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第七章 帰郷
第131話 神造体
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「お、おい。ちょっと待て……も、もしかして魔族もその『カドモン』って奴で出来てるってのか?」
沸騰していた俺の頭に突然考えたくもねぇ仮説が脳裏を過ぎった。
それによって急速に茹で上がった感情が冷めていく。
そのまま凍えちまいそうな気分だぜ。
俺の身体は神々が自らの血肉を以て造ったって話だ。
そして魔族達もロキに造られた。
それにクァチル・ウタウスの野郎も気になる事を言っていたじゃねぇか。
女神クーデリアの事を『先行試作品の神モドキ』ってよ。
あれは自分達と女神が同等の存在だってのを言い表してたんじゃねぇのか?
となると、『カドモン』って奴の完成体らしい俺と魔族は……兄弟?
そう考えると背筋に冷たいものが走り、俺はその仮説を否定したくて思わずロキを問い質した。
するとロキは、俺の思考を読んでいるのだろう。
ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべている。
<<ヒヒヒヒ。そう>>
ロキはコクコク頷きながらそう言った。
俺は茫然としてロキの姿を見詰める。
なんてこった……。
俺と魔族は文字通り血の別けた兄弟って事なのか……。
ただ単に神を楽しませる為だけの存在。
くそったれめ! 俺……俺達に兄弟殺しをさせようってのか?
俺はロキを睨みつけた。
いやロキだけじゃねぇ。
ロキの身体の向こう側、今俺達をロキの外から見てるであろう神々全員に対して射殺すつもりで歯を食い縛り目に力を入れる。
しかし、ロキはそれすらも自身の娯楽と考えているのか口角が吊り上るほどの笑みを浮かべた。
そして今度は先程より深く頷くと口を開き……。
<<……とも言えるし、違うとも言える>>
「は? あ…う…え?」
俺は嬉しそうにそう言ったロキの言葉に頭が真っ白になる。
まともな言葉を返せずに口をパクパクとさせちまう。
その間抜け面に満足したのかロキは目を細めた。
<<ヒヒヒヒヒ。引っ掛かった引っ掛かった。いや~キミは本当にからかい甲斐が有るねぇ~>>
「ど、どう言う事だ? からかった? けど、お前らが造った事には代わりはねぇんだろう!」
<<うん。キミも魔族も僕達が造ったのは確かだよ>>
「っ!! ならやっぱり兄弟じゃねぇか。込めた魔力の違いとか、そんな言葉遊びを言ってんじゃねぇだろうな!」
<<だから違うって~。ヒヒヒヒ>>
ちくしょう! こいつの言う事はのらりくらりとして回りくどいったらありゃしねぇぜ。
ロキ……希代のトリックスターとしての色を持つ神の名。
ガイアは言っていたが、自分達は別に神話の神ではなく勝手に名乗ってるらしい。
だが、こいつの言動はトリックスターそのものだ。
ロキになり切ってるのか、元々こう言う性格だからロキを名乗りやがったのか。
<<う~ん、それはノーコメント。プライバシーの侵害だよ~。ヒヒヒヒ>>
「何がプライバシーの侵害だってのっ! 今現在進行形で俺のプライバシーを侵害してる癖によく言うぜ!」
<<ヒヒヒヒ。単純に容れ物となる『アダマ』の根源が違うんだよ。そうだね~。キミに分かりやすく言うと、キミと魔族は神様村で産まれた幼馴染……って感じかな>>
なんか急に例えが身近になりやがった。
根源が違う? 俺と魔族は幼馴染?
分かりやすい……いや、やっぱり意味が分からん。
「つまりどう言う事だ? 他人って事は何となく分かるが……」
<<キミ、本当に鈍いね。つまり君は僕以外の神の『アダマ』から生まれた神造体で、魔族は僕の『アダマ』から生まれた神造体って訳さ。ヒヒヒヒ>>
「あっ、そう言う……。ってそれ最初から言えよ! 例え話が遠回り過ぎんだろ!」
取りあえずホッとしたぜ。
俺と魔族が兄弟って訳じゃないって事を知れてよ。
それに魔族が100%こいつの血肉で出来てるんだって事なら気兼ねなくぶっ飛ばせる……ぜ?
