ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~

せいとも

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第一章

プロローグ③

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「すみません。サイドブレーキは?」
「はい。先ほど引きました」
「ありがとうございます」
 
 緊急事態に陥ると慌てふためくが、的確に行動してくれる人がいて、更には誰しもが協力的で助かる。

 危機に直面した時の団結力は侮れない。

 運転手は、まだ息をしているが、顔面蒼白で痙攣している。一刻も早くAEDが必要だ。

「AEDが必要な患者はどこだ?」
「ここです。貸してください」

 先ほど返事をくれた女性ではなく、ボサボサの髪にマスク姿の長身の男性がAEDを持って、バスに乗り込んできた。

「チビは出しゃばるな。俺がする」
「チ、チビ~」

 あまりの言いように、思わず叫んでしまう。

 私の叫びが聞こえていないかのように、淡々と手を動かす男性に苛つきが拭えないが、今は一刻の猶予もない状態だ。使い方もわかっているようなので、任せるしかない。

 運転手は、ボサボサマスクの男によって無事に蘇生措置がとられ、タイミングよく到着した救急車に乗せられ搬送される。

 そして――。

「チビ団子またな」


 ボサボサマスクの男が最悪な一言を残して、救急車に同乗してあっという間にいなくなった。

「チビ団子って何?失礼!」

 仕事の時は邪魔になるので、ロングヘアーを団子にしているが、チビ団子とは失礼にもほどがある。

 AEDを迷いなく使いこなせていたので、医療従事者か同業者の可能性が高い。

 確かに長身の彼からすると、私はチビかもしれないが、あんな言い方しなくても……。自分のボサボサ頭を棚に上げて本当に失礼だ。二度と会いたくない。

 一気に最悪な気分になったが、まだまだけが人は多数いる。

 駆けつけた同僚の救急隊員達に助けられ必死に救助し、当番日明けのボロボロの身体で、結局昼まで手伝うことになった。

 やっと現場が落ち着いた頃、ふと先ほど言われた言葉が蘇った。

 チビ団子――。

 最悪の出会いの瞬間だった――。
 
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