ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~

せいとも

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第九章

俺様ドクターが甘すぎる①

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 コーヒーの香りが鼻孔をくすぐり、カチャカチャとお皿がぶつかり合う音が遠くで聞こえる。深い眠りについていた私の意識が少しずつ浮上し、重い瞼を開けた。

 視界には、大きな窓と絶景が広がる。

 そこで、私が今どこにいるのかを思い出し飛び起きた。

 キッチンには、お風呂上がりでまだ濡れた髪の部屋着姿の柾さんが、冷蔵庫から私がさっき入れたバケットサンドを出しているところだった。

「おはよう」
「おはようございます。すみません、私寝ちゃってましたね」
「気にすることはない。もっと寝てても良かったのに。それより、美味そうなサンドだ。いただくな」
「はい!冷蔵庫の中のドレッシングをかけて下さい。ところで今何時ですか?」
「1時だ」
「もう、お昼ご飯の時間になってる……。お昼にパスタを作ろうと思っていたんです」
「じゃあ、パスタは夜ご飯でどうだ?月が負担なら外食でもいいぞ」
「柾さんはどっちがいいですか?」
「俺は月がいい」
「じゃあ、そうしましょう」

 柾さんが若干ニヤついているのが気になる……。何かおかしなことを言っただろうか?
 
「美味い」

 野菜と生ハムをはさんだだけのバケットサンドを、美味いと言いながら食べてくれている。

 貴公子と言われていたイケメンの笑顔は、破壊力が半端ない。

 まだ、二人で会うのは2回目のはずが、あまり緊張感を感じなくなっている。私の前での柾さんが、貴公子で厳しいイメージとは全く違うからかもしれない。最悪の第一印象も今ではいい思い出のような気がしている。

「あっ、昨日、柾さんの親友の土井先生って方に会いました」
「はあ?いつ?」
「ええっと、柾さんがうちの署に来てくれた後の搬送で」
「うちに来てたのか。俺も病棟じゃなく救急にいたら良かった。今日の朝、祐介に会ったけど何も言ってなかったな。何か言われたか?」
「柾さんが彼女宣言した相手が気になったそうです」
「あいつのことでなにか、困ったことがあったらすぐに言ってくれ」
「親友なんですよね?」
「まあな。一見チャラいが愛妻家で仕事もできる」
「私も、一瞬チャラいと思っちゃいました」
「悪い奴じゃない」
「それはわかります」
 


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