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外伝 旅する母のラプソディ VII
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「ねぇお婆さん。今から私が言う事を通訳して貰えるかしら? どんな内容でも一言一句正確に。変なフォローは入れないでね」
私はお婆さんにそう願い出た。
そして小さく息を吸い込み親を殺されたオークの子供達に一切の情を捨てた目を向ける。
「あなた達の大切な人は私が倒した。そう私が一人で倒したの。恨むなら他の人間ではなく私だけを恨みなさい。復讐したければ掛かって来ることね。受けて立つわ」
別にこれは贖罪のつもりは無い。
それにこれから行う事は子供達に辛い現実を叩き込む事に他ならない。
でも、これが子を持つ母として私が考え得る彼らに対して出来る事だ。
お婆さんが悲痛な表情を浮かべて子供達にオーガ語で語り掛けている。
子供達の顔が見る見る怒りを浮かべ興奮し出したところからすると、どうやらお婆さんは私のお願いを聞いてくれたようだ。
「デッカ! ナナトヤ! セロッソ!!」
怒る子供達の中から一人が立ち上がり何かを叫びながら私を指差している。
どこかあどけなさが残っているが短髪の中々精悍な顔をしている子だ。
彼の言っている意味は分からないが言いたい事は分かる。
許さないだとか親の仇だとかそんな感じでしょう。
「何? あなた達は私を睨むだけなの? あなた達の親は有無を言わさず私を殺そうとして来たってのに情け無いわね。さぁ! 来るの? 来ないの? さっさとしなさいな」
私はドスの利いた笑顔を浮かべ子供達を挑発する。
するとお婆さんが通訳するまでも無く最初に立ち上がった彼が私の挑発に乗って飛び掛って来た。
勇気の有る子ね。
でも何も考えず一人で私に飛び掛ってくるのは無謀と言う他無いわ。
「甘い!!」
私は彼の服を掴み、そのままぐるっと回転して元の位置に投げ飛ばした。
「グハッ」
地面に叩き付けられた彼は苦しそうに呻き声を上げたが、すぐさま立ち上がり私を睨み付けて来る。
私はそれを冷ややかな目を向け受け止めた。
「デヨル! ラハラハ! デソット!」
「ラハラハ。タタイヤ!」
他の親を殺されたオーガ達が彼の元に集まり心配そうに声を掛けたかと思うと、キッと私を睨み次々と私に向かって飛び掛ってくる。
「危ないッ!」
後ろから隊長の叫びが聞こえて来たが、私はチラッとそちらに顔を向けて目に圧を込めて微笑みかけた。
すると隊長は私の意図を悟ったのか唇を噛締め押し黙りそれ以上何も言って来ない。
ありがとうね、隊長さん。
「無駄よ! ていっ! はっ!」
私は正面に向き直ると飛び掛って来る子供達を軽くいなし押し出すように腹部に掌底を食らわせて最初の子と同じように元居た方向に吹き飛ばして行く。
何度かそんなやり取りが続いたが、その度に一人増え二人増え親を殺された子供以外も彼らの戦う意思に触発されて戦える年頃の子達が参戦し出した。
それでもそれぞれがバラバラに攻撃するだけなのだから、オーガと言えども所詮子供ではただの数が多い烏合の衆に他ならない。
だけど、更に何度か同じ事が続いて漸くオーガの子供達はバラバラに攻撃してもダメだと言う事を学習したようだ。
子供達は互いに目配せをして私を取り囲むように陣を取り一斉に襲い掛かって来た。
一人は大きく飛び掛り、二人は這う様に、左右と正面からは残りの子供達。
そして、その後ろには渾身の力を溜めて走りかかってくる最初に戦う意思を見せた子の姿が見えた。
およそ同時に背後以外の全ての方向から親殺しの復讐を遂げようと彼らの持てる全ての力を込めて私に迫り来る。
良い連携ね、でも簡単に負けてあげる訳には行かないの。
だって、その連携でもあなた達の親に比べるとまだまだ足元にも及ばないのだから。
少しの間に成長した子供達に敬意を払い今日初めて私は半身となり少し足を開いて腰をスッと落とし左手を前にして完全な戦闘態勢を取った。
