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第七章 帰郷
第129話 ロキ
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「ロキ……だと……?」
脳内の響く声が告げた名は『ロキ』。
ガイアが言っていたな、確か魔物達を作った神の一柱って奴だったか?
《あぁ、そう言えば彼女はキミに僕の事を説明していたよね。そう僕がそのロキさ。僕が魔物達の創造主。そして君が今住んでる世界の名付け親さ》
相変わらず癇に障る声を俺の脳内響かせやがる。
それよりも今こいつはガイアを彼女と言いやがった。
姿は確かにボーイッシュな女の子だったが、それはただ自分の趣味に合わせてその姿をしているだけって話の筈だ。
他にもノリで男の娘な神も居るって話だしよ。
存在的に性別なんて無いんじゃねぇのか
人間がその姿を見て女神だ男神だ言うのは別だが、神同士では同等の筈だろう?
《ヒヒヒヒ。そこが気になっちゃうか。けど、それは別に不思議な事じゃないんだよ。確かに神は本来事象であり名前や性別どころか意志もないただの概念さ。けど長い時間そう在り続けるとその概念って言う物が固定するんだ。そしてガイアは自分を女神として認識し固定している。だから過去現在未来全ての時間軸において女性だから彼女で良いんだ。まっ気が変われば、それも上書きされて彼になっちゃうけどね》
「ちっ、頭の中を読まれるのはやっぱり慣れねぇな。しかし、なんだそれ? 思い込みって奴か? と言うか、なんなんだよ神って奴はよ。過去現在未来全ての時間軸とか上書きとか、訳分かんねぇぞ?」
《キミとやっと話す事が出来たんだ。なんでも説明してあげようかな。えぇとね、さっき僕は時間と言ったけど、それはキミの理解に合わせて言葉を選んだだけだよ。神には時間なんて無いんだ》
「時間が無い? え~と、それは寿命が無いって事か?」
《違う違う。時間と言う概念自体存在しないのさ。ヒヒヒヒ。そうだな~キミが理解出来る言葉で言うなら……。さっきちらっと言ったように過去現在未来において全てが神なんだよ》
……全く分からねぇ。
過去現在未来全てが神?
《あぁ、まだ分からなかったかい~? ヒヒヒヒ》
「だから頭の中を読むなっての! ふん、悪かったな! お前は説明が下手なんじゃねぇの?」
《ヒヒヒヒ。本当に君は酷い事を言うね。じゃあもう少し簡単に説明しようか。キミが分かりやすいように時間の概念も入れてね。神には時間が存在しない。それは当たり前だよ。なんたって時間とは神の体内で存在する概念だからね》
「神の中の……? あぁそう言えばガイアが俺の元居た世界を司る神とか何とか言っていたか。俺があの時ガイアだけと喋れたのは、俺がガイアの中の存在だったからって話だな」
《概ね正しいね。そう、時間とは神の中にしか存在しない尺度なんだよ。だから神は『α』と『Ω』を知っている。例えば遥か未来の出来事を懐かしく思い出す事が出来るし、遠い過去の出来事に希望を馳せる事も出来る。神にとっては全ての時間において現在なんだよ。つまりね、……》
「ちょい待ち、ちょい待ち。もういい分かった。それ以上聞いても俺には理解出来ねぇし知りたくもねぇ」
そもそも神とそんな話をしてぇ訳じゃねぇんだ。
折角念願だった『神とお近付きになれるチャンス』ってのに巡り会ったってんだからよ。
そうさ、ずっとこの時が来るのを待ってたんだ。
ガイアの奴じゃねぇのが不満だがな。
まぁ、魔物を作ったのがこいつだってんで、俺の恨みを晴らす奴としたら申し分の無い相手だぜ。
《……神とはもともと世界に満ち満ちる力の塊。遥か永劫の時の中、生まれた命達がやがて文明を築き、数多に紡ぎ出でた想いや感情、そして物語がその世界に溢れていく内に何もない混沌にやがて意志が発芽し、それが神としての自我に目覚めた……》
おいおい、突然なんなんだ?
