俺様上司と複雑な関係〜初恋相手で憧れの先輩〜

第一章

プロローグ②

　蒼空先輩に憧れ、恋愛経験なくこの歳まで来た私には、先輩の真意が全くわからない。常にモテモテの人生を歩んでいる先輩だが、彼女の噂は不思議となかった。

　いつも女性とはうまく距離を置いているように見えた。硬派でクールな先輩は謎が多いのだ。

　高校を卒業し、大学に進学した先輩は、何度か部活に顔を出してくれていた。だが、私が部活を引退する頃を最後に来なくなり、それ以来会うことはなかったのだ。

　私も高校卒業後大学に進学し、そして今の会社に就職した。

　やりがいを感じ仕事一筋で頑張っていた私の元に、突然蒼空先輩との再会の瞬間がやって来たのだ。

　ヘッドハンティングされ、課長という立場で突然私の上司になったのだ。

　オフィスに蒼空先輩が現れた瞬間、女性達から黄色い声が上がったのは言うまでもない。

　驚き固まる私を見ることなく、淡々と自己紹介していた当時の姿を思い出し、切ない気持ちが蘇る。

　他の社員同様、『はじめまして』と挨拶されてからは、片桐課長と呼び学生時代のことは封印してきた。



　再会から二年――。

　なぜ、こんな状況になっているのか。

　激しいキスに、とうとう私の全身からは力が抜けた。

「おっと」

　尻もちをつくかと思った瞬間、先輩に抱きとめられた。

「せ、先輩、どうして……」

　自分の唇に手をやり、まだ残る感触に、顔が真っ赤になるのを感じる。

「蒼空。先輩も課長もいらない」
「そんな!!　む、無理です！　呼び捨てなんて」

　目を潤ませ、抗議の声を上げた。

「そんな可愛い顔で見つめられると、またキスしたくなる」

　私は思わず両手で口を覆った。
　
「ほら、言ってみろ」

　社内では信頼される理想の上司が、突然俺様キャラを発揮する。

「そ、蒼空さん……」
「さんはいらないが、まあ今日のところは許すか」
「ありがとうございます？」

　強引に迫られ言わされたのだが、妥協してくれたことに思わずお礼を言ってしまった。

「凛花は素直で可愛いな」
「へ!?」

　俺様から一転今度は激甘な発言に、私はパニックに陥る。

「凛花、今日から俺に愛される覚悟をしろ」
「はいぃ???」

　静かなフロアに、再び私の絶叫が響いた。