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第八章

嫉妬が向けられる⑦

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「あとは警察に任せておこう。後日、事情聴取を受けることになるかもしれないが、俺がついているから大丈夫だ」
「うん」

 社内の憧れの的の蒼空さんには、ずっと彼女がいなかった。そして、誰もが彼女ができるとは予想していなかったはずだ。
 
 それが、急に私という彼女ができたことで変化が訪れる。しかも、梨乃ちゃんをはじめとして、林先輩の裏でこっそりと行動していた人達が、林先輩がいなくなったことで保たれていた均衡が一気に崩れたのだ。

 ずっと蒼空さんに憧れていた人達にとっては、私の存在が許せないかもしれないが、蒼空さんのことを好きな気持ちは誰よりも長く大きいと言える。

 蒼空さんの彼女として認めてもらえるように、私は私らしくいたい。

 梨乃ちゃんのことは、職場の後輩として仲良くしていたのでとても残念だが、改心してほしい。

 結局、私は様子をみて一晩入院することになった。蒼空さんも一緒に泊まると言ったけれど、残念ながら病院は付き添いができないため、渋々帰っていったのだ。


 翌朝、病院へ迎えに来てくれた蒼空さんは、寝不足なのか目の下に隈ができていて疲れた顔をしている。

「大丈夫?」
「ああ、昨夜病院を出てから昌磨と会っていたんだ。凛花が救急車で運ばれた後のことは、あいつに全て任せていたから」
「轟課長にお礼を言わないと」
「ああ。橋本の件は逮捕されたこともあって、懲戒解雇処分になった。社長も驚いていたようだ」
「会社にも、ご迷惑をお掛けしちゃいましたね」
「凛花は何も悪くないだろう。社内では、すでに橋本のことが知られていて、浜口をはじめ行き過ぎた行動が気になっていた奴らが、急に静かになったと言っていた。浜口と林は、なにか橋本に弱みを握られていたみたいだ」
「そうなんだ……」

 認められたわけではないのが複雑な気持ちだが、過激なことは避けていただきたいのが本音なので、正直ホッとした。嫉妬はなくならないだろうが、今回のように危害が加わるようなことはないだろう。

 蒼空さんがモテることは知っていたが、こんなことになるとは予想もしなかった。軽いケガで済んで、本当に良かったと思う。

 蒼空さんとの交際を認めてもらえるように努力したい――

  
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