途中から急に壊れた機械みてーに棒読みでダラダラと喋り出しやがった。
先ほどまでのいやらしい感じもしねぇ。
それどころか何の感情も無ぇみてぇだ。
「おい、どうしたんだよ? 訳分かんねぇ事を喋んじゃねぇっての!」
《本当に長い長い時だった。暗く寒い……独りぼっち……意思が芽生えても……とても長く……》
俺の呼びかけにも一切答えず、ただぼそぼそと独り言のように呟いている。
どうしたんだこいつ? 気味悪ぃな。
「おいっ! 無視すんなって!」
《ずっと……ずっと……。そうずっと……、意思など芽生えたばかりに……ずっと……一人……一人。我は……わ……我……我は全て……すべて#%x!%$#%われ#$?!&%》
なんだこいつやべぇぞ?
ぼそぼそ言ってる癖に音だけはどんどん大きくなってきやがる。
言葉も訳が分かんねぇ事になって来たぞ?
《%u6211 %u306F %u4EBA %u3005 %u306E %u6B32 %u671B %u304B %u3089 %u3044 %u305A %u308B %u3082 %u306E 110001000010001 11000001101111 11000001010011 11000001101110 100111000010110 111010101001100 11000001101110 101000101101000 11000001100110 11000001100111 11000001000010 11000010001011》
「グワァァァァァ!! あ、頭が、わ、割れる。や、やめ……」
ロキの言葉はどんどん大きく、そして意味不明な言葉に変異していく。
俺は脳内に流れ込む膨大な情報量で頭が割れそうになりその場に崩れ落ちる。
やべぇ……こいつ狂ってやがる。
このままじゃ意識が……。
《110001000010001 11000010010010 101110100000111 11000010000001 11000010001000……#&%?23は*$-あっ……、あぁ、ごめんごめん。ちょっと興奮しちゃったよ。ヒヒヒヒ》
「くっ、やっと元に戻りやがったか。何だってんだよ」
《いや、君とのお話につい夢中になってしまってね。あまりの嬉しさに元の概念的神成る物に戻りかけちゃったよ。失敗失敗。ヒヒヒヒ》
まだ頭がガンガンしやがる。
しかし、元の概念的神だと?
訳分かんねぇ。
「もう話はおしまいだ。そんな事はどうでもいいから姿を見せやがれ!」
《ん? 姿? 何を言ってるんだい? ……まぁいいか。じゃあ君には初披露になるけど、これが僕の姿だよ》
なんだか気になる事を言いやがったが、どうやら姿を見せる気になったようだ。
俺が何をしたいかなんてもう分っているだろうが、それも覚悟の上って事か?
なめやがって。
「お? なんだ……? 星々が集まってきて……?」
俺の目の前に宇宙空間に漂っている星が凄まじいスピードで集まってくる。
近付くにつれてそれが段々と大きくなり、ただの光の点ではなく恒星の一つ一つだと言う事が分かった。
このスピードで近付いてくるなんざ、こりゃ光速なんて超えてるんじゃねぇのか?
太陽みてぇな燃え盛る巨大な塊がこんな小さい場所に集まろうとしてるんだ。
当たり前だが星々はこの場に集結する為にその巨大な体を互いに衝突し始めた。
信じられねぇ光景だ。
人類史上どころか未来においてもこんな光景を見る事が出来る奴なんていないだろう。
目の前で繰り広げられる恒星達の集団自殺とでも表現したらいいのか?