……いや、ちょと待て。
容れ物が違うのは分かったが……中身は?
もしかして俺と同じように……?
「おい、お前! 魔族の中身はなんだ? 俺みてぇにどっかから引っ張って来た転生者ってんじゃねぇだろうな?」
<<あぁ、その事は気にしなくても良いよ。キミが話を最後まで聞かず質問するから脱線しちゃった。ちゃんと大人しく話を聞いておくれよ。さもないと……>>
そう言ってロキがまた人差し指をスッと立てた。
ゲッ! また俺を潰そうってのか!
「クソッ! 分かったっての! それ止めろ!」
<<ヒヒヒヒ。じゃあ、話を戻そうか。今の世界になる少し前かな? 今度の世界には僕達も住人の一人として暮らしてみようって話になって『住人転生計画』を立ち上げたんだ。けど、僕達が人間として下界に降りるにはそれに耐えられる容れ物が必要になる。元々それが神造体『カドモン』を造った理由って訳さ>>
「もしかして、それが『神の落とし子』って奴の事なのか?」
<<あぁ、そうだよ。あれは神造体『カドモン』の初号器『宿り木』って言うんだ>>
ミスティルティン……?
なんかRPGで出てくる武器みてぇな名前だな。
確か北欧神話に出てくる神殺しの武器だっけか?
「けっ、大層な名前だぜ。なんだってそんな名前を付けたんだ?」
<<ヒヒヒヒ。良い名だろ? 神が宿るから『宿り木』ってね。僕が名付けたんだよ>>
お前が名付けたのかよ!
この世界の名前『ラグナロック』といい、こいつ北欧神話好き過ぎじゃね?
「けどよ、暮らしてみようって言うには、ちっとばかし大袈裟な事になってるじゃねぇか。しかもそいつは教会の地下で眠ってばっかりって聞いたぜ?」
<<うん、あれは失敗作。いや、ある意味完成品でもあると言えるけどね。ヒヒヒヒ。当初それぞれ自分達の『アダマ』で自分の依り代とする『カドモン』を造った。けどそれじゃ全然強度が足らなかったんだ。そこで僕達は全ての神々の『アダマ』を混ぜ合わせて造る事を考えたんだよ。これなら神が憑依しても大丈夫だろうってね。それが『宿り木』なのさ>>
「失敗したのに完成品ってどう言う事だ? 完成したのは俺だけなんだろ?」
<<うん、確かに『宿り木』は神の憑依に耐えた。けどね、神が『宿り木』に耐えられなかったんだよ>>
「神が耐えられない……? どう言う事だ?」
<<栄えある最初の憑依者は僕の友達だったバルドル君って言うんだけど、憑依した瞬間に存在を『宿り木』吸われちゃって消えちゃった。多分アダマの純度が高過ぎたんだね。他の神の力に飲まれて溶けちゃったんだよ。いや~これは想定外だったね。ヒヒヒヒ>>
「き、消えたってお前。友達が居なくなったってのにそんな他人事みてぇに……。それに神が消えたって事はその世界の生物達も……」
確かバルドルって神話だとミスティルティンで殺された神の名前なんじゃねぇのか?
偶然か? それとも……?
俺の思考を読んだのかロキは邪悪な笑みを浮かべた。
こ、こいつ、もしかして……?
<<ヒヒヒヒ。けど、『宿り木』はちゃんと起動した。さっきも言っただろう? 僕達は何が起こるかは分からないけど、何かが起こるのは分かるって。 あの時の僕達の心の中にはワクワクで満ち溢れていたんだよ。これは悲劇じゃなくて活劇への幕開けだってね。消えちゃったバルドル君も同じ気持ちだったと思うよ>>
ロキだけじゃなく神達全員が喜んでいただと?
しかも消えてしまった神までも?
