ドクターと救急救命士は天敵⁈～最悪の出会いは最高の出逢い～

第七章

俺様ドクターは我慢できない④

　柾さんとの思わぬ再会に喜ぶよりも、今は爆発した怒りを静めるのに必死だ。

「で？この騒ぎは？」
「そこの女が、医者の私に対して意見するんです～」
「……」

　さも私に非があるような言い方だ。呆れしかない。

「お前何様なにさまだ？」

　柾さんからは、地を這うような怒りの声が上がった。でも、なぜか私に言われた言葉には思えなかった。

「ですよね～。救急隊員の分際で医者に偉そうに言うなんて！」
「お前に言ってるんだ」

　自分が言われているとは思いもしていない時田先生に向かってはっきりと言い放った。

「え⁈」
「患者さんが運ばれて不安なご家族がいる前で、医者の私ってお前の傲慢な態度でどっちに非があるか一目瞭然だ」
「そんな……」
「医者である前に、その腐った根性を何とかしろ」

　時田先生の被害にあっていたと思われる看護師達が、遠巻きに見て拍手している。私も、柾さんの言葉にモヤモヤとした思いがスッキリとした。

　これで一件落着と思って油断した私に、とんでもない爆弾が落とされた。

「月、会いたかった……」

　今までの怒りはどこに行ったのか、柾さんが急に激甘モードで私の名前を呟いたではないか。

「「「るな？」」」

　そこに居合わせた看護師達から一斉に疑問の声が上がる。

「……」

　この微妙な空気はどうしたらいいのだろうか？

「久遠先生？」

　あまりにも色気だだ洩れの柾さんを前に、看護師達も戸惑っているようだ。

「何だ？」
「るなって誰ですか？」
「俺の彼女だが？」
「「「か、か、彼女～」」」
「何か文句があるか？」
「い、いえ。会いたかったってことは……」

　そこで一斉に私に視線が突き刺さる。

「……」
「……」

　微妙な空気が更に続く。時田先生からは、あからさまに睨まれている。

「久遠先生、患者様です！」
「ああ」

　柾さんを呼びに来た看護師によって、この雰囲気が打ち破られた。

　白衣を翻し颯爽と去っていく柾さんを横目に、置いていかれたこの場をどうしていいのやら……。

「雫石！」
「はい」
「戻るぞ」

　先輩が呼びに来てくれたことで、何とかこの場を去ることができた。

　が――。

　今後が恐ろしい。