ドクターと救急救命士は天敵⁈～最悪の出会いは最高の出逢い～

第八章

俺様ドクターは独占欲を隠さない⑦

　右の２つ目の扉は、トイレだ。ここも一般家庭のトイレと比べかなり広く、壁紙もオシャレでホテルのようだ。

　左の２つ目の扉は、仕事部屋なのかデスクが置いてあり、壁一面が本棚だ。

　そしていよいよ突き当りの扉。扉のすりガラスからは明るい光が廊下にまで洩れている。

　そっと扉を開けると――。

　だだっ広いリビングダイニングが広がり、正面は全面ガラス張りでインナーバルコニーまでついている。バルコニーには人工の芝生が敷かれ、高層階で外には出られないが、外にいる気分が味わえる造りだ。

　左を見るとアイランドキッチンがあり、ダイニングテーブルも一人暮らしには大きすぎるものが置かれているが、部屋が広いので全く圧迫感がない。

　右がリビングスペースで、こちらも大きなテレビとソファがある。

　リビングスペースの右奥に扉が１つあるが、お風呂の場所も分かったので、もう見る必要がない。

　キッチンに入らせてもらい冷蔵庫を開けた。中には、本当に水しかない。バターを買ってきて良かった。

　買い物してきたものを冷蔵庫に入れ、まずはお風呂に入らせてもらうことにした。

　24時間勤務の後は、汗臭さが気になる。一日中走り回った身体は、たっぷりと汗をかいている。

　廊下に出て先ほど確認したバスルームに行く。バスルームの扉を開けると、広いバスタブがあり、ジェットバスまでついている。贅沢過ぎで異次元に迷い込んだ気分だ。

　仕事から帰った柾さんもゆっくりとバスタブに浸かるだろうとお湯を張る。

　お団子頭を解き、先にシャワーで全身を綺麗にしていく。シャンプーやリンスやボディソープまで、全てが神楽坂リゾートのエタニティと同じものが揃えられている。

　シャンプーをしていると、香りがバスルームに充満しエタニティでのひと時を思い出してしまう。

　柾さんと結ばれたあの日のことを――。

　二人で会う２回目になる今日、家主のいない家でお風呂に入っているのだから、よく考えたら不思議な話だ。

　贅沢なバスタイムを楽しみ、仕事の疲れを癒した。

　着替えがないので、柾さんのTシャツを借りる。大きな柾さんのTシャツを、小さい私が着ると膝丈くらいまである。ワンピースとして充分だ。

　優雅なバスタイムの後は、朝食の準備をする。朝食と言っても仕事が終わってから買い物をして、お風呂に入った後の今は、もう11時を過ぎている。

　キッチンには、外国製のポーションタイプのコーヒーメーカーが置かれていて、朝食用にいただくことにする。すぐに部屋中にコーヒーの香りが漂い始め、更に空腹感が増していく。

　バケットに切り込みを入れ、カット野菜と生ハムをはさみ、とろみのあるドレッシングを食べる分だけかける。残りは、ラップをかけて冷蔵庫に入れた。

　せっかくだからと、インナーバルコニーのテーブルセットで食べることにした。

　目の前には絶景が広がる。高所恐怖症の人には絶対無理な高さだ。

　非日常の空間で食べる朝食は、最高に美味しく感じる。

　陽の光を浴び、お腹が満たされると今度は睡魔に襲われる。

　食べたものをキッチンで洗い、リビングのソファに座った。

　が――。

　意識はそこで途切れた。