互いにぶつかり溶け合い一つとなった恒星は凄まじい光を放つ。
俺はあまりの眩しさに俺は目を閉じた。
なんとか手で目を隠しながらうっすらと周囲を確認したが、既にそこは幾千幾億もの恒星が混ざり合った光の世界。
しかし熱は感じねぇ。
当たり前だよな。
恒星同士が衝突しているって言うのに衝撃波も何も感じねぇんだから。
目視範囲でそんな場所に居たら一瞬で蒸発してるっての。
この空間は外部とは完全に遮断されてるって事だ。
やがて光の世界の中に一つの闇が生まれた。
そして、光は幾本もの螺旋を描き闇の中に吸い込まれていく。
それと共に闇は一つの形を成し始めた。
人間? それも結構小振りの人型をしている。
まるで光の中の影法師の様なソレは輪郭だけじゃなく、細部に至るまで人の姿に変わりだした。
恒星達が死の際に産んだ光を完全に吸収した闇は既に闇じゃなかった。
それは長い黒髪、顔自体は俯き加減の所為か、その長い前髪で隠されており伺い知れない。
ただ少しばかり伺える口元の造形はとても整っていた。
そしてその肌の色は闇が生んだとは思えない程白い。
色白とかじゃなく完全に純白だ。
それに服装はまるで喪服の様な真っ黒の裾が短いドレス姿。
所々に同じく真っ黒なフリルで豪華に飾られていた。
いわゆるゴシックロリータドレスって奴か。
白い肌とのコントラストがとても綺麗に見えた。
「え? それが、お前の姿だってのか……?」
ちょっと待て、なんか想定していた姿と違うぞ?
これは何かの間違いじゃないのか?
《やぁ、お待たせしたね。そうさこれが僕の姿だよ。ヒヒヒヒ》
突然ゴスロリが頭を上げたかと思うと、その言葉が織りなす嫌悪感を纏いつつ笑い出す。
頭を上げた所為でその顔の全貌が露わとなった。
そこに有った顔は口元で伺い知れた通りとても整っており、まるで良く出来たビスクドールの様な印象を受ける。
ただ違和感を抱くのがその表情だ。
死んだ魚の様な濁った眼、そしてとても軽薄そうな雰囲気を醸し出している。
いや、そんな事はどうでもいい、今重要なのはそこじゃない。
そ、そんな……嘘だろ?
「ロキ……。お前……女だったのか?」
声の感じから気持ち悪い容姿の陰キャっぽい男を想像していた。
けど何処からどう見ても嬢ちゃんくらいの年の女の子にしか見えねぇ。
濁った眼と軽薄そうな表情、それに立ち姿は少し猫背で陰キャっぽく見えなくはないが、それにしてもこの姿は……。
《ん~? 僕が女かだって? ヒヒヒヒ》
「え? どう言う事だ?」
ロキは相変わらずいやらしい声でそう言って笑い出す。
その言葉と態度の意味が分からず思わず問い返した。
しかしロキはその問いには答えず、何故かおもむろにその短いスカートの裾を両手で掴みだした。
「お、おい、何しやがるんだ?」
俺は思わずその行為について尋ねる。
だってよ、ロキの奴がその掴んだスカートを持ち上げだすんだからよ。
このままじゃ見えちまうだろ。
なんだ、その……パンツって奴がな。
《ヒヒヒヒ。よく見てごらん~》
「ちょっ! 止めろってお前痴女かよ! 見せようとすんじゃねぇよ!」
俺が止めようとするが、ロキはその手を持ち上げるのを止めない。
そしてとうとう、スカートの下にある……いや、あれだ、パンツって奴が俺にその全貌を晒した。
俺はロリコンじゃねぇから何も感じねぇぞ!
と言いながら俺の目は蝶が花に引き寄せられるかのようにパンツから目が離せなかった。
二四年振りに見た俺の世界で存在していた服装だってのが理由だと思いたい。
ぐっ、色はドレスと同じ黒かよ! エッチだな!
それに膝上までの黒い長靴下と間に有る絶対領域の純白の肌が冴えやがる。
「な、なんのつもりだ! 俺を誘惑しようってのか! そんな手には乗らねぇぞ」
《ヒヒヒヒ。おや? まだ気付かないのかい? ほらほら、よく見てごらんよ~》
「な、なんの事だ。パンツがどうしたって……んだ? え? え? ちょっと待て?」
最初黒くて気付かなかったんだが、なんだかそのパンツ……いや、本当になんだ。
いやいや、まさか。
俺は目に映ったソレを必死で否定する。
しかし、その丁度アレが位置する場所に存在するモッコリとした膨らみは、男である俺がよく見慣れたモノ……?