最初に間合いに入ってきた飛び蹴りを放って来た子の足を掴み正面から来ている子達に投げ付ける。
その次に間合いに入って来た地を這う子達を矢継ぎ早に前に出した方の足で肩口を蹴り上げて宙に浮かし順次左右からやって来る子達目掛けて掌底押し出して迎撃した。
最後に残る彼。
目の前で起こった一瞬の出来事に放心した顔を見せたが、私と目が合った瞬間に戦う意思を取り戻して再び走り出す。
「これで終わりにしましょうか」
私は迫り来る彼に対して大きく右足を前に出し、それに合わせて利き手である右手で正拳突きを繰り出した。
踏みしめた震脚は石床を砕きそれによる爆音が部屋を揺るがし、正拳突きは空気を切り裂く破裂音を轟かす。
これは当たれば大人のオーガ……いえ、より強大なフォレストジャイアントやアウルベアでさえ一撃必滅の私の必殺技。
……本来ならね。
私は彼に当たる瞬間身体に込めた全ての力を消しその身の寸前で止める。
止めたと言えど、私の渾身の力による突きなのだからそれによって生じた衝撃波は彼を吹き飛ばした。
っと、あら? どうやら彼じゃなかったみたい。
髪の毛が短かったから男の子だと思っていたわ。
私の放った衝撃波によって彼……いえ彼女ね。
彼女の服の胸元の紐が解け大きく開き、そこから小振りながらも確かな双峰が自己主張をしていた。
それに気付かずに吹き飛ばされた彼女がまた立ち上がり向かって来ようとするが、私はジェスチャーで胸元が開いている事を教える。
彼女は私を警戒しながらも突然の私の行動が気になったのか、ジェスチャーの意図を確かめるべく自身の胸元に目を向けた。
「キ、キ、キャァーーー!」
どうやらオーガにも恥じらいと言うモノが有るらしい。
彼女は悲鳴を上げながら胸元を隠すとそのまま地面に座り込んでしまった。
そして涙目で唇を噛締めながら私を睨む。
その姿に私は溜息を吐いた。
本当に何処が人間と分かり合えないって言うのよ全く。
「ラハラハ……パヨル、メソッソ」
「タラソ、テヨルガ……」
周囲の子供達が彼女に声を掛ける。
その子達の目にはもはや戦意は無く意気消沈とした面持ちだ。
何処と無く何か彼女を説得しているようにも見える。
「デラゾ! タタイヤ! バラッサ!」
そんな周りに対して彼女は怒りを露わに何かを叫ぶ。
おおよその事はなんとなく分かるけど、本当にそろそろ終わりにしましょう。
そう思った私は私はお婆さんに目を向けると、お婆さんは私の視線に気付いたようで彼女達が何を話しているのか訳してくれた。
「今のあなたの凄い攻撃で自分達がどうあがいても勝てない相手と悟ったようです。子供達はラハラハ……まだ諦めていないあの子に『もう戦うのは止めよう』と説得しているのですが聞き入れてくれないようです」
「そう……あの子はラハラハって言うのね。じゃあ今から言う事をラハラハに伝えてくれるかしら?」
私の言葉に頷くお婆さん。
私は彼女……いまだに回りの子供達に叫んでいるラハラハに目を向けるとその名前を呼んだ。
「ラハラハ!」
突然私に名前を呼ばれたラハラハはこちらに目を向けキッと睨みつけてくる。
どうやらラハラハの戦意はまだ燃えているようだ。
辱めを受けた事に怒っているのも有るのだろうけどね。
「良い目ね。だけどラハラハ、今のあなたは弱すぎる。そんなんじゃ私を倒せないわ。私を倒したいならもっともっと強くなりなさい。私はここから遥か東にあるセーテルの森の奥にある隠者の村に住んでるの。逃げも隠れもしないから私に勝てるくらい強くなったらいつでも挑戦しに来なさいな」
私はあえて優しい声でラハラハに言い聞かせるように語る。
お婆さんは私の言葉を訳して話しかけたのだが、途中でその言葉が止まってしまった。
まだまだ喋りたい事が有るのにと、不思議に思ってお婆さんに目を向けると、なにやら目を見開いてこちらを見ているお婆さんの姿があった。
「どうしたのお婆さん?」
私がそう尋ねると少し震えながらお婆さんは目を細め口元を手で覆った。
目には涙を浮かべている。
また悲しい事でもあったのだろうか?
