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第二章

過去①

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 体育館に響き渡るボールの弾む音――。

 ボールを追って走り回る部員達。『キュッキュ』と床とシューズが擦れ合う音が辺りに鳴り響く。

 いつもチームの中心で指示を出す、一際目を惹くイケメンがいる。

 身長182cmでサラサラの髪に切れ長のクールな目の整った顔立ちの彼は、チームのキャプテンを任されている。頭脳明晰で運動神経抜群の天に二物も三物も与えられた片桐蒼空かたぎりそら先輩は、バスケ部だけでなく学校全体、いや他校の生徒にまで知られていて、男女共に憧れの的なのだ。

 男子とはふざけ合ったりするごく普通の高校生なのだが、女子とは完全に一線を引いている。簡単には近づけないオーラを出し、良くいえばクールだがとにかく女子に対しては冷たい印象で、声をかけられても聞こえていないのか敢えて返事をしないのか……。

 どんなに学校で人気の女子でも関係なく相手にしない。

 そんな蒼空先輩が唯一まともに会話するのが、私達バスケ部のマネージャーだけだったのだ。

 蒼空先輩が入学した年は、先輩目当てでバスケ部にマネージャーの希望者が殺到したらしい。

 明らかに動機が不純で練習にならないだろうと、顧問の判断でこの年はマネージャーの入部は認められなかった。元々バスケ部にいた蒼空先輩の一学年上の女子マネージャー二人が、周囲から妬まれながらもマネージャーを務めていたのだ。

 そして次の年もいうまでもなく、マネージャー希望の女子が殺到した。

 三年生のマネージャーは夏で引退してしまう。誰も入れない訳にはいかない……。そこへ中学でバスケをしていて、ケガで選手としてはもうプレーできない男子が、マネージャーを希望したのだ。顧問は適任者が現れホッとしたと私達に話してくれたことがある。

 そして、蒼空先輩が三年生の年、私がこの高校に入学したのだ。

 小学生の時からミニバスのチームに入っていた私と親友の優香は、中学でもバスケ部に入っていた。もちろん高校でも一緒にバスケをするつもりだった。

 けれど――。




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