子を伺っていたんです。相手の女性が興奮した様子で、雫石様を突き飛ばしたので急いで駆けつけたのですが、相手の女性が私に気づき逃げてしまいまして」
2
お気に入りに追加
726
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
敏腕ドクターは孤独な事務員を溺愛で包み込む
華藤りえ
恋愛
塚森病院の事務員をする朱理は、心ない噂で心に傷を負って以来、メガネとマスクで顔を隠し、人目を避けるようにして一人、カルテ庫で書類整理をして過ごしていた。
ところがそんなある日、カルテ庫での昼寝を日課としていることから“眠り姫”と名付けた外科医・神野に眼鏡とマスクを奪われ、強引にキスをされてしまう。
それからも神野は頻繁にカルテ庫に来ては朱理とお茶をしたり、仕事のアドバイスをしてくれたりと関わりを深めだす……。
神野に惹かれることで、過去に受けた心の傷を徐々に忘れはじめていた朱理。
だが二人に思いもかけない事件が起きて――。
※大人ドクターと真面目事務員の恋愛です🌟
※R18シーン有
※全話投稿予約済
※2018.07.01 にLUNA文庫様より出版していた「眠りの森のドクターは堅物魔女を恋に堕とす」の改稿版です。
※現在の版権は華藤りえにあります。
💕💕💕神野視点と結婚式を追加してます💕💕💕
※イラスト:名残みちる(https://x.com/___NAGORI)様
デザイン:まお(https://x.com/MAO034626) 様 にお願いいたしました🌟
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる