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第十一章

俺様ドクターの包囲網①

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 柾さんのマンションに行った数日後の朝、次の休みはいつかと問われるメールが入った。今日はこれから出勤で、明日が非番、明後日が公休日だ。そのままの内容を返信し、勤務についた。

 救急要請が頻繁に入り、出動を繰り返す。

 時田先生とやり合ってから、何度も港浜救命救急センターに患者を搬送しているが、あれ以来姿を見かけない。時々、看護師からの視線が私に突き刺さるが、直接なにか言われることもないので、こちらから声をかけることもない。

 この日何度目かの搬送で、港浜救命救急センターに行った時だった。

 患者さんを病院に引き渡し、戻ろうと廊下を歩いていると、向こうから知った顔の先生が歩いてきた。

「月ちゃん、久しぶりだね」
「お疲れ様です」

 若干馴れ馴れしさを感じるが、柾さんの親友だと無視するわけにもいかない。

「どう?柾と仲良くやってる?」
「……。はあ」

 仲良くやってるかどうか聞かれても、彼氏には違いないが、彼氏としては過した時間は僅かだ。

「柾が本気で動く姿を初めてみたよ」
「へ⁈」
「あれ?知らなかった?時田の件」
「時田先生とは、あの日以来会っていませんが……」
「それはそうだろう。もうこの病院にはいないから」
「ええ⁈」
「今まで何事にも見て見ぬふりだった柾が、あの日病院側に抗議して、時田を地方に異動させた」
「それって、私のせいですか?」
「まあ、月ちゃんがきっかけだけど、ここの看護師達は喜んでるよ」
「で、でも……」

 この病院とは直接関係ない私が理由で人事が動いていいのだろうか……。

「気になるって顔してるね」
「それはそうですよ」
「本当は、もっと早くに処分しておくべきだった。対処が遅いぐらいなんだ。気にしなくていい。それよりもここ最近、柾が妙に楽しそうなんだが、何か知ってるか?」
「へ??特には……」
「何だろうなぁ。驚くほどテンションが高い日があったんだ。普段からポーカーフェイスで表情が読めないけど、俺にはあの日からずっと機嫌がいいってわかるんだ」

 休みを聞かれたことと関係があるのだろうか?

 土井先生からは、これ以上知ることはできなかった。

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