俺はロキの言葉に戦慄する。
「やっぱり神ってのは狂ってやがるぜ……」
<<ヒヒヒヒヒ。それは誉め言葉と取っておくよ。まぁ、さすがに僕等まで消えたくは無いからね、一旦住人転生計画は凍結となったんだ。とは言え、『カドモン』の研究は続けたよ。その過程で『主人公計画』が持ち上がったんだ>>
ロキは俺を下卑た笑いを浮かべたままじっと見つめて来た。
『主人公計画』だと……?
「それが……俺って訳か……?」
<<ヒヒヒヒ。そうさ。この世界を一つの物語として一人の主人公をこの世界に送り込む。それを僕達が神界から観戦して楽しむ。小説とゲームと映画のハイブリットって訳。これに関しては最初にガイアもちゃんと説明したろ? そしてキミも喜んで同意したじゃないか。合意の上のWin-Winな契約さ>>
ぐっ……確かにそうだ。
あの時の俺は剣と魔法の世界ってのに興奮して逆上せ上がっていた。
おそらく神達と同じ気持ちだったのかもしれねぇな。
上から目線でこの世界を見下してたんだ。
この世界で生きる住人達の喜びや怒り、そして悲しみを知らなかったからよ。
<<その計画立案と共に僕は主人公のライバルである魔族を造る事にした。代わって主人公の『カドモン』に関しては『宿り木』の反省を踏まえ『アダマ』を提供する神を絞る事にしたんだよ。幾度かの試作の後、最終的に『アダマ』の提供者として相性の良い四十四の神々を厳選した。ガイアをメインコア、ウラノスをサブコア。そして他の四十二神を外殻としてキミの神造体『リーヴ』は完成した。ね? これでキミと魔族が兄弟でないって事を分かってくれたかな?>>
「ガイアをメインだと? それにウラノスってのもガイアから聞いた事が有る名だ。メインとサブって事はギリシャ神コンビで仲が良いのかね? まぁ、裏話はどうであれ、そこら辺はガイアの上っ面話と矛盾はしねぇな」
ガイアを筆頭に四十四人の神々が俺の身体を造った……か。
チッ、なんで俺はガイアの名前を出されて安心してやがるんだ?
<<そうだね。二人は結構仲が良かったよ。なんたって……いや何でもない。ヒヒヒヒ>>
「なんだよ。気になるじゃねぇか」
ロキは俺の問い掛けに目を逸らして口笛を吹きやがった。
くそっ! 馬鹿にしやがって。
ふん、どうせくだらない事だろうぜ。
それに……なんかガイアが他の奴と仲が良いって話を聞くと少しムカつくから聞かねぇ方が精神衛生上良さそうだ。
いや、心にそんな自分風に思う俺が居るのが最高にムカつくけどな。
<<ヒヒヒヒ。じゃあ話を戻すね。実は皆が計画準備に熱中し過ぎて世界の管理にリソースを割かなくなっちゃったもんだから、この世界が崩壊し掛けちゃったんだよ>>
ロキはそう言ってテヘペロをかましてきた。
「おい! なに可愛く言ってやがる。とんでもねぇ事じゃねぇかよ!」
<<ヒヒヒヒ。うん、だから仕方無く僕達はキミの先行試作品の内の一つに神の役割を与える為『宿り木』の余り材料を混ぜ合わせ疑似神体『リーヴスラシル』を造ったんだ。そこに『疑似神格クーデリア』を入れこの世界唯一の女神として管理させたんだよ。これで僕達は思う存分研究に没頭出来るようになったんだ。ヒヒヒヒ>>
「ちっ、そう言う事か。ガイアの奴は宗教が戦争を産むから『クーデリア』を造ったって言ってやがったが、結局お前らの享楽の為じゃねぇか」
<<ヒヒヒヒ。それぐらい大目に見てよ。僕達は僕達自体の世界はちゃんと管理しているんだからさ。で、これがさっきの話の回答だよ。そもそも魂の総量的にこの世界にあまり魂を招くと崩壊しちゃいかねない。だから『クーデリア』も魔族達も、この世界の住人となるべき魂を改造したんだ>>
「ちょっと待て、女神と魔族の魂がこの世界の住人が元になっているだと?」
<<うん、そうだよ。この世界の異物はキミだけだ。それ以上の魂を招くとこの世界は崩壊しちゃうからね。それに魂と言っても意思は与えていない。彼らまで勝手に動かれると折角の準備した物語が台無しだ。魔物と一緒でプログラム通りにしか動かないようにしている……筈だったんだけどね~>>
そう言ってロキは腕を組んで首を傾げた。
何を言ってるんだこいつは?
