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第十章
公認の仲④
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困惑している私達に、しつこく声を掛けてくる。
「前から時々、二人の姿を見ていて可愛いと思ってたんだ。俺、30階にある片桐ホールディングスで働いている床田です」
勝手に自己紹介を始めた。片桐ホールディングスと言えば、このオフィスビルでも最大手の企業だが、本社は私達の地元にあったはずだ。片桐で働いていることが自慢のような口調に、関わりたくないと思ってしまう。片桐ホールディングスが一流であって、彼が一流かどうかは別の問題だ。
「どうした?」
外から帰ってきたのか、タイミングよく轟課長に声を掛けられる。
「轟課長」
「どういう状況?」
床田さんと私達の距離感と微妙な表情で、何かを察してくれていそうだ。
「またにします」
轟課長からジロッと見られて、逃げるように去って行く。
「大丈夫? 何があった?」
「さっきの人に声を掛けられて、名前を聞かれたんですが、答えたくなくて困ってたので助かりました」
「私達の顔は知っていたみたいです……。クラウドフラップの二人だよねって声を掛けられたので」
「どこの奴だ?」
「片桐ホールディングスの床田って名乗ってました」
「片桐ホールディングス……。また何かあったら言えよ」
「「ありがとうございます」」
そのままやって来たエレベーターに乗り込んでオフィスに戻ったが、小春がちらちらと轟課長を見ているのに気づいた。もしかしたら、小春ちゃんは轟課長が好きなのかもしれない。
オフィスに戻って忙しくしていると、先ほどの床田さんのことはすっかり忘れ去ってしまっていた。同じオフィスビルで働いていても、とんでもない人数が働いているので、ビル内で偶然会う機会はないだろうと油断していた。
それが、あの日以来ちょこちょこと遭遇する。しかも、私が一人か女性と一緒の時だけなのだ。
蒼空さんが、社長や役職者との会食の日、私は小春と食事に行く約束をしていた。二人でエレベーターを待っていると、蒼空さんがこちらにやって来る。
「凛花、昌磨に聞いたけど、変な男に声を掛けられたんだろう?」
「えっ? あっ、うん」
「気をつけろよ。帰りも遅くならないように。どこへ行くか、もう決まっているのか?」
「前から時々、二人の姿を見ていて可愛いと思ってたんだ。俺、30階にある片桐ホールディングスで働いている床田です」
勝手に自己紹介を始めた。片桐ホールディングスと言えば、このオフィスビルでも最大手の企業だが、本社は私達の地元にあったはずだ。片桐で働いていることが自慢のような口調に、関わりたくないと思ってしまう。片桐ホールディングスが一流であって、彼が一流かどうかは別の問題だ。
「どうした?」
外から帰ってきたのか、タイミングよく轟課長に声を掛けられる。
「轟課長」
「どういう状況?」
床田さんと私達の距離感と微妙な表情で、何かを察してくれていそうだ。
「またにします」
轟課長からジロッと見られて、逃げるように去って行く。
「大丈夫? 何があった?」
「さっきの人に声を掛けられて、名前を聞かれたんですが、答えたくなくて困ってたので助かりました」
「私達の顔は知っていたみたいです……。クラウドフラップの二人だよねって声を掛けられたので」
「どこの奴だ?」
「片桐ホールディングスの床田って名乗ってました」
「片桐ホールディングス……。また何かあったら言えよ」
「「ありがとうございます」」
そのままやって来たエレベーターに乗り込んでオフィスに戻ったが、小春がちらちらと轟課長を見ているのに気づいた。もしかしたら、小春ちゃんは轟課長が好きなのかもしれない。
オフィスに戻って忙しくしていると、先ほどの床田さんのことはすっかり忘れ去ってしまっていた。同じオフィスビルで働いていても、とんでもない人数が働いているので、ビル内で偶然会う機会はないだろうと油断していた。
それが、あの日以来ちょこちょこと遭遇する。しかも、私が一人か女性と一緒の時だけなのだ。
蒼空さんが、社長や役職者との会食の日、私は小春と食事に行く約束をしていた。二人でエレベーターを待っていると、蒼空さんがこちらにやって来る。
「凛花、昌磨に聞いたけど、変な男に声を掛けられたんだろう?」
「えっ? あっ、うん」
「気をつけろよ。帰りも遅くならないように。どこへ行くか、もう決まっているのか?」
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