ドクターと救急救命士は天敵⁈～最悪の出会いは最高の出逢い～

第二章

俺様ドクターと再会③

　ただ。不幸中の幸いなのが潰されている訳ではなく、隙間に挟まっている状態で、切断の可能性は少ないだろう。

「すぐに、車を動かしてもらいます。車の下敷きになった子はいませんか？」
「はい。下敷きにはなっていませんが、何人かに接触して壁にぶつかったので、けが人はたくさんいます」
「わかりました」

　その場にいた警察と隊員で車を少し後ろに動かし救出した。

　足が解放され、座り込んで泣き続けている子供の目線にしゃがみ込み、症状を診るために話し掛けた。

「お名前教えてくれる？」
「ウッウッ、グスン、たっくん」
「たっくん、痛かったね。お姉ちゃんに足触らせてくれる？」
「痛くしない？」
「軽く触れるだけなんだけど、痛かったら教えてくれる？」
「うん……」

　すでに、腫れて熱をもっている足に触れた。

「痛い～」
「どんな感じで痛いか教えてくれる？」
「ずっと叩かれているみたいに痛い」
「それは痛いね。すぐに病院に行くからね」
「うん」

　先輩に声を掛け、命に別状はないが重傷であるたっくんを搬送してもらう。

　搬送して救急車が戻って来るまでに、他の患者の処置をする。

　運転手は、後から到着した救急隊員が診てくれている。

　固まって泣き続ける園児と先生の元にも、警察官と救急隊員の姿が見える。

　だが、大人の男性ばかりに囲まれて、子供達は怯えているようだ。

「失礼します。救急救命士の雫石です。子供達とお話させてもらってもいいですか？」
「おねえちゃんも救急車乗るの？」

　ひとりの子が、私に気づき話し掛けてくれた。

「そうだよ。お名前は？」
「りな」
「りなちゃん、私はるなっていうのよろしくね」

　この中の園児では、一番しっかりしているようだ。先ほどまで子供達を囲んでいた警察官達は、一歩下がって聞いてくれている。
　
「るなちゃん」
「そうだよ。怖かったね」
「うん。びっくりした。びっくりしてこけちゃったの」

　足を見ると膝やふくらはぎに傷ができ、出血している。

「私も！」
「僕も！」

　みんながこぞって傷を見せてくれている。擦り傷程度から、少し縫うかもしれない傷の子までいるが、元気に反応してくれている。