こいつの言っている事が理解出来ねぇ。
女神も魔族も感情を持っていないだと?
女媧にしても感情豊かだったし、何よりクァチル・ウタウスに関しては明確な意思を持っていた。
敵と言う立場だったが、会話まで出来たんだ。
女神だってそうだ。
街で俺の尻拭いをしてくれた時、最後に見せたあの目は確かに……。
いや、こいつが最後に言った言葉、とその悩む仕草。
「筈だったってのはどう言う事だ?」
ロキは相変わらず悩んだ仕草をしたまま、片目だけ開けてこちらをちらりと見た。
そしてニヤッと笑う。
<<それはねぇ、『主人公計画』に狂いが生じちゃったんだ>>
狂いが生じた……?
それは一体……?
<<本来意思を持たない筈の疑似神格であるクーデリアが突然意思を持ってしまった。そして何故かそれが魔族達にまで波及していっちゃってね。おそらくクーデリアに世界の管理を任せていた所為で、『宿り木』の残りカスに存在していた僕の『アダマ』を通じて感情が魔族の魂に干渉しちゃったんだろう。ヒヒヒヒ>>
「な、なんで突然女神は意思を持っちまったんだ? 原因は一体なんだ?」
ロキが俺の質問にニヤリと笑った。
そして勿体付けるように目を閉じて人差し指を上げる。
一瞬また潰されるのかと思って身構えたが、どうやらそう言う訳じゃなさそうだ。
その立てられた指はゆっくりと俺を差した。
<<ヒヒヒヒ。それはね、キミと出会ってしまったからさ>>
沸騰していた俺の頭に突然考えたくもねぇ仮説が脳裏を過ぎった。
それによって急速に茹で上がった感情が冷めていく。
そのまま凍えちまいそうな気分だぜ。
俺の身体は神々が自らの血肉を以て造ったって話だ。
そして魔族達もロキに造られた。
それにクァチル・ウタウスの野郎も気になる事を言っていたじゃねぇか。
女神クーデリアの事を『先行試作品の神モドキ』ってよ。
あれは自分達と女神が同等の存在だってのを言い表してたんじゃねぇのか?
となると、『カドモン』って奴の完成体らしい俺と魔族は……兄弟?
そう考えると背筋に冷たいものが走り、俺はその仮説を否定したくて思わずロキを問い質した。
するとロキは、俺の思考を読んでいるのだろう。
ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべている。
<<ヒヒヒヒ。そう>>
ロキはコクコク頷きながらそう言った。
俺は茫然としてロキの姿を見詰める。
なんてこった……。
俺と魔族は文字通り血の別けた兄弟って事なのか……。
ただ単に神を楽しませる為だけの存在。
くそったれめ! 俺……俺達に兄弟殺しをさせようってのか?