そう思って首を傾げるとお婆さんが嗚咽交じりで呟いた。
「セーテル……懐かしい名を聞いたわ」
そう呟いたお婆さんの顔には笑顔が浮かんでいた。
私はお婆さんにそう願い出た。
そして小さく息を吸い込み親を殺されたオークの子供達に一切の情を捨てた目を向ける。
「あなた達の大切な人は私が倒した。そう私が一人で倒したの。恨むなら他の人間ではなく私だけを恨みなさい。復讐したければ掛かって来ることね。受けて立つわ」
別にこれは贖罪のつもりは無い。
それにこれから行う事は子供達に辛い現実を叩き込む事に他ならない。
でも、これが子を持つ母として私が考え得る彼らに対して出来る事だ。
お婆さんが悲痛な表情を浮かべて子供達にオーガ語で語り掛けている。
子供達の顔が見る見る怒りを浮かべ興奮し出したところからすると、どうやらお婆さんは私のお願いを聞いてくれたようだ。
「デッカ! ナナトヤ! セロッソ!!」
怒る子供達の中から一人が立ち上がり何かを叫びながら私を指差している。
どこかあどけなさが残っているが短髪の中々精悍な顔をしている子だ。
彼の言っている意味は分からないが言いたい事は分かる。
許さないだとか親の仇だとかそんな感じでしょう。
「何? あなた達は私を睨むだけなの? あなた達の親は有無を言わさず私を殺そうとして来たってのに情け無いわね。さぁ! 来るの? 来ないの? さっさとしなさいな」
私はドスの利いた笑顔を浮かべ子供達を挑発する。
するとお婆さんが通訳するまでも無く最初に立ち上がった彼が私の挑発に乗って飛び掛って来た。
勇気の有る子ね。
でも何も考えず一人で私に飛び掛ってくるのは無謀と言う他無いわ。
「甘い!!」
私は彼の服を掴み、そのままぐるっと回転して元の位置に投げ飛ばした。
「グハッ」
地面に叩き付けられた彼は苦しそうに呻き声を上げたが、すぐさま立ち上がり私を睨み付けて来る。
私はそれを冷ややかな目を向け受け止めた。
「デヨル! ラハラハ! デソット!」
「ラハラハ。タタイヤ!」
他の親を殺されたオーガ達が彼の元に集まり心配そうに声を掛けたかと思うと、キッと私を睨み次々と私に向かって飛び掛ってくる。
「危ないッ!」
後ろから隊長の叫びが聞こえて来たが、私はチラッとそちらに顔を向けて目に圧を込めて微笑みかけた。
すると隊長は私の意図を悟ったのか唇を噛締め押し黙りそれ以上何も言って来ない。
ありがとうね、隊長さん。
「無駄よ! ていっ! はっ!」
私は正面に向き直ると飛び掛って来る子供達を軽くいなし押し出すように腹部に掌底を食らわせて最初の子と同じように元居た方向に吹き飛ばして行く。
何度かそんなやり取りが続いたが、その度に一人増え二人増え親を殺された子供以外も彼らの戦う意思に触発されて戦える年頃の子達が参戦し出した。
それでもそれぞれがバラバラに攻撃するだけなのだから、オーガと言えども所詮子供ではただの数が多い烏合の衆に他ならない。
だけど、更に何度か同じ事が続いて漸くオーガの子供達はバラバラに攻撃してもダメだと言う事を学習したようだ。
子供達は互いに目配せをして私を取り囲むように陣を取り一斉に襲い掛かって来た。
一人は大きく飛び掛り、二人は這う様に、左右と正面からは残りの子供達。
そして、その後ろには渾身の力を溜めて走りかかってくる最初に戦う意思を見せた子の姿が見えた。
およそ同時に背後以外の全ての方向から親殺しの復讐を遂げようと彼らの持てる全ての力を込めて私に迫り来る。
良い連携ね、でも簡単に負けてあげる訳には行かないの。
だって、その連携でもあなた達の親に比べるとまだまだ足元にも及ばないのだから。
少しの間に成長した子供達に敬意を払い今日初めて私は半身となり少し足を開いて腰をスッと落とし左手を前にして完全な戦闘態勢を取った。
最初に間合いに入ってきた飛び蹴りを放って来た子の足を掴み正面から来ている子達に投げ付ける。
その次に間合いに入って来た地を這う子達を矢継ぎ早に前に出した方の足で肩口を蹴り上げて宙に浮かし順次左右からやって来る子達目掛けて掌底押し出して迎撃した。