「え……まさか。お前……?」
それが意味するモノを想像したくねぇ……。
それより今見たモノを俺の記憶から消してくれ……。
《僕は自分が女神だなんて一言も言っていないよ。ヒヒヒヒ》
「お前が男の娘の神かよっ!!」
俺の目の前で世界の悪を凝縮させた様な笑顔で俺を嘲笑っているロキに向かって大声で吠えた。
脳内の響く声が告げた名は『ロキ』。
ガイアが言っていたな、確か魔物達を作った神の一柱って奴だったか?
《あぁ、そう言えば彼女はキミに僕の事を説明していたよね。そう僕がそのロキさ。僕が魔物達の創造主。そして君が今住んでる世界の名付け親さ》
相変わらず癇に障る声を俺の脳内響かせやがる。
それよりも今こいつはガイアを彼女と言いやがった。
姿は確かにボーイッシュな女の子だったが、それはただ自分の趣味に合わせてその姿をしているだけって話の筈だ。
他にもノリで男の娘な神も居るって話だしよ。
存在的に性別なんて無いんじゃねぇのか
人間がその姿を見て女神だ男神だ言うのは別だが、神同士では同等の筈だろう?
《ヒヒヒヒ。そこが気になっちゃうか。けど、それは別に不思議な事じゃないんだよ。確かに神は本来事象であり名前や性別どころか意志もないただの概念さ。けど長い時間そう在り続けるとその概念って言う物が固定するんだ。そしてガイアは自分を女神として認識し固定している。だから過去現在未来全ての時間軸において女性だから彼女で良いんだ。まっ気が変われば、それも上書きされて彼になっちゃうけどね》
「ちっ、頭の中を読まれるのはやっぱり慣れねぇな。しかし、なんだそれ? 思い込みって奴か? と言うか、なんなんだよ神って奴はよ。過去現在未来全ての時間軸とか上書きとか、訳分かんねぇぞ?」
《キミとやっと話す事が出来たんだ。なんでも説明してあげようかな。えぇとね、さっき僕は時間と言ったけど、それはキミの理解に合わせて言葉を選んだだけだよ。神には時間なんて無いんだ》
「時間が無い? え~と、それは寿命が無いって事か?」
《違う違う。時間と言う概念自体存在しないのさ。ヒヒヒヒ。そうだな~キミが理解出来る言葉で言うなら……。さっきちらっと言ったように過去現在未来において全てが神なんだよ》
……全く分からねぇ。
過去現在未来全てが神?
《あぁ、まだ分からなかったかい~? ヒヒヒヒ》
「だから頭の中を読むなっての! ふん、悪かったな! お前は説明が下手なんじゃねぇの?」
《ヒヒヒヒ。本当に君は酷い事を言うね。じゃあもう少し簡単に説明しようか。キミが分かりやすいように時間の概念も入れてね。神には時間が存在しない。それは当たり前だよ。なんたって時間とは神の体内で存在する概念だからね》
「神の中の……? あぁそう言えばガイアが俺の元居た世界を司る神とか何とか言っていたか。俺があの時ガイアだけと喋れたのは、俺がガイアの中の存在だったからって話だな」
《概ね正しいね。そう、時間とは神の中にしか存在しない尺度なんだよ。だから神は『α』と『Ω』を知っている。例えば遥か未来の出来事を懐かしく思い出す事が出来るし、遠い過去の出来事に希望を馳せる事も出来る。神にとっては全ての時間において現在なんだよ。つまりね、……》
「ちょい待ち、ちょい待ち。もういい分かった。それ以上聞いても俺には理解出来ねぇし知りたくもねぇ」
そもそも神とそんな話をしてぇ訳じゃねぇんだ。
折角念願だった『神とお近付きになれるチャンス』ってのに巡り会ったってんだからよ。
そうさ、ずっとこの時が来るのを待ってたんだ。
ガイアの奴じゃねぇのが不満だがな。
まぁ、魔物を作ったのがこいつだってんで、俺の恨みを晴らす奴としたら申し分の無い相手だぜ。
《……神とはもともと世界に満ち満ちる力の塊。遥か永劫の時の中、生まれた命達がやがて文明を築き、数多に紡ぎ出でた想いや感情、そして物語がその世界に溢れていく内に何もない混沌にやがて意志が発芽し、それが神としての自我に目覚めた……》
おいおい、突然なんなんだ?
