上 下
73 / 137
第十章

公認の仲③

しおりを挟む
「クールで女性を寄せつけないオーラを出してた片桐部長が、凛花と同棲してるんでしょう?」
「うん」
「きっかけは?」
「実は、高校の部活の先輩なの」
「ええ⁉」

 驚くのも無理はない。蒼空さんとこの会社で再会した時に『はじめまして』と言われて以来、私は誰にもこのことを打ち明けていなかったのだ。社内で知っているのは、轟課長くらいだろう。

「ずっと、片想いしていたの。まさかつき合うことになるなんて、夢にも思ってなかったよ」
「普段の二人を見ていても、そんなに前からの知り合いとは、思わなかったもん。片桐部長なら、高校の時からモテてそうだね」
「すごい人気だったよ。でもね、ずっと彼女はいなかったの」
「なんで⁉」
「目標があったんだって」
「ストイックな片桐部長っぽい。でも、最終的に凛花を選んだのは納得だよ」
「え⁉」
「すっごくお似合いだもん」
「……。ありがとう」

 今まで全く自信がなかった私に、小春の言葉はすごく嬉しくて、胸が熱くなる。

「応援するから、何かあったらいつでも相談してね」
「うん」

 相談できる人がいることは、今の私にとってどれだけ心強いか……

「風花も片桐部長のことは諦めたみたいだよ」
「そうなの?」
「林さんや橋本さんなら負ける気がしないけど、凛花が相手だと諦めるしかないよね」
「へ⁉」
「相変わらず無自覚なんだから……。片桐部長も心配だろうね」

 小春がひとりで何かに納得しているけれど、全く意味がわからない。無自覚とはどういうことだろう。

「片桐部長は、社外の人にも人気があるから、凛花も大変だね」
「……」

 蒼空さんは、取引先の人にも男女問わず人気がある。私の知らないところでも、ライバルはたくさんいると思う。目の前のライバルは、いなくなったけれど安心できないのだ。

 ランチが終わって、小春とエレベーターを待っている時だった。

「ねえねえ」

 後ろで男性が誰かを呼んでいるけれど、私と小春は関係ないだろうと思っていた。

「クラウドフラップの二人だよね?」
「「へ⁉」」

 どうやら私達を呼んでいたみたいだ。

「名前教えてよ」
「「……」」

 いきなり名前を聞かれても、答える義理はない。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

浮気をした婚約者をスパッと諦めた結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:546pt お気に入り:84

Lovers/Losers

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:90

愛され転生エルフの救済日記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,261pt お気に入り:38

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:583

左遷先は、後宮でした。

BL / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:1,427

~ファンタジーアラカルト~お好み選びの短編集

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

推しヒロインを幸せにしたら、極上の婚約者が出来ました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:191

処理中です...