ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~

せいとも

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第八章

俺様ドクターは独占欲を隠さない③

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 残された私は、手のひらに乗るカードを見つめて呆然とする。

 私も会いたいと思っていた。柾さんも思ってくれていた。嬉しい気持ちが溢れているが、その前に柾さんが投下していった爆弾の処理はどうしたらいいのだろうか……。

 重い足を引きずり部署に戻った私に、視線が突き刺さる。

 『救急要請、救急要請』

 私を味方してくれるように、救急の出動要請が入って来た。

「行くぞ」
「はい」

 この場は何とか逃れることができたようだ。

「自宅階段の2階から転落した70代男性、命に別状なし」
「了解しました。搬送先確認します」

 現場に到着して男性をストレッチャーに乗せた。一人暮らしのようだ。意識はしっかりしている。

「頭は打ってませんか?」
「はい」
「お名前と年齢を教えてください。連絡をするご家族はいらっしゃいますか?」

 必要事項を聞き出す。

「港浜救命救急センター受け入れオッケーです」
「ぷっ」
「げっ」

 先輩の吹き出す音と私の声が重なった。よりによって、また港浜だ。柾さんがいないことを祈るしかない。

 救急車が港浜救命救急センターに到着した。

 後ろの扉を開けストレッチャーを出す。ストレッチャーを押し、本日三度目になる病院内へ。時田先生とは顔を合わせたくないが仕事だ。

「港浜南です。受け入れ許可をいただいた72歳男性、自宅階段2階から転落。足に異常あり」

 私の姿を捉えた瞬間、室内の視線が一気に突き刺さる。

 『シーン』っと、辺りが静まり返り居心地が悪い。

「患者はこっちに」

 そんな雰囲気を打ち破るように声がかかった。

「はい!」

 柾さんと同じくらいの身長で、茶髪で少しチャラく見える男性は、白衣を着ていなかったら医者には見えない。

「あー、骨折してるだろうな……。頭は打ってないですか?」
「搬送の際に確認しましたが、打っていないとのことです」
「誰か、レントゲン室連れて行って。ストレッチャーを移すぞ」
「は、はい」

 病院のストレッチャーに移し、白衣の男性の指示を受けた看護師がストレッチャーを押していく。男性の首からぶら下がるネームプレートを見ると、『脳外科 土井』と書かれている。



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