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第四章

後輩で部下で愛しい存在 SIDE蒼空②

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 二人は、あっという間にバスケ部の仲間に受け入れられ、マネージャーとして俺達をサポートしてくれた。マネージャーに決まった時には、他のマネージャー希望の女子達からのブーイングがあがった。俺は、凛花達が揉めごとに巻き込まれないように、自ら動き釘を差しておいたのだ。

 そして俺達は、部員全員の力で目標だった全国の、頂点に立つことが出来たのだ。あの時の感動は、一生忘れないだろう。

 高校を卒業して、目指していた大学に進学をした。大学時代にできる限りの資格を取り、大手に就職をしたのだ。システムエンジニアとして、必死に働いていた俺に転機が訪れる。

 『クラウドフラップ』の社長との出会いだ。

 学生とは違い仕事に追われる毎日に、希望した業種で働いているにも関わらず、全く楽しくない。給料をもらい仕事をしているのだから、当たり前だと言われたら、俺が甘いのかもしれないが、体力と気力を奪われる日々……。

 そんな時、たまたま友人と訪れたバーで知り合ったのが、羽田はねださんだった。隣の席に座ったことがきっかけで意気投合し、話をしているうちに彼が注目企業の社長だと知る。一緒に訪れていた友人が、用事があり先に帰っても、話し込むほど彼は魅力的な人だった。羽田さんも、俺に可能性を感じたようで、更に事業を拡大するために必要な人材だと、ヘッドハンティングされたのだ。俺は、この出会いと直感でクラウドフラップに、お世話になることを決めた。俺が、彼女も作らずにストイックに努力してきた本当の理由を知っても、快く受け入れてくれたのだ。

 実は、俺は片桐ホールディングスの長男で、ゆくゆくは片桐へ戻ることになる。ただ父親の方針で、三十歳になるまでは自分の力で就職し、片桐を出すことなく実績を上げることを約束させられ、今に至る。

 俺の事情を知るのは、羽田社長と陽さんと、同僚の昌磨だけだ。実は、神楽坂リゾートのクラブフロアを簡単に取れるのは、俺が片桐だからだ。片桐の名前を使ったことは今までなかったが、凛花との始まりはどうしても、神楽坂リゾートの『SAKURA』が良かった。神楽坂リゾート、陽さんの兄である社長の奥さんに対する溺愛に、あやかりたい一心だったのだ。

 クラウドフラップで、まさか凛花と再会できると思っていなかった俺は、驚きと運命に感謝した。高校時代より更に美しくなっている凛花は、社内でも目立つ存在で、凛花を狙う男性社員が多い。目標を達成するまで、想いを伝えられないもどかしさと、凛花に言い寄る男共へイラッとしながらも、無自覚天然に助けられ今日の日を迎えた。

 ここまでの道のりが長かったのだ――。

 
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