俺様上司と複雑な関係〜初恋相手で憧れの先輩〜

第十四章

彼の家族④

「何か言ってましたか？」
「昨夜帰って来たのを知っているから、再会で燃えたんだなって」
「はい⁉　何てことを……」

　遅刻を注意された訳ではなく、そんな会話をしていたとは……

「俺と凛花は、昼から出勤にしてもらった」
「一緒に行ったらなんて言われるか……」
「さすがに俺は、休みをもらっていたから準備ができ次第出勤するよ。凛花は昼からおいで」
「いいの？」
「ああ」

　正直、睡眠時間も少なくまだダルイ身体で、短時間で準備する自信はない。蒼空さんはあっという間に準備をして、寝坊したとは思えない爽やかさで出掛けて行った。一人になったマンションの広い空間でも、昨日までの完全に一人ではなく、蒼空さんの存在が残っているだけで温かみが違う。

　私にはなくてはならない存在だと再認識しているけれど、蒼空さんの家族に受け入れてもらうことはできるのだろうか。

　蒼空さんや金ちゃん先輩みたいに、御曹司を全く出さずに、誰にでも分け隔てなく接する人の方が珍しいと思う。

　大学時代には、実家のネームバリューを前面に出して、自慢しているような人もいた。御曹司やお嬢様と言われる人達にいい印象はない。

　お父様の方針で、自力で地位を築いてきた蒼空さんは、素晴らしいと思う。当たり前のように、親の会社に入り威張っている人もいるのだ。金ちゃん先輩にしても実家で働いてはいるけれど、彼女を作る暇がないくらい仕事が忙しくて身を粉にして働いている姿が思い浮かぶ。

　悩んでいても時間は止まってくれないので、オフィスに向かった。

「ｵﾂｶﾚｻﾏﾃﾞｽ……」
　
　後ろめたい気持ちで、自然と声が小さくなってしまう。

「プッ、吉瀬さん、おどおどし過ぎ」
「ｽﾐﾏｾﾝ……」

　轟課長に笑われるも、理由がバレているだけにいたたまれない。

「いつも真面目に働いてくれてるんだから、誰も何とも思っていないから。それどころか、有休をもう少し使った方がいいくらいだよ」
「ありがとうございます」

　轟課長の温かい言葉に救われるけれど、蒼空さんから視線を感じる。