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第十七章
未来へ⑦
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「御曹司……」
誰かがポツリと呟いた。声の主は風花で、蒼空さんを見つめる視線は熱い。片想いを責めるつもりはないけれど、モヤモヤとして嫉妬してしまう。きっと片桐ホールディングスに戻っても、容姿や肩書にたくさんの女性が寄ってくるに違いない。
モテる彼氏、いや婚約者をもつと大変だとしみじみ感じた。ただ指に輝く指輪の存在が、私を本物だと主張してくれている。
驚きのまま終わった朝礼は、一日中オフィス内をザワつかせていた。蒼空さんに憧れる女性社員よりも、まだまだ蒼空さんからたくさんのことを学びたいと思っていた男性社員の方が、よりショックを受けているように見える。これからの片桐にはなくてはならない存在かもしれないけれど、クラウドフラップにとっても大きな存在だったのだ。
朝の騒ぎの余韻が残り、オフィス内は定時になっても残業している人の姿が多数見られる。私は時間通りに終わることができたので、帰る準備をしてエレベーターを待っていた。
「凛花!」
「あっ、小春」
「ちょっとお茶しない? 時間ある?」
「うん。メッセージだけ入れておくね」
オフィスビルを後にして、近くのカフェに入った。セルフ式のカフェは、仕事帰りの人で混みあっているけれど、なんとか席を確保する。交代でドリンクを買いに行って一息ついた。
「今日は一日落ち着かなかったね」
「うん」
「凛花はもちろん片桐部長が御曹司って知ってたんだよね?」
「私も最近知ったところなの」
「そうなの? で?」
「え? なに?」
「左手の薬指」
やっと、小春が私を誘った理由がわかった。いつ気づいたのかはわからないけれど、指輪の存在が気になっていたのだろう。
「あっ、うん。昨日プロポーズされたの」
「フフッ、片桐部長、凛花は俺のものだって存在をアピールしてるんだ」
小春の言葉に頬が熱くなるのを感じた。その通りだけど、面と向かって突っ込まれると恥ずかしい。
「凛花もすぐに辞めなくていいみたいだし安心した」
「それは私も今日知ったの」
「ええ!!」
「これからのことを話し合うことなく、プロポーズされて今日の発表だから」
「片桐の本社はここじゃないでしょう?」
「うん」
「きっと凛花のことを一番に考えて調整してくれたんだね」
誰かがポツリと呟いた。声の主は風花で、蒼空さんを見つめる視線は熱い。片想いを責めるつもりはないけれど、モヤモヤとして嫉妬してしまう。きっと片桐ホールディングスに戻っても、容姿や肩書にたくさんの女性が寄ってくるに違いない。
モテる彼氏、いや婚約者をもつと大変だとしみじみ感じた。ただ指に輝く指輪の存在が、私を本物だと主張してくれている。
驚きのまま終わった朝礼は、一日中オフィス内をザワつかせていた。蒼空さんに憧れる女性社員よりも、まだまだ蒼空さんからたくさんのことを学びたいと思っていた男性社員の方が、よりショックを受けているように見える。これからの片桐にはなくてはならない存在かもしれないけれど、クラウドフラップにとっても大きな存在だったのだ。
朝の騒ぎの余韻が残り、オフィス内は定時になっても残業している人の姿が多数見られる。私は時間通りに終わることができたので、帰る準備をしてエレベーターを待っていた。
「凛花!」
「あっ、小春」
「ちょっとお茶しない? 時間ある?」
「うん。メッセージだけ入れておくね」
オフィスビルを後にして、近くのカフェに入った。セルフ式のカフェは、仕事帰りの人で混みあっているけれど、なんとか席を確保する。交代でドリンクを買いに行って一息ついた。
「今日は一日落ち着かなかったね」
「うん」
「凛花はもちろん片桐部長が御曹司って知ってたんだよね?」
「私も最近知ったところなの」
「そうなの? で?」
「え? なに?」
「左手の薬指」
やっと、小春が私を誘った理由がわかった。いつ気づいたのかはわからないけれど、指輪の存在が気になっていたのだろう。
「あっ、うん。昨日プロポーズされたの」
「フフッ、片桐部長、凛花は俺のものだって存在をアピールしてるんだ」
小春の言葉に頬が熱くなるのを感じた。その通りだけど、面と向かって突っ込まれると恥ずかしい。
「凛花もすぐに辞めなくていいみたいだし安心した」
「それは私も今日知ったの」
「ええ!!」
「これからのことを話し合うことなく、プロポーズされて今日の発表だから」
「片桐の本社はここじゃないでしょう?」
「うん」
「きっと凛花のことを一番に考えて調整してくれたんだね」
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