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第十二章
彼女が可愛すぎて困る SIDE柾③
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センター長として、病院全体のことを考えての判断だろう。
「救急隊員はどちらの署ですか?」
「港浜南消防署です。あのっ」
「はい?」
「実は、救急隊員の方と知り合いでして、あちらへの謝罪は私が行ってもいいですか?」
「おやおや。では久遠先生にお任せします」
「ありがとうございます」
長年、人の上に立つセンター長は、薄々何かあるときづいているようだが、快く俺に役目を譲ってくれた。
決まれば早急に、月に会いたい。いや、謝罪に行くべきだ。
俺の所属する脳外科に戻り、目的の人物がいるかを確認した。
「祐介」
「慌ててどうした?」
「少し出てくる。大丈夫か?」
「ああ。珍しいな」
「じゃあ、頼んだ」
一刻も早く月を捕まえる、いや謝罪するべきだと気が焦る。
港浜南消防署に着いたが、夜は来客があまりないのか入口の受付は人がいない。少し奥まったところにある明かりのついている部屋に行き、声をかけた。
「あの~」
「は、はい」
「救急隊の責任者の方にお会いしたいんですが」
「はあ……。どういったご用件で?」
「申し遅れました。私、港浜救命救急センターの久遠と申します」
「港浜のドクターですか?久遠先生……。あっ」
「はい?」
「すみません、お名前を聞いたことがあったので……。救急隊は、二階になります。ご案内いたします」
「そこの階段上がってすぐなら自分で行きます」
「はあ。ではお願いします」
署内には限られた人数しかいないのか、比較的静かだ。ただ、すれ違うたびになぜかじろじろ見られている気がするのだが……。
部屋に辿り着くと、デスクに座る男性の前に立つ月の後ろ姿が見えた。
ざっと部屋を見回しても、月以外全員男だ。大勢の男性に囲まれている職場を目の当たりにして、嫉妬してしまいそうだ。
「失礼します」
平静を装い月の元へ行く。月の前に座る男性から誰かを聞かれたので答える。
「港浜救命救急センターの久遠です」
「はあ」
俺が名乗ると同時に部屋全体に戸惑いの空気が流れている。
先ずは謝罪だと頭を下げた。すると、室内が慌てた雰囲気に変わった。事情を説明し、こちらに非があることを告げ月の上司にも納得してもらう。
「救急隊員はどちらの署ですか?」
「港浜南消防署です。あのっ」
「はい?」
「実は、救急隊員の方と知り合いでして、あちらへの謝罪は私が行ってもいいですか?」
「おやおや。では久遠先生にお任せします」
「ありがとうございます」
長年、人の上に立つセンター長は、薄々何かあるときづいているようだが、快く俺に役目を譲ってくれた。
決まれば早急に、月に会いたい。いや、謝罪に行くべきだ。
俺の所属する脳外科に戻り、目的の人物がいるかを確認した。
「祐介」
「慌ててどうした?」
「少し出てくる。大丈夫か?」
「ああ。珍しいな」
「じゃあ、頼んだ」
一刻も早く月を捕まえる、いや謝罪するべきだと気が焦る。
港浜南消防署に着いたが、夜は来客があまりないのか入口の受付は人がいない。少し奥まったところにある明かりのついている部屋に行き、声をかけた。
「あの~」
「は、はい」
「救急隊の責任者の方にお会いしたいんですが」
「はあ……。どういったご用件で?」
「申し遅れました。私、港浜救命救急センターの久遠と申します」
「港浜のドクターですか?久遠先生……。あっ」
「はい?」
「すみません、お名前を聞いたことがあったので……。救急隊は、二階になります。ご案内いたします」
「そこの階段上がってすぐなら自分で行きます」
「はあ。ではお願いします」
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部屋に辿り着くと、デスクに座る男性の前に立つ月の後ろ姿が見えた。
ざっと部屋を見回しても、月以外全員男だ。大勢の男性に囲まれている職場を目の当たりにして、嫉妬してしまいそうだ。
「失礼します」
平静を装い月の元へ行く。月の前に座る男性から誰かを聞かれたので答える。
「港浜救命救急センターの久遠です」
「はあ」
俺が名乗ると同時に部屋全体に戸惑いの空気が流れている。
先ずは謝罪だと頭を下げた。すると、室内が慌てた雰囲気に変わった。事情を説明し、こちらに非があることを告げ月の上司にも納得してもらう。
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