上 下
28 / 137
第五章

新たな始まり⑤

しおりを挟む
 手続きが終わりそのまま地下の駐車場に連れて来られた。駐車場に来るだけで、三回もカードキーを翳すところがあったことに驚きだ。

 地下の駐車場には、私の想像通りの高級車が、ずらっと並んでいる。

 蒼空さんの車は、車に詳しくない私でも知っている、高級外車のゲレンデといわれるものだった。とんでもなく、値段が高いということだけはわかる。マンションと車を見ただけで、私とは住む世界が違いすぎるのだ。

「凛花の家はどの辺だ?」
「ここから二駅のところで……」

 住所を告げると、蒼空さんがナビを合わせてくれる。休日の道路は比較的空いていて、車だと十分ほどで到着した。

「近いところに住んでたんだな」
「車だとあっという間だね。そこのスペース、少しの間なら止めていいの」

 マンションの来客用のスペースに止めてもらったが、車幅が大きくかなり目立つ。現に、前を通っていくマンションの住人に、ジロジロとみられているではないか。早く準備をして出なくてはと、気持ちが焦る。よく考えると、今まで部屋に男性を入れたこともないし、昨日の朝に片づけて出勤したかも不安だ。 

 コンシェルジュはもちろんいないが、オートロックはついているし、平日の昼間には通いの管理人さんもいる。就職してからここに住んでいるが、困ったことは一度もなく、気に入っているのだ。

 エレベーターで五階まで上がって、廊下を奥まで進んだところが私の部屋。

「どうぞ。散らかっているかもしれませんが」
「お邪魔します」

 私に続いて入って靴を脱いだ蒼空さんは、きちんと靴を揃えている。高校の頃から男子達は、靴や持ち物を散らかしていたが、蒼空さんの身の回りだけは、常に綺麗に整頓されていた。それどころか、みんなの靴を並べている姿を、何度も見たことがある。以前と変わらない蒼空さんに、憧れていた頃を思い出して、懐かしい気持ちになった。

「ソファに座ってね。コーヒーでいい?」
「ああ」

 コーヒーを飲んで、待っていてもらう間に、荷物を準備しなくてはと思うのだが、二日分くらいで足りるのだろうか。

「今日と明日の分でいいかな?」
「近いからすぐに取りに来ることはできるが、当分の間うちで過ごせるぐらいは、まとめて持って行こう」



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

媚薬の恋 一途な恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:150

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,500pt お気に入り:3,396

前世の記憶さん。こんにちは。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,258pt お気に入り:1,126

そろそろ浮気夫に見切りをつけさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:64,533pt お気に入り:3,687

【完結】これはきっと運命の赤い糸

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:20

一妻多夫の奥様は悩み多し

BL / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:677

【完結】※R18 熱視線 ~一ノ瀬君の瞳に囚われた私~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:264

処理中です...