途中から急に壊れた機械みてーに棒読みでダラダラと喋り出しやがった。
先ほどまでのいやらしい感じもしねぇ。
それどころか何の感情も無ぇみてぇだ。
「おい、どうしたんだよ? 訳分かんねぇ事を喋んじゃねぇっての!」
《本当に長い長い時だった。暗く寒い……独りぼっち……意思が芽生えても……とても長く……》
俺の呼びかけにも一切答えず、ただぼそぼそと独り言のように呟いている。
どうしたんだこいつ? 気味悪ぃな。
「おいっ! 無視すんなって!」
《ずっと……ずっと……。そうずっと……、意思など芽生えたばかりに……ずっと……一人……一人。我は……わ……我……我は全て……すべて#%x!%$#%われ#$?!&%》
なんだこいつやべぇぞ?
ぼそぼそ言ってる癖に音だけはどんどん大きくなってきやがる。
言葉も訳が分かんねぇ事になって来たぞ?
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「グワァァァァァ!! あ、頭が、わ、割れる。や、やめ……」
ロキの言葉はどんどん大きく、そして意味不明な言葉に変異していく。
俺は脳内に流れ込む膨大な情報量で頭が割れそうになりその場に崩れ落ちる。
やべぇ……こいつ狂ってやがる。
このままじゃ意識が……。
《110001000010001 11000010010010 101110100000111 11000010000001 11000010001000……#&%?23は*$-あっ……、あぁ、ごめんごめん。ちょっと興奮しちゃったよ。ヒヒヒヒ》
「くっ、やっと元に戻りやがったか。何だってんだよ」
《いや、君とのお話につい夢中になってしまってね。あまりの嬉しさに元の概念的神成る物に戻りかけちゃったよ。失敗失敗。ヒヒヒヒ》
まだ頭がガンガンしやがる。
しかし、元の概念的神だと?
訳分かんねぇ。
「もう話はおしまいだ。そんな事はどうでもいいから姿を見せやがれ!」
《ん? 姿? 何を言ってるんだい? ……まぁいいか。じゃあ君には初披露になるけど、これが僕の姿だよ》
なんだか気になる事を言いやがったが、どうやら姿を見せる気になったようだ。
俺が何をしたいかなんてもう分っているだろうが、それも覚悟の上って事か?
なめやがって。
「お? なんだ……? 星々が集まってきて……?」
俺の目の前に宇宙空間に漂っている星が凄まじいスピードで集まってくる。
近付くにつれてそれが段々と大きくなり、ただの光の点ではなく恒星の一つ一つだと言う事が分かった。
このスピードで近付いてくるなんざ、こりゃ光速なんて超えてるんじゃねぇのか?
太陽みてぇな燃え盛る巨大な塊がこんな小さい場所に集まろうとしてるんだ。
当たり前だが星々はこの場に集結する為にその巨大な体を互いに衝突し始めた。
信じられねぇ光景だ。
人類史上どころか未来においてもこんな光景を見る事が出来る奴なんていないだろう。
目の前で繰り広げられる恒星達の集団自殺とでも表現したらいいのか?
互いにぶつかり溶け合い一つとなった恒星は凄まじい光を放つ。
俺はあまりの眩しさに俺は目を閉じた。
なんとか手で目を隠しながらうっすらと周囲を確認したが、既にそこは幾千幾億もの恒星が混ざり合った光の世界。
しかし熱は感じねぇ。
当たり前だよな。
恒星同士が衝突しているって言うのに衝撃波も何も感じねぇんだから。
目視範囲でそんな場所に居たら一瞬で蒸発してるっての。
この空間は外部とは完全に遮断されてるって事だ。
やがて光の世界の中に一つの闇が生まれた。
そして、光は幾本もの螺旋を描き闇の中に吸い込まれていく。
それと共に闇は一つの形を成し始めた。
人間? それも結構小振りの人型をしている。
まるで光の中の影法師の様なソレは輪郭だけじゃなく、細部に至るまで人の姿に変わりだした。
恒星達が死の際に産んだ光を完全に吸収した闇は既に闇じゃなかった。
それは長い黒髪、顔自体は俯き加減の所為か、その長い前髪で隠されており伺い知れない。
ただ少しばかり伺える口元の造形はとても整っていた。
そしてその肌の色は闇が生んだとは思えない程白い。
色白とかじゃなく完全に純白だ。
それに服装はまるで喪服の様な真っ黒の裾が短いドレス姿。
所々に同じく真っ黒なフリルで豪華に飾られていた。
いわゆるゴシックロリータドレスって奴か。
白い肌とのコントラストがとても綺麗に見えた。
「え? それが、お前の姿だってのか……?」
ちょっと待て、なんか想定していた姿と違うぞ?