俺はロキを睨みつけた。
いやロキだけじゃねぇ。
ロキの身体の向こう側、今俺達をロキの外から見てるであろう神々全員に対して射殺すつもりで歯を食い縛り目に力を入れる。
しかし、ロキはそれすらも自身の娯楽と考えているのか口角が吊り上るほどの笑みを浮かべた。
そして今度は先程より深く頷くと口を開き……。
<<……とも言えるし、違うとも言える>>
「は? あ…う…え?」
俺は嬉しそうにそう言ったロキの言葉に頭が真っ白になる。
まともな言葉を返せずに口をパクパクとさせちまう。
その間抜け面に満足したのかロキは目を細めた。
<<ヒヒヒヒヒ。引っ掛かった引っ掛かった。いや~キミは本当にからかい甲斐が有るねぇ~>>
「ど、どう言う事だ? からかった? けど、お前らが造った事には代わりはねぇんだろう!」
<<うん。キミも魔族も僕達が造ったのは確かだよ>>
「っ!! ならやっぱり兄弟じゃねぇか。込めた魔力の違いとか、そんな言葉遊びを言ってんじゃねぇだろうな!」
<<だから違うって~。ヒヒヒヒ>>
ちくしょう! こいつの言う事はのらりくらりとして回りくどいったらありゃしねぇぜ。
ロキ……希代のトリックスターとしての色を持つ神の名。
ガイアは言っていたが、自分達は別に神話の神ではなく勝手に名乗ってるらしい。
だが、こいつの言動はトリックスターそのものだ。
ロキになり切ってるのか、元々こう言う性格だからロキを名乗りやがったのか。
<<う~ん、それはノーコメント。プライバシーの侵害だよ~。ヒヒヒヒ>>
「何がプライバシーの侵害だってのっ! 今現在進行形で俺のプライバシーを侵害してる癖によく言うぜ!」
<<ヒヒヒヒ。単純に容れ物となる『アダマ』の根源が違うんだよ。そうだね~。キミに分かりやすく言うと、キミと魔族は神様村で産まれた幼馴染……って感じかな>>
なんか急に例えが身近になりやがった。
根源が違う? 俺と魔族は幼馴染?
分かりやすい……いや、やっぱり意味が分からん。
「つまりどう言う事だ? 他人って事は何となく分かるが……」
<<キミ、本当に鈍いね。つまり君は僕以外の神の『アダマ』から生まれた神造体で、魔族は僕の『アダマ』から生まれた神造体って訳さ。ヒヒヒヒ>>
「あっ、そう言う……。ってそれ最初から言えよ! 例え話が遠回り過ぎんだろ!」
取りあえずホッとしたぜ。
俺と魔族が兄弟って訳じゃないって事を知れてよ。
それに魔族が100%こいつの血肉で出来てるんだって事なら気兼ねなくぶっ飛ばせる……ぜ?
……いや、ちょと待て。
容れ物が違うのは分かったが……中身は?
もしかして俺と同じように……?
「おい、お前! 魔族の中身はなんだ? 俺みてぇにどっかから引っ張って来た転生者ってんじゃねぇだろうな?」
<<あぁ、その事は気にしなくても良いよ。キミが話を最後まで聞かず質問するから脱線しちゃった。ちゃんと大人しく話を聞いておくれよ。さもないと……>>
そう言ってロキがまた人差し指をスッと立てた。
ゲッ! また俺を潰そうってのか!
「クソッ! 分かったっての! それ止めろ!」
<<ヒヒヒヒ。じゃあ、話を戻そうか。今の世界になる少し前かな? 今度の世界には僕達も住人の一人として暮らしてみようって話になって『住人転生計画』を立ち上げたんだ。けど、僕達が人間として下界に降りるにはそれに耐えられる容れ物が必要になる。元々それが神造体『カドモン』を造った理由って訳さ>>
「もしかして、それが『神の落とし子』って奴の事なのか?」
<<あぁ、そうだよ。あれは神造体『カドモン』の初号器『宿り木』って言うんだ>>
ミスティルティン……?
なんかRPGで出てくる武器みてぇな名前だな。
確か北欧神話に出てくる神殺しの武器だっけか?
「けっ、大層な名前だぜ。なんだってそんな名前を付けたんだ?」
<<ヒヒヒヒ。良い名だろ? 神が宿るから『宿り木』ってね。僕が名付けたんだよ>>
お前が名付けたのかよ!
この世界の名前『ラグナロック』といい、こいつ北欧神話好き過ぎじゃね?
