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第十二章
彼の正体③
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もちろん蒼空さんに会えないのは寂しいけれど、そうは言っていられない状況だ。お父様の命に別条がないとわかりホッとした。
そういえば、今まで何度か蒼空さんは何者だろうと思うことがあったけれど、実家のことは聞いたことがなかった。私が知らない何か秘密があるのだろうか。などと呑気に考えていた私は、後日驚くことになる。
なんとか蒼空さんの抜けた穴を、開発部一丸となって乗り越えて週末を迎えた。
「吉瀬さん」
「はい」
「蒼空から連絡はあった?」
「はい、お父様は順調に回復しているようです」
「そうか……。蒼空は戻ってくるよな?」
「へ⁉ 今週末一度戻って来るって言ってましたよ」
「いや、そうじゃなくて仕事に戻ってくるか気になって」
「え⁉」
「いや、何でもない。あまりに用意周到に思えて不安になっただけだ。何かわかったら教えてくれ」
「はい……」
轟課長も不安に思っているようだ。私よりも詳しく知っているからこその質問なのではないだろうか……
会えない日が私の不安をさらに煽っている。
仕事が終わってマンションに帰るも落ち着かない。広いマンションでいつ帰ってくるかわからない蒼空さんを待っている時間が、とてつもなく長く感じる。
お腹を空かせて帰ってきてもいいように、蒼空さんの好きなハンバーグを作った。じっとしていると蒼空さんのことばかり考えてしまうので、気持ちを落ち着かせるためにお風呂に入る。最近は仕事から帰ると、いつ蒼空さんから連絡が入るかわからないので、簡単にシャワーで済ませて待っていたのだ。
もうすぐ会える喜びとは裏腹に、何か大きな変化が起こりそうな予感がする。
今の私にはもう、蒼空さんのいない未来は考えられない。
どれくらいバスタブに浸かって考えごとをしていたのだろう。
「凛花? 凛花?」
私を呼ぶ声が廊下から聞こえた。
「え⁉ 蒼空さん?」
私の驚いた声がバスルームに響き、廊下まで聞こえたのかバスルームの扉が開いた。
「凛花……。良かった……。一時間くらい前にメッセージを入れたんだが、既読にならないから心配した」
そういえば、今まで何度か蒼空さんは何者だろうと思うことがあったけれど、実家のことは聞いたことがなかった。私が知らない何か秘密があるのだろうか。などと呑気に考えていた私は、後日驚くことになる。
なんとか蒼空さんの抜けた穴を、開発部一丸となって乗り越えて週末を迎えた。
「吉瀬さん」
「はい」
「蒼空から連絡はあった?」
「はい、お父様は順調に回復しているようです」
「そうか……。蒼空は戻ってくるよな?」
「へ⁉ 今週末一度戻って来るって言ってましたよ」
「いや、そうじゃなくて仕事に戻ってくるか気になって」
「え⁉」
「いや、何でもない。あまりに用意周到に思えて不安になっただけだ。何かわかったら教えてくれ」
「はい……」
轟課長も不安に思っているようだ。私よりも詳しく知っているからこその質問なのではないだろうか……
会えない日が私の不安をさらに煽っている。
仕事が終わってマンションに帰るも落ち着かない。広いマンションでいつ帰ってくるかわからない蒼空さんを待っている時間が、とてつもなく長く感じる。
お腹を空かせて帰ってきてもいいように、蒼空さんの好きなハンバーグを作った。じっとしていると蒼空さんのことばかり考えてしまうので、気持ちを落ち着かせるためにお風呂に入る。最近は仕事から帰ると、いつ蒼空さんから連絡が入るかわからないので、簡単にシャワーで済ませて待っていたのだ。
もうすぐ会える喜びとは裏腹に、何か大きな変化が起こりそうな予感がする。
今の私にはもう、蒼空さんのいない未来は考えられない。
どれくらいバスタブに浸かって考えごとをしていたのだろう。
「凛花? 凛花?」
私を呼ぶ声が廊下から聞こえた。
「え⁉ 蒼空さん?」
私の驚いた声がバスルームに響き、廊下まで聞こえたのかバスルームの扉が開いた。
「凛花……。良かった……。一時間くらい前にメッセージを入れたんだが、既読にならないから心配した」
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