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第十五章
俺様ドクターの嫉妬⑤
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「そうだな……。月が食べたい……」
急に、甘い声色で言われ一気に顔が熱くなる。病院のはずだが、周りに人がいないのだろうか。
「何でもいいんだね?こっちで決めるよ」
「ああ。もし疲れていたら先に寝てくれていい」
「わかった。頑張ってね」
電話の向こうは静かだったから、どこか人のいないところでわざわざ連絡をくれたのだろう。仕事から帰ってすぐにメールを入れるつもりが、疲れていてすっかり忘れ心配をかけてしまった。
柾さんと顔を合わせるのはいつ振りだろうか。ゆっくり話をする時間があれば、同窓会の話もしておこうと思う。
電話を切り時計を見ると、18時になっていた。何時に帰ってくるかはわからないが、仕事から帰って充分に寝た私は柾さんが帰るまで起きて待っているつもりだ。
夕食は何にしようかと考えながらキッチンに行き冷蔵庫を開けた。
そこで思い出す……。
仕事帰りに、スーパーで買い物をする予定だったのだ。それが、砂川くんと偶然会ったことに驚きすっかり忘れてしまった。
冷蔵庫の前で悩んでいても解決しない。まずは買い物に行かなくてはと思うが、シャワーを浴びたまま寝てしまいすっぴんで髪もぐちゃぐちゃだ。でも、いまから化粧をする気にもなれない。
髪をいつも通りのお団子にして、帽子を目深に被ってみた。財布とスマホだけを持ち、隣のスーパーへ向かう。私は昼間に寄ることの多いのだが、平日の夕方は仕事帰りの買い物客で賑わっていた。
買い物客達のお目当ては、この時間から割引される総菜や生鮮食品だ。メニューの決まっていない私も売り場を見て回る。
魚売り場では、店員によって刺身に値引きシールが貼られているところだった。豪華に盛られた刺身に半額のシールを貼られるのを見た途端、今日のメニューは決まりとばかりに無意識に手が伸びていた。
メインが決まり、あとは何にしようか迷う。疲れて帰ってきた柾さんには、刺身では物足りないだろう。肉売り場では、あとは揚げるだけのとんかつを見つけた。メインが二つになってしまうが、どちらも食べたい。あとは、赤みその味噌汁と冷ややっこにしようと籠に入れた。
急に、甘い声色で言われ一気に顔が熱くなる。病院のはずだが、周りに人がいないのだろうか。
「何でもいいんだね?こっちで決めるよ」
「ああ。もし疲れていたら先に寝てくれていい」
「わかった。頑張ってね」
電話の向こうは静かだったから、どこか人のいないところでわざわざ連絡をくれたのだろう。仕事から帰ってすぐにメールを入れるつもりが、疲れていてすっかり忘れ心配をかけてしまった。
柾さんと顔を合わせるのはいつ振りだろうか。ゆっくり話をする時間があれば、同窓会の話もしておこうと思う。
電話を切り時計を見ると、18時になっていた。何時に帰ってくるかはわからないが、仕事から帰って充分に寝た私は柾さんが帰るまで起きて待っているつもりだ。
夕食は何にしようかと考えながらキッチンに行き冷蔵庫を開けた。
そこで思い出す……。
仕事帰りに、スーパーで買い物をする予定だったのだ。それが、砂川くんと偶然会ったことに驚きすっかり忘れてしまった。
冷蔵庫の前で悩んでいても解決しない。まずは買い物に行かなくてはと思うが、シャワーを浴びたまま寝てしまいすっぴんで髪もぐちゃぐちゃだ。でも、いまから化粧をする気にもなれない。
髪をいつも通りのお団子にして、帽子を目深に被ってみた。財布とスマホだけを持ち、隣のスーパーへ向かう。私は昼間に寄ることの多いのだが、平日の夕方は仕事帰りの買い物客で賑わっていた。
買い物客達のお目当ては、この時間から割引される総菜や生鮮食品だ。メニューの決まっていない私も売り場を見て回る。
魚売り場では、店員によって刺身に値引きシールが貼られているところだった。豪華に盛られた刺身に半額のシールを貼られるのを見た途端、今日のメニューは決まりとばかりに無意識に手が伸びていた。
メインが決まり、あとは何にしようか迷う。疲れて帰ってきた柾さんには、刺身では物足りないだろう。肉売り場では、あとは揚げるだけのとんかつを見つけた。メインが二つになってしまうが、どちらも食べたい。あとは、赤みその味噌汁と冷ややっこにしようと籠に入れた。
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