最後に残る彼。
目の前で起こった一瞬の出来事に放心した顔を見せたが、私と目が合った瞬間に戦う意思を取り戻して再び走り出す。
「これで終わりにしましょうか」
私は迫り来る彼に対して大きく右足を前に出し、それに合わせて利き手である右手で正拳突きを繰り出した。
踏みしめた震脚は石床を砕きそれによる爆音が部屋を揺るがし、正拳突きは空気を切り裂く破裂音を轟かす。
これは当たれば大人のオーガ……いえ、より強大なフォレストジャイアントやアウルベアでさえ一撃必滅の私の必殺技。
……本来ならね。
私は彼に当たる瞬間身体に込めた全ての力を消しその身の寸前で止める。
止めたと言えど、私の渾身の力による突きなのだからそれによって生じた衝撃波は彼を吹き飛ばした。
っと、あら? どうやら彼じゃなかったみたい。
髪の毛が短かったから男の子だと思っていたわ。
私の放った衝撃波によって彼……いえ彼女ね。
彼女の服の胸元の紐が解け大きく開き、そこから小振りながらも確かな双峰が自己主張をしていた。
それに気付かずに吹き飛ばされた彼女がまた立ち上がり向かって来ようとするが、私はジェスチャーで胸元が開いている事を教える。
彼女は私を警戒しながらも突然の私の行動が気になったのか、ジェスチャーの意図を確かめるべく自身の胸元に目を向けた。
「キ、キ、キャァーーー!」
どうやらオーガにも恥じらいと言うモノが有るらしい。
彼女は悲鳴を上げながら胸元を隠すとそのまま地面に座り込んでしまった。
そして涙目で唇を噛締めながら私を睨む。
その姿に私は溜息を吐いた。
本当に何処が人間と分かり合えないって言うのよ全く。
「ラハラハ……パヨル、メソッソ」
「タラソ、テヨルガ……」
周囲の子供達が彼女に声を掛ける。
その子達の目にはもはや戦意は無く意気消沈とした面持ちだ。
何処と無く何か彼女を説得しているようにも見える。
「デラゾ! タタイヤ! バラッサ!」
そんな周りに対して彼女は怒りを露わに何かを叫ぶ。
おおよその事はなんとなく分かるけど、本当にそろそろ終わりにしましょう。
そう思った私は私はお婆さんに目を向けると、お婆さんは私の視線に気付いたようで彼女達が何を話しているのか訳してくれた。
「今のあなたの凄い攻撃で自分達がどうあがいても勝てない相手と悟ったようです。子供達はラハラハ……まだ諦めていないあの子に『もう戦うのは止めよう』と説得しているのですが聞き入れてくれないようです」
「そう……あの子はラハラハって言うのね。じゃあ今から言う事をラハラハに伝えてくれるかしら?」
私の言葉に頷くお婆さん。
私は彼女……いまだに回りの子供達に叫んでいるラハラハに目を向けるとその名前を呼んだ。
「ラハラハ!」
突然私に名前を呼ばれたラハラハはこちらに目を向けキッと睨みつけてくる。
どうやらラハラハの戦意はまだ燃えているようだ。
辱めを受けた事に怒っているのも有るのだろうけどね。
「良い目ね。だけどラハラハ、今のあなたは弱すぎる。そんなんじゃ私を倒せないわ。私を倒したいならもっともっと強くなりなさい。私はここから遥か東にあるセーテルの森の奥にある隠者の村に住んでるの。逃げも隠れもしないから私に勝てるくらい強くなったらいつでも挑戦しに来なさいな」
私はあえて優しい声でラハラハに言い聞かせるように語る。
お婆さんは私の言葉を訳して話しかけたのだが、途中でその言葉が止まってしまった。
まだまだ喋りたい事が有るのにと、不思議に思ってお婆さんに目を向けると、なにやら目を見開いてこちらを見ているお婆さんの姿があった。
「どうしたのお婆さん?」
私がそう尋ねると少し震えながらお婆さんは目を細め口元を手で覆った。
目には涙を浮かべている。
また悲しい事でもあったのだろうか?
そう思って首を傾げるとお婆さんが嗚咽交じりで呟いた。
「セーテル……懐かしい名を聞いたわ」
そう呟いたお婆さんの顔には笑顔が浮かんでいた。
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