「けどよ、暮らしてみようって言うには、ちっとばかし大袈裟な事になってるじゃねぇか。しかもそいつは教会の地下で眠ってばっかりって聞いたぜ?」
<<うん、あれは失敗作。いや、ある意味完成品でもあると言えるけどね。ヒヒヒヒ。当初それぞれ自分達の『アダマ』で自分の依り代とする『カドモン』を造った。けどそれじゃ全然強度が足らなかったんだ。そこで僕達は全ての神々の『アダマ』を混ぜ合わせて造る事を考えたんだよ。これなら神が憑依しても大丈夫だろうってね。それが『宿り木』なのさ>>
「失敗したのに完成品ってどう言う事だ? 完成したのは俺だけなんだろ?」
<<うん、確かに『宿り木』は神の憑依に耐えた。けどね、神が『宿り木』に耐えられなかったんだよ>>
「神が耐えられない……? どう言う事だ?」
<<栄えある最初の憑依者は僕の友達だったバルドル君って言うんだけど、憑依した瞬間に存在を『宿り木』吸われちゃって消えちゃった。多分アダマの純度が高過ぎたんだね。他の神の力に飲まれて溶けちゃったんだよ。いや~これは想定外だったね。ヒヒヒヒ>>
「き、消えたってお前。友達が居なくなったってのにそんな他人事みてぇに……。それに神が消えたって事はその世界の生物達も……」
確かバルドルって神話だとミスティルティンで殺された神の名前なんじゃねぇのか?
偶然か? それとも……?
俺の思考を読んだのかロキは邪悪な笑みを浮かべた。
こ、こいつ、もしかして……?
<<ヒヒヒヒ。けど、『宿り木』はちゃんと起動した。さっきも言っただろう? 僕達は何が起こるかは分からないけど、何かが起こるのは分かるって。 あの時の僕達の心の中にはワクワクで満ち溢れていたんだよ。これは悲劇じゃなくて活劇への幕開けだってね。消えちゃったバルドル君も同じ気持ちだったと思うよ>>
ロキだけじゃなく神達全員が喜んでいただと?
しかも消えてしまった神までも?
俺はロキの言葉に戦慄する。
「やっぱり神ってのは狂ってやがるぜ……」
<<ヒヒヒヒヒ。それは誉め言葉と取っておくよ。まぁ、さすがに僕等まで消えたくは無いからね、一旦住人転生計画は凍結となったんだ。とは言え、『カドモン』の研究は続けたよ。その過程で『主人公計画』が持ち上がったんだ>>
ロキは俺を下卑た笑いを浮かべたままじっと見つめて来た。
『主人公計画』だと……?
「それが……俺って訳か……?」
<<ヒヒヒヒ。そうさ。この世界を一つの物語として一人の主人公をこの世界に送り込む。それを僕達が神界から観戦して楽しむ。小説とゲームと映画のハイブリットって訳。これに関しては最初にガイアもちゃんと説明したろ? そしてキミも喜んで同意したじゃないか。合意の上のWin-Winな契約さ>>
ぐっ……確かにそうだ。
あの時の俺は剣と魔法の世界ってのに興奮して逆上せ上がっていた。
おそらく神達と同じ気持ちだったのかもしれねぇな。
上から目線でこの世界を見下してたんだ。
この世界で生きる住人達の喜びや怒り、そして悲しみを知らなかったからよ。
<<その計画立案と共に僕は主人公のライバルである魔族を造る事にした。代わって主人公の『カドモン』に関しては『宿り木』の反省を踏まえ『アダマ』を提供する神を絞る事にしたんだよ。幾度かの試作の後、最終的に『アダマ』の提供者として相性の良い四十四の神々を厳選した。ガイアをメインコア、ウラノスをサブコア。そして他の四十二神を外殻としてキミの神造体『リーヴ』は完成した。ね? これでキミと魔族が兄弟でないって事を分かってくれたかな?>>
「ガイアをメインだと? それにウラノスってのもガイアから聞いた事が有る名だ。メインとサブって事はギリシャ神コンビで仲が良いのかね? まぁ、裏話はどうであれ、そこら辺はガイアの上っ面話と矛盾はしねぇな」
ガイアを筆頭に四十四人の神々が俺の身体を造った……か。
チッ、なんで俺はガイアの名前を出されて安心してやがるんだ?
