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第三章

完璧な上司で先輩との関係④

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「田中さんは、打ち合わせに出て直帰すると聞いています。林先輩は定時の頃に見かけたんですが、そのまま……」
「そういえば数日前に林が、週末は合コンだと大きな声で話をしていたな。田中は確かに打ち合わせだが、人に頼んでいるのなら戻って来るべきだろう……。わかった。この件も俺に任せろ」
「え⁇」
「大丈夫だ」

 林先輩も、あれだけ蒼空さんを追いかけ回しているのに、合コンは別だと言っていたことを思い出す。不敵な笑みを浮かべる蒼空さんに全く大丈夫な気はしない。

「凛花の週末の予定は?」
「え?特にはありませんが……」

 突然話題が代わり素直に答えてしまった。

「じゃあ、今夜から凛花の時間は俺がもらう」
「へ⁇」
「さっきから変な声を出してどうした?すぐに取って食いはしない……。タブン」

 最後に何か言っていたが、私には聞こえなかった。

「先輩が変なことばかり言うからンンッ」

 言葉を発した瞬間、蒼空さんの唇が私の口を塞ぐ。なぜ急にキスをされたのかわからず、抵抗すら忘れて呆気に取られる。

 その間にもエレベーターは途中で止まることなく、『チンッ』と軽快な音とともに一階に到着した。

 到着と同時にキスすらもなかったように、先ほどと同じく私の腰を抱きビルの出口に向かって歩き出す蒼空さんに、抵抗する余地なくついて行く。

 憧れの蒼空さんと二人きりの時間に、嬉しさよりも突然の急展開に戸惑うばかりだ。しかも、なぜ急にキスをされたのかもわからず、悶々とする。

「とりあえず、食事をしよう」
「えっ?」
「お腹すいてないか?」

 言われてみれば、昼食を食べてからこの時間まで何も口にしていない。急に空腹を感じるが、時間も気になってしまう。

「終電もあるので、あまり時間はないですが……」
「さっき言っただろう。今夜から凛花の時間をもらうって」
「……」

 本気の言葉だとは思っていなかった。時間をもらうの意味がわからない。蒼空さんの真意が全くわからない。

 突然の告白?にキス――。

 昨日まで、いや先ほどまで、ただの上司と部下で先輩後輩だけの関係だったのだから、今の状況が夢の中にいるようで現実味が全くない。



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