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第十四章
俺様ドクターのストーカー①
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いつも通りの朝、昨日までと違うのは柾さんのマンションに引っ越したこと。通勤時間が短くなった。だが、マンションの主は、同棲初日の夜からいない――。
昨夜、『SAKURA』で食事の後、スーパーに寄って買い物をした。必要最低限の物を買い込みマンションに戻って冷蔵庫に食材を片付けていた時だった。柾さんのスマホが着信を告げる。
「はい、ああ、ああ、わかった」
相手の声は聞こえないが、救命救急センターからだろうと思う。今日一日かかって来なかった方が奇跡なのだと思う。
「すまない。呼び出しだ」
「はい。気をつけてね」
「ああ」
「私は、明日が当番日で明後日の非番に研修が入っているから、帰りは明後日の夜になるの」
「俺も明日は泊まりで、あとはまた連絡する」
同じ日に泊まりだとお互い気が楽だ。一緒に住み始めたからこそ、お互いを思い予定を共有する。
柾さんが出かけるのを、玄関まで見送りにきた。
「いってらっしゃい」
「いってきます。月」
私の名前を呼び軽く手を引かれ、柾さんの唇が私の唇を奪う。
「ンンッ」
思わず鼻に抜けるような甘い声が漏れてしまった。
「行きたくない……」
ぼやきながらも出勤した柾さんを見送り、私はお風呂を沸かしのんびりバスタイムを楽しむ。夜勤があり体力勝負の私達の仕事は、睡眠と休息が必要だ。
広いお風呂に入り身体を伸ばし解していく。今までのマンションとは比べものにならない贅沢空間に一人でいると持て余してしまう。
寝心地のいいベッドで、早めに眠ることにした。
柾さんとの生活は、一カ月会えなかった理由がわかるほど、すれ違いばかりだ。私が泊りの勤務の間に、一度帰った痕跡はあるのだが、私が帰った時にはすでにいない。
一緒のマンションに暮らしていると、お互いの気配は感じられて、以前よりは寂しくない。
ところが、このマンションから出勤を初めて二週間ほど経った辺りから、マンションの出入りの際に視線を感じるようになった。
毎日ではないのだが、一回や二回ではないのだ。セキュリティ万全のマンション内に入ることは不可能だ。
けれど隣のコンビニやスーパーから、エントランスが見える場所があるのだ。たまたま、立ち寄ったコンビニでふと視線を上げるとマンション側の窓だったことで気づいた。
昨夜、『SAKURA』で食事の後、スーパーに寄って買い物をした。必要最低限の物を買い込みマンションに戻って冷蔵庫に食材を片付けていた時だった。柾さんのスマホが着信を告げる。
「はい、ああ、ああ、わかった」
相手の声は聞こえないが、救命救急センターからだろうと思う。今日一日かかって来なかった方が奇跡なのだと思う。
「すまない。呼び出しだ」
「はい。気をつけてね」
「ああ」
「私は、明日が当番日で明後日の非番に研修が入っているから、帰りは明後日の夜になるの」
「俺も明日は泊まりで、あとはまた連絡する」
同じ日に泊まりだとお互い気が楽だ。一緒に住み始めたからこそ、お互いを思い予定を共有する。
柾さんが出かけるのを、玄関まで見送りにきた。
「いってらっしゃい」
「いってきます。月」
私の名前を呼び軽く手を引かれ、柾さんの唇が私の唇を奪う。
「ンンッ」
思わず鼻に抜けるような甘い声が漏れてしまった。
「行きたくない……」
ぼやきながらも出勤した柾さんを見送り、私はお風呂を沸かしのんびりバスタイムを楽しむ。夜勤があり体力勝負の私達の仕事は、睡眠と休息が必要だ。
広いお風呂に入り身体を伸ばし解していく。今までのマンションとは比べものにならない贅沢空間に一人でいると持て余してしまう。
寝心地のいいベッドで、早めに眠ることにした。
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一緒のマンションに暮らしていると、お互いの気配は感じられて、以前よりは寂しくない。
ところが、このマンションから出勤を初めて二週間ほど経った辺りから、マンションの出入りの際に視線を感じるようになった。
毎日ではないのだが、一回や二回ではないのだ。セキュリティ万全のマンション内に入ることは不可能だ。
けれど隣のコンビニやスーパーから、エントランスが見える場所があるのだ。たまたま、立ち寄ったコンビニでふと視線を上げるとマンション側の窓だったことで気づいた。
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