上 下
40 / 138
第七章

俺様ドクターは我慢できない②

しおりを挟む
「遅かったな」
「すみません」

 あの人達のせいで先輩を待たせてしまった。

「何かあったか?」
「途中で時田先生と会って」
「あの人美人だよな。しかも、腕も確かで患者さんに信頼されている」

 やはり、男性にはすこぶる評判がいい。

「性格は……」
「誰にでも優しくて完璧だな。モテるだろうな」
「……」

 完璧を演じている彼女は、医者じゃなく女優にもなれるのではないだろうか。関わりたくない。

 松岡という看護師も厄介だし、港浜救命救急センターに来るのが億劫だ。

 そうは言っても、すぐに舞い戻って来ることになる。

 次の搬送患者は、17歳の女性で妊娠8ヶ月だった。救急車が現場に到着したのだが、現場には言い合う声が響いていた。

「真知、相手を言いなさい」
「イタタタ、絶対に言わない。私、一人で産むから」
「高校生のアナタが一人でなんて無理でしょ」
「そう言われると思ったから黙ってたの」
「あのっ、救急に連絡を入れたのは?」
「私です」
「お名前は?」
「金谷真知です」
「年齢は?」
「17歳です」
「どういう状況ですか?」
「急にお腹が痛くなって、ジワッと水分が漏れた気がして」
「破水したんですか?」
「これが破水かどうかもわかりません」
「普段の検診はどちらに?」
「……。行っていません」
「搬送先を当ります。お母様も乗ってください。出発するまでに荷物があれば持ってきて下さい」

 母親が一旦自宅に入って行った。その間にも受け入れ要請をしている。本来、妊婦検診を受けていれば、異常がないかの確認もでき、搬送すべき病院もすぐに決まるのだ。

 目の前のまだ幼い少女は、親にバレないように過ごしてきたようだ。

「港浜、なんとか受入れしてもらえます」

 またまた、港浜に決まった。基本、妊婦検診を受けていない妊婦の受け入れは、どこの病院も難色を示す。すぐに決まったのは運が良かった。母親が大きな鞄を持って戻ったので、同乗してもらい出発した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。

如月 そら
恋愛
父のお葬式の日、雪の降る中、園村浅緋と母の元へ片倉慎也が訪ねてきた。 父からの遺言書を持って。 そこに書かれてあったのは、 『会社は片倉に託すこと』 そして、『浅緋も片倉に託す』ということだった。 政略結婚、そう思っていたけれど……。 浅緋は片倉の優しさに惹かれていく。 けれど、片倉は……? 宝島社様の『この文庫がすごい!』大賞にて優秀作品に選出して頂きました(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) ※表紙イラストはGiovanni様に許可を頂き、使用させて頂いているものです。 素敵なイラストをありがとうございます。

Catch hold of your Love

天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。 決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。 当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。 なぜだ!? あの美しいオジョーサマは、どーするの!? ※2016年01月08日 完結済。

シングルマザーになったら執着されています。

金柑乃実
恋愛
佐山咲良はアメリカで勉強する日本人。 同じ大学で学ぶ2歳上の先輩、神川拓海に出会い、恋に落ちる。 初めての大好きな人に、芽生えた大切な命。 幸せに浸る彼女の元に現れたのは、神川拓海の母親だった。 彼女の言葉により、咲良は大好きな人のもとを去ることを決意する。 新たに出会う人々と愛娘に支えられ、彼女は成長していく。 しかし彼は、諦めてはいなかった。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...