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第十七章

未来へ⑧

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 小春から言われて初めて気がついた。ゆくゆくはお父様の跡を継ぐなら本社勤務になるはずが、私のことを考えてくれたのだろう。今日まで知らされていなかったことよりも、ここに辿り着くまでに最善の策を検討してくれたことを感謝しなくては……

 プロポーズも、仕事をこのまま続けられるのも、全部が私のためなのだと実感した。小春のお陰で大切なことに気づけたのだ。

「小春、ありがとう」
「ん? なにが?」
「これからも仲良くしてね」
「もちろん」

 私達の友情を再確認したタイミングで、蒼空さんからメッセージが入る。

『昌磨とそっちに行っていいか?』

 小春とお茶をすると連絡をしておいたのだ。目の前の親友にも幸せになってほしい。きっと、蒼空さんも同じことを轟課長に思っているはずだ。了承の返事を送って二人が現れるのを待つ。

「凛花」
「蒼空さん、お疲れ様」
「えっ、轟課長⁉」

 小春が驚きの声を上げているけれど嬉しそうだ。

「俺達は先に帰るから」
「佐田さん、時間があるなら少し話をしない?」
「はい」
「じゃあ、小春また明日ね」
「うん」

 親友の幸せを祈り、蒼空さんとカフェを出た。

「今日の夕食は何にする?」
「凛花」
「ん?」
「何が食べたいか聞かれたから凛花って答えたんだ」
「もう、何それ。私は食べ物じゃないでしょ!」
「甘くて一度食べると中毒性がある危険な食べ物だよ」
 
 耳元で囁かれて、腰が抜けそうになる。蒼空さんには翻弄されっぱなしだ。このままだと、マンションに帰ったらすぐに食べられそうだ。なんとか話題を変えてみる。

「それよりも、こっちで働くっていつ決まったの?」
「ああ、色々と考えて調整していたんだ」
「先に教えてくれていたら驚かずに済んだのに」
「昨日も今日も、全部が凛花に喜んでもらうためのサプライズだ」
 
 満面の笑みで私を見つめながら言われると文句も言えなくなる。

「近々、俺の実家と凛花の実家へ挨拶に行こう」
「うん」

 避けては通れない道だとわかっていても、美和ちゃんのことがあって若干不安にはなる。

「うちの実家も驚きそう」
「ああ、大丈夫だ」

 まさかプロポーズの前に報告済みとは知らない私は、後日驚くことになる。

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