<<そうだね。二人は結構仲が良かったよ。なんたって……いや何でもない。ヒヒヒヒ>>
「なんだよ。気になるじゃねぇか」
ロキは俺の問い掛けに目を逸らして口笛を吹きやがった。
くそっ! 馬鹿にしやがって。
ふん、どうせくだらない事だろうぜ。
それに……なんかガイアが他の奴と仲が良いって話を聞くと少しムカつくから聞かねぇ方が精神衛生上良さそうだ。
いや、心にそんな自分風に思う俺が居るのが最高にムカつくけどな。
<<ヒヒヒヒ。じゃあ話を戻すね。実は皆が計画準備に熱中し過ぎて世界の管理にリソースを割かなくなっちゃったもんだから、この世界が崩壊し掛けちゃったんだよ>>
ロキはそう言ってテヘペロをかましてきた。
「おい! なに可愛く言ってやがる。とんでもねぇ事じゃねぇかよ!」
<<ヒヒヒヒ。うん、だから仕方無く僕達はキミの先行試作品の内の一つに神の役割を与える為『宿り木』の余り材料を混ぜ合わせ疑似神体『リーヴスラシル』を造ったんだ。そこに『疑似神格クーデリア』を入れこの世界唯一の女神として管理させたんだよ。これで僕達は思う存分研究に没頭出来るようになったんだ。ヒヒヒヒ>>
「ちっ、そう言う事か。ガイアの奴は宗教が戦争を産むから『クーデリア』を造ったって言ってやがったが、結局お前らの享楽の為じゃねぇか」
<<ヒヒヒヒ。それぐらい大目に見てよ。僕達は僕達自体の世界はちゃんと管理しているんだからさ。で、これがさっきの話の回答だよ。そもそも魂の総量的にこの世界にあまり魂を招くと崩壊しちゃいかねない。だから『クーデリア』も魔族達も、この世界の住人となるべき魂を改造したんだ>>
「ちょっと待て、女神と魔族の魂がこの世界の住人が元になっているだと?」
<<うん、そうだよ。この世界の異物はキミだけだ。それ以上の魂を招くとこの世界は崩壊しちゃうからね。それに魂と言っても意思は与えていない。彼らまで勝手に動かれると折角の準備した物語が台無しだ。魔物と一緒でプログラム通りにしか動かないようにしている……筈だったんだけどね~>>
そう言ってロキは腕を組んで首を傾げた。
何を言ってるんだこいつは?
こいつの言っている事が理解出来ねぇ。
女神も魔族も感情を持っていないだと?
女媧にしても感情豊かだったし、何よりクァチル・ウタウスに関しては明確な意思を持っていた。
敵と言う立場だったが、会話まで出来たんだ。
女神だってそうだ。
街で俺の尻拭いをしてくれた時、最後に見せたあの目は確かに……。
いや、こいつが最後に言った言葉、とその悩む仕草。
「筈だったってのはどう言う事だ?」
ロキは相変わらず悩んだ仕草をしたまま、片目だけ開けてこちらをちらりと見た。
そしてニヤッと笑う。
<<それはねぇ、『主人公計画』に狂いが生じちゃったんだ>>
狂いが生じた……?
それは一体……?
<<本来意思を持たない筈の疑似神格であるクーデリアが突然意思を持ってしまった。そして何故かそれが魔族達にまで波及していっちゃってね。おそらくクーデリアに世界の管理を任せていた所為で、『宿り木』の残りカスに存在していた僕の『アダマ』を通じて感情が魔族の魂に干渉しちゃったんだろう。ヒヒヒヒ>>
「な、なんで突然女神は意思を持っちまったんだ? 原因は一体なんだ?」
ロキが俺の質問にニヤリと笑った。
そして勿体付けるように目を閉じて人差し指を上げる。
一瞬また潰されるのかと思って身構えたが、どうやらそう言う訳じゃなさそうだ。
その立てられた指はゆっくりと俺を差した。
<<ヒヒヒヒ。それはね、キミと出会ってしまったからさ>>
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さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
食うために軍人になりました。
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ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
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小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
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