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第六章

愛しの彼女と募る想い SIDE柾④

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 溺れる――。

 初めて実感した――。

 女性経験は、若気の至りで少なくはない。ただ、我を忘れてしまう経験は初めてだ。初めての月を相手に、途中からは労ることも忘れて溺れていた。

 彼氏という立場にこだわったのも初めてだ。月とは、真剣に付き合っていきたい。

 結局、気絶するように眠った月が目覚めてから、もう一度いただいてしまった。

 月の全部が俺を刺激する。

 翌日が休みならいいのにと思うほど、ずっと一緒にいたい――。

 そんな訳にも行かず、この日は夜遅くに月を自宅に送り届け、俺は病院に戻った。

 急変の患者はいなかったが、メールがたくさん届いていた。電話をかけてこなかっただけマシだと思うしかない――。

 ところが、すぐに月に会えると思っていた俺が甘かったようだ。

 俺自身が忙しいのはもちろん、救急救命士の月の勤務は病院と一緒で泊まり込みがあるのだ。

 何とか仕事を終わらせて連絡を入れても、電話に出ない……。

 はぁ~。会いたい――。

 この一カ月、メールのみのやり取りだけだ。

 イライラが募る。

「柾、最近どうした?イラついてないか?」
「休みが欲しい……」
「はあ?!お前正気か」
「おかしいか?」
「いや普通のことだが、お前の口からその言葉が出るとは……」
「祐介は、休みたくないのか?」
「えっ、俺?休みは取ってる」
「へ?!どういうことだ?」
「俺は、子供が生まれたばかりだし、適度に休ませてもらってる。すまないな」
「……」

 今初めて知った事実に衝撃を受ける。確かに独身の俺は呼び出しやすいのだろう。今までは何も考えずに引き受けていたが、今は少しでも月との時間を作りたい。

 悶々としている俺に、更に焦る会話が聞こえてきた。

「港浜南の救急救命士の雫石さん知ってるか?」
「あの小さい子だよな?」
「そうそう。めちゃくちゃ可愛くないか?」
「俺も思ってた」

 後輩医師と看護師の男性との会話だ。

「……」

 俺の彼女が話題に――。

 イラッとする。

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