ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~

せいとも

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第八章

俺様ドクターは独占欲を隠さない⑤

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 マンションの奥にはスーパーも見える。

 柾さんのメールには、自宅にあるものは何でも使っていいが、冷蔵庫には水しかないと書いてあった。風呂にも自由に入ってくれと書いてくれていた。初めて訪れる私が遠慮しないように配慮してくれたのだろう。

 夜勤明けでお風呂にも入りたいが、お腹も空いた。コンシェルジュがいるマンションなんて初めてで、気軽に出入りできる気がしない。必要なものを先に買うことにする。

 スーパーには、食品だけでなく日用品も売っていた。クレンジングや下着など、必要最低限を購入する。

 あとは、食べるものだ。

 米や炊飯器があるのかもわからない。病院にいる柾さんに聞くわけにもいかない。

 今回は、朝食用にカット野菜と生ハムとバケット、お気に入りのドレッシングをかごに入れた。昼食用には明太子パスタの材料を揃える。明太子に大葉に乾燥のパスタ。念のため、バターやオリーブオイルも購入する。パスタなら、残ったバケットも一緒に食べられる。

 買った荷物を持って、恐る恐るマンションに近づいた。

 見上げると、真下からは何階建てかもわからないほどのタワーマンションだ。エントランスからして高級感が漂う。

 自分の服装を見ると、夜勤明けでいつも通りの普段着に団子頭だ。もちろん化粧も取れてしまっている。夜勤明けに化粧を直す習慣がない。もう少し気を遣えば良かったと今更ながらに後悔しても遅い。

 勇気を振り絞り、エントランスに入った。おどおどした様子の私は、不審者に見えていないだろうか……。

「おはようございます。本日はどちらにお越しでしょうか?」
「ええっと、久遠さんのお宅に……」
「久遠様からお伺いしております。お名前と身分証のご提示願います」
「は、はあ。雫石月です。免許証を」

 財布から免許証を取り出し差し出した。

「ありがとうございます。確認いたしました。お部屋への行き方はご存知でしょうか?」
「え?いえ」

 メールにはそこまでは書いていなかった。マンションの住所はあったが、部屋番号は書かれていなかった気がする。




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