これは何かの間違いじゃないのか?
《やぁ、お待たせしたね。そうさこれが僕の姿だよ。ヒヒヒヒ》
突然ゴスロリが頭を上げたかと思うと、その言葉が織りなす嫌悪感を纏いつつ笑い出す。
頭を上げた所為でその顔の全貌が露わとなった。
そこに有った顔は口元で伺い知れた通りとても整っており、まるで良く出来たビスクドールの様な印象を受ける。
ただ違和感を抱くのがその表情だ。
死んだ魚の様な濁った眼、そしてとても軽薄そうな雰囲気を醸し出している。
いや、そんな事はどうでもいい、今重要なのはそこじゃない。
そ、そんな……嘘だろ?
「ロキ……。お前……女だったのか?」
声の感じから気持ち悪い容姿の陰キャっぽい男を想像していた。
けど何処からどう見ても嬢ちゃんくらいの年の女の子にしか見えねぇ。
濁った眼と軽薄そうな表情、それに立ち姿は少し猫背で陰キャっぽく見えなくはないが、それにしてもこの姿は……。
《ん~? 僕が女かだって? ヒヒヒヒ》
「え? どう言う事だ?」
ロキは相変わらずいやらしい声でそう言って笑い出す。
その言葉と態度の意味が分からず思わず問い返した。
しかしロキはその問いには答えず、何故かおもむろにその短いスカートの裾を両手で掴みだした。
「お、おい、何しやがるんだ?」
俺は思わずその行為について尋ねる。
だってよ、ロキの奴がその掴んだスカートを持ち上げだすんだからよ。
このままじゃ見えちまうだろ。
なんだ、その……パンツって奴がな。
《ヒヒヒヒ。よく見てごらん~》
「ちょっ! 止めろってお前痴女かよ! 見せようとすんじゃねぇよ!」
俺が止めようとするが、ロキはその手を持ち上げるのを止めない。
そしてとうとう、スカートの下にある……いや、あれだ、パンツって奴が俺にその全貌を晒した。
俺はロリコンじゃねぇから何も感じねぇぞ!
と言いながら俺の目は蝶が花に引き寄せられるかのようにパンツから目が離せなかった。
二四年振りに見た俺の世界で存在していた服装だってのが理由だと思いたい。
ぐっ、色はドレスと同じ黒かよ! エッチだな!
それに膝上までの黒い長靴下と間に有る絶対領域の純白の肌が冴えやがる。
「な、なんのつもりだ! 俺を誘惑しようってのか! そんな手には乗らねぇぞ」
《ヒヒヒヒ。おや? まだ気付かないのかい? ほらほら、よく見てごらんよ~》
「な、なんの事だ。パンツがどうしたって……んだ? え? え? ちょっと待て?」
最初黒くて気付かなかったんだが、なんだかそのパンツ……いや、本当になんだ。
いやいや、まさか。
俺は目に映ったソレを必死で否定する。
しかし、その丁度アレが位置する場所に存在するモッコリとした膨らみは、男である俺がよく見慣れたモノ……?
「え……まさか。お前……?」
それが意味するモノを想像したくねぇ……。
それより今見たモノを俺の記憶から消してくれ……。
《僕は自分が女神だなんて一言も言っていないよ。ヒヒヒヒ》
「お前が男の娘の神かよっ!!」
俺の目の前で世界の悪を凝縮させた様な笑顔で俺を嘲笑っているロキに向かって大声で吠えた。
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神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
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「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
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家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
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――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
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