ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~

せいとも

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第十五章

俺様ドクターの嫉妬⑥

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 買ったものを冷蔵庫に片づけていると、玄関から物音がした。時計を見ると、まだ19時を過ぎたばかりだ。電話から一時間ほどしか経っていない。けれど、この部屋に入れるのは、掃除業者を除けば柾さんしかいないので、急いで玄関に向かった。

「おかえりなさい?」
「ただいま。どうして疑問形だ?」
「こんなに早く帰って来られるとは思わなくて」
「本当はもっと遅くなる予定だったんだが、月の声を聞いたら我慢できなくなったから、祐介に押しつけて来た」
「えっ、大丈夫なんですか?」
「ああ、いつもあいつのフォローをしてやってるんだ。たまにはいいだろう」
「ならいいんだけど……」

 お医者様の勤務事情は全く分からないが、私達よりハードで休みがないのは間違いない。子供がいる土井先生よりも、独身の柾さんの負担が大きいのかもしれない。柾さんがそれを全く不満には思っていないのが普段からの会話でわかるし、時々土井先生に押しつけたといいながらも状況をみて仕事を振ることで、土井先生が気を遣わないようにしているのではないかと思う。

「月、会いたかった……」

 玄関で強く抱きしめられた。私も、柾さんの背中に手を回す。一緒に暮らしていてもなかなか会えないが、こうして愛情を示してくれる柾さんに私が不安になることはない。

「柾さん、お風呂に入る?夕食にする?」
「月にする」

 電話での言葉が冗談ではなかったらしい。腕の中から見上げた私の視線の先にある柾さんの顔は、獲物を捕らえたオスの表情だ。目の奥からは、欲望が滾っている。

「ここでキスしたら、玄関で押し倒してしまいそうだから」

 そう言った瞬間、抱き上げられ一直線に寝室へ向かう。ベッドに私をおろすと焦った様子で自分の服を脱ぎだした。呆気にとられてその様子を見ている私の前には、ボクサーパンツだけを纏った妖艶な柾さんがいる。

「ンンッ」

 いきなりの深いキスに、私の身体全体が熱をもち、鼻から抜ける声と口内で動く舌が絡めとる唾液の水音が静かな部屋に響く。

 いつも大人な柾さんが、いつもより余裕のない表情に見える。

 

 
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