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第十一章

俺様ドクターの包囲網⑤

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「今日もだけど、大体いつもコンビニのおにぎりかカップ麺だな」
「お野菜は?」
「サプリメントを飲んでいる」
「な⁈ドクターが一番身体に悪そうな食事だね」
「まあ、そうだな。食堂に行けるのなんて、年に1・2回あったらいい方だ。せっかく行っても呼び戻されることもあるしな」
「たまに食べたくなるけど、カップ麺ばかりだと嫌にならない?」
「そういう月達の職場はどうなんだ?」
「結婚している先輩は、愛妻弁当の人が多いよ。独身で実家に住んでる人は、お母様が作ってくれていたり……」
「愛妻弁当か……」

 何かを思い浮かべているのか、柾さんがニヤけている。

「で?月は普段どうしてるんだ?」
「私?私は、時間があるときは自分で作って持って行ってるよ。無理な時は、コンビニだけど……」
「作ってるなんてえらいな。今度俺の分も頼む」
「まあ、いつか……」

 これだけ時間が合わないと、お弁当を作っても渡す機会がない。だが、柾さんはなぜか不敵な笑みを浮かべている。

 本当に空腹だったのだろう。食べる手が止まらない。

「ご飯おかわり入れようか?」
「ああ。豚汁ももらえるか?」
「うん」

 食事の食べ方やお箸の持ち方まで、綺麗で見惚れてしまう。細い身体のどこに入るのか不思議なくらい、作ったものは全て残さず食べてくれた。

 片づけをして、食後のコーヒーを淹れている時に、時田先生の件を思い出した。

「そういえば、時田先生が転勤されたとか」
「はあ??何で知ってるんだ?」
「土井先生に聞いたの」
「いつ?」
「昨日、港浜に搬送したときに会ったの」
「俺は、なかなか月に会えないのに、あいつと会うなんて」
「へ⁈」

 柾さんは、違うことが気になったようだ。確かに柾さんと病院内で遭遇したのは、園児を搬送したときと、時田先生とやり合ったときだけだ。

「時田は、看護師達からずっと苦情が出ていたんだ。ただ、医者の人数がぎりぎりの中で、簡単に追い出すわけにはいかなかった。今回のように患者さんに迷惑をかけていたらすぐに処分できたんだが……」
 
 

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