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入学迄のお話2

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「お父さん張り切ってたわよ」

母が椅子へ座り、リリの顔を優しく見つめる。
少し照れてしまうになるが少しの間会えなくなる母の顔を見る。優しい、いつもの母の微笑みだった。

気付けば最後の1口になっているトーストを頬張って咀嚼し飲み込んだ後甘い紅茶を口に含む。

「自信作みたいだから大事にしてあげてね」
うん、とリリは頷き紅茶のお代わりを自分でカップへ注ぐ。

母が食べ終わった皿を回収し、流し場へ持っていく。
新しい紅茶へ砂糖を3つ入れまたかき混ぜる。

「寂しくなるなぁ…」

母に聞かれないようにその言葉ごと紅茶で流し込んだ。


10分もして新しい紅茶も飲み終わり、母のいる流し場へカップとソーサーを持っていく。

「もう出るの?」
母は流し場の桶に水を張っているところだった。

「そろそろだと思うけどまだジュードが来てないから…」
リリは玄関の方を見るがまだ誰も来ている様子はない。

「ジュード君と仲良くやるのよ。ちゃんと長期休みには帰っておいで」
「うん。わかってるよ」

リリは水の張った桶の中へ手に持っていた物を沈める。
多分母にはリリがジュードに対して昔から好意を持っていることをバレている。
恥ずかしさもありそっけない返事になってしまった。

リリンリリン、リリンリリンと高く軽やかな鈴の音が家に響く。

「リリー!迎えに来たぞー!」

「ジュード君来たみたいね」
母は片手間に桶の中へ洗浄魔法をかける。
音もなくくるくると食器は桶の中を回り綺麗になっていく。

「みたいだね…じゃあそろそろいってくるね」
リリはリビングへ移動し、机の近くに置いていた鞄を手に持つ。

「リリ、健康には気をつけるのよ。何があっても私たちは貴女の味方よ…嫌なことがあったら帰っておいで」
「うん…!お母さんも健康に気をつけてね。夏季休暇になったらお土産持って帰ってくるね」

リリは母へ抱きつきしばらくの別れを告げる。

いってきます!とリリは玄関へ向かい、ドアを開けてジュードの元へと向かった。





リリの姿がドアの向こうに消えたあと母マリーアは流し場へ戻り、桶の中を見る。
洗浄魔法が終わっていることを確認して食器へ乾燥魔法をかけ、1つ息をついて窓から空を見る。

あぁ、とても綺麗な青空、2人の門出にはぴったりだ。

マリーアの瞳からは大きな水滴が零れ落ちた。
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