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第十六章
必死な俺 SIDE柾③
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ホテルを出てスーパーに寄って買い物をした。月が買い物をしている横でカートを押しているだけで、新婚気分を味わっている俺。
何もかもが順調な始まりで、同棲初夜を楽しもうと思っていたのだ。
だが――。
今日一日鳴らなかったスマホが着信を告げる。画面を見なくてもどこからかかってきたのか想像がつく。出たくはないが、そういう訳にもいかない。
「はい」
「お疲れ様です。救急の堀田です」
「ああ」
「事故があって複数人がこちらに運ばれて来ています。脳外の先生がすでに他の手術に入っていて足りません。久遠先生、来ていただくことは可能ですか?」
「ああ、わかった」
後ろ髪を引かれるが、医者という職業に誇りを持っている。行かない選択肢はないのだ。
「すまない。呼び出しだ」
「はい。気をつけてね」
職場は違えど、同じ医療関係に従事する身として理解してくれているのだろう。
「いってらっしゃい」と見送ってくれる月の手を引き思わずキスをする。名残惜しいが行かなくては……。
お互いの休みはなかなか合わないが、少しの時間があれば今まで以上にマンションへ帰っている。
月がいない部屋でも月の気配を感じる。俺は変態かと突っ込みたくなるが、今まで愛着のなかったマンションに帰りたくなるのだから、月の存在が大きい。
実は以前から、マンションの出入りの際に視線を感じることがあった。今までは、直接影響することもなく放っておいた。だが月が住むようになり、もし月が巻き込まれることがあってはと、コンシェルジュに相談しておいたのだ。
ある日、医局に俺宛ての電話が入る。
「久遠先生、先生がお住いのマンションのコンシェルジュの方から連絡です」
「……」
勤務中だとスマホを見られないことも多いため、コンシェルジュには職場も含め複数の連絡先を伝えていた。緊急用にだ……。
嫌な予感しかしない。
「はい、久遠です」
「コンシェルジュの藤崎です」
「何があったんですか?」
「それが雫石様がマンションの前で女性と揉めているようでして、気になって様子を伺っていたんです。相手の女性が興奮した様子で、雫石様を突き飛ばしたので急いで駆けつけたのですが、相手の女性が私に気づき逃げてしまいまして」
何もかもが順調な始まりで、同棲初夜を楽しもうと思っていたのだ。
だが――。
今日一日鳴らなかったスマホが着信を告げる。画面を見なくてもどこからかかってきたのか想像がつく。出たくはないが、そういう訳にもいかない。
「はい」
「お疲れ様です。救急の堀田です」
「ああ」
「事故があって複数人がこちらに運ばれて来ています。脳外の先生がすでに他の手術に入っていて足りません。久遠先生、来ていただくことは可能ですか?」
「ああ、わかった」
後ろ髪を引かれるが、医者という職業に誇りを持っている。行かない選択肢はないのだ。
「すまない。呼び出しだ」
「はい。気をつけてね」
職場は違えど、同じ医療関係に従事する身として理解してくれているのだろう。
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実は以前から、マンションの出入りの際に視線を感じることがあった。今までは、直接影響することもなく放っておいた。だが月が住むようになり、もし月が巻き込まれることがあってはと、コンシェルジュに相談しておいたのだ。
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「……」
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「コンシェルジュの藤崎です」
「何があったんですか?」
「それが雫石様がマンションの前で女性と揉めているようでして、気になって様子を伺っていたんです。相手の女性が興奮した様子で、雫石様を突き飛ばしたので急いで駆けつけたのですが、相手の女性が私に気づき逃げてしまいまして」
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