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第四章 それでは皆様
第68話 変貌
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「最近平和ね~」
いつもの様にフレデリカによる午後の授業を受けている最中、ローズはポツリとそんな言葉を零した。
イケメン達との試合を行ったあの日からすでに二週間近くの時間が過ぎている。
その間、朝練に始まりフレデリカの午前の授業、イケメン達との楽しい時間そしてフレデリカとの午後の授業と言ったルーチンワークの如き平凡な毎日が続いていた。
一つ違うのは……。
「ローズちゃん。いいじゃない。平和って事はとっても幸せな事なのよ?」
そう、現在ローズの部屋には部屋の主であるローズ、そして家庭教師役のフレデリカ。
更にもう一人、驚いた事に王国に名高いベルナルド派閥の二大悪女の一人であったシャルロッテの三人の姿があった。
シャルロッテの来訪は何も今日だけでなく、実はのちの世に王国史に刻まれるであろう舞踏会改め運命のサーシャンズコーデ新事業発表会の次の日から幾度となく屋敷に訪れている。
それだけでなく、『ローズと仲直りした事』、それ以上に『ローズと仲が良い事』を周囲にアピールしたいシャルロッテによって、幾度かローズを街に連れ出して一緒にショッピングやレストランでの食事に出かけたりもしていた。
その信じられない光景を目撃した住民達は、あまりの衝撃に天変地異の前触れかと腰を抜かす者も居たらしい。
翌日には二人の仲直りが大事件だとして号外が配られたほどだ。
しかし、その光景が日常となり始めた今では、そんな仲の良い二人に驚く者はもう居ない。
それどころか、王国の明るい未来の到来を予兆する出来事として捉えている者も現れだした。
そんなシャルロッテがローズの屋敷に居る事に不思議はないものの、なぜフレデリカの授業に同席しているかと言うと、カールからの願いによるものであった。
あの運命の日、初めてフレデリカの類稀なる才の程を知ったカールは、フレデリカがローズの家庭教師も行っていると言う事を聞き付けて、フレデリカに対して是非娘にも授業を受けさせてやって欲しいとの要望した為である。
聞き付けた相手は、『午後から授業が有るので~』と帰るように促されるの事に悔し思いをしていた娘のシャルロッテからであり、ローズが変わる切っ掛けになったと思われるフレデリカの授業を娘にも受けさせてやりたいと思うカールの気持ちが重なり、そんなWin-Winの想いからの事であった。
折角のローズと二人きりの時間を邪魔されたくないフレデリカは、最初その申し出を断ろうと思ったのだが、人事院に勤めているカールの人脈、それに今後の事を考えると同性でしかも同等の身分の味方がローズには必要だと言う現実的な予測から、唇を噛み締めたくなる気持ちは有るものの、その申し出を渋々と了承したのであった。
勿論『午後の授業のみ』と言う、少しでも二人きりの時間は残すと言うささやかな抵抗は行っているのだが。
「それはそうなのだけどね~」
ローズはシャルロッテの言葉に同意しながらも、少しだけ不満気にそう答えた。
別にローズは波乱万丈の人生を望んでいる訳ではない。
元の世界の様に、日々続く創始者一族達の圧力や問題児達への対応、それにモンペア共との攻防など無縁のこの世界。
イケメン達との甘い語らい、良好な関係を築きつつある使用人達との心安らぐ交流、どことなく困った友人を思い出すこの世界で初めて出来た親友とのお出かけ。
そんな楽しい時間がいつまでも続いてくれる事を、毎日寝る前に神様に祈っているほどだ。
だがしかし、ローズはその願いが有り得ないと言う事を自覚している。
ここは乙女ゲームの世界で、自分は主人公のライバルキャラである悪役令嬢でしかない。
本来はもっとギスギスとした暗鬱なる日々を送っていて然るべき人物である。
こんな楽しいひと時を過ごしていて良い訳がなく、ゲームシナリオ的には主人公を毎日いびり倒していなければならないキャラなのだ。
そんなキャラに転生してしまった自分は、何とか幸せになろうとこの一か月半の間努力してきた。
その甲斐有ってかゲーム開始以前は言わずもがな、ゲーム開始以降も三桁回数クリアして全てのイベントは見てきたと言う自負が有ったにもかかわらず、日々発生するイベントは見た事が無い出来事ばかり。
そのいずれもが、なぜか悪役令嬢であり、ただのライバルキャラである自分に対して有利となるものばかりであったのだ。
さすがの前向き思考であるローズでも若干不安になってきた。
いつかしっぺ返しが来るのではないか……?
何しろ……。
コンコン―――。
「誰ですか? 今は授業中ですよ」
突然扉をノックする音が部屋に響き、家庭教師役のフレデリカがその扉に向かって尋ねる。
すると扉の向こうからローズの良く知る者の声が聞こえてきた。
『そろそろ休憩のお時間です。お茶をお持ちいたしました』
その声の主はメイドのエレナ。
彼女はこの乙女ゲーム『メイデン・ラバー』の主人公である。
本来ならローズにいびり倒されると言う不幸な日々を送る可哀そうな娘だ。
しかしながら今は違う。
「あぁ、もうそんな時間ですか。分かりました。入りなさい」
ガチャ、キィィーー、バタン。
「失礼します、お嬢様。それにシャルロッテ様」
そう挨拶をしながら部屋に入ってきたエレナは、満面な笑みを浮かべてローズを熱く見詰めていた。
そのエレナの眼差しを見たフレデリカとシャルロッテは微かに嫉妬の炎を浮かべたジト目でエレナを見ている。
エレナはそんな二人の目に気付いてはいるものの、ローズに笑みを向ける事の方が重要なのか気にする様子もなかった。
三人の細やかな自身を巡る熱い攻防に『なんか微妙な空気ね』程度にしか感じていないローズは、取りあえずこのゲームの主人公であるはずのエレナに少々顔を引きつらせながらも笑顔で返す。
このように激しい火花を散らした直接対決二戦目以降、何故かその『主人公であるはずのエレナ』がとても懐いている。
今回の様に気を利かせてお茶とお茶請けを運んできたりするのに留まらず、その他もフレデリカが別の事で手を取られている場合の身の回りの世話や、朝練明けの湯浴みや着替えの準備なども率先して行っていた。
その際の態度も仕事だからと言う事務的なものでなく、今エレナが浮かべている笑顔と同じ表情でとても楽しそうに行っているのだ。
話し掛けてくる時も顔に笑顔を浮かべたまま表情は一切濁らない。
その懐き様は、少しばかり危険な愛情を感じざるを得ないシャルロッテに近い匂いを醸し出しているほどである。
当初はこの異常なまでのエレナの態度に、テオドールが放った間者であろうと疑っていたフレデリカや他の使用人達に関しても、絶対に何か魂胆が有るはずだと思っていた。
お茶に毒が入っているのでは?
それともお菓子に毒を盛っているのだろうか?
服の裏に毒針が縫い込まれているのでは?
この笑顔の裏ではどんな悪巧みを考えているんだ?
等々、疑って掛かっていたのだ。
しかしながら、そんな事実は一切見当たらない。
それどころか毎日甲斐甲斐しくもローズに奉仕をしているエレナに対する疑いの目がこのところ変わりつつあった。
もしかしたら、ローズに対して本当に心酔しているのではないだろうか? と。
今のローズに心酔する切っ掛けなど毎日屋敷の中に転がっている。
使用人達は日々ローズの事が好きになって言っている事を自覚していた。
下人でさえ、まるで家族に接するように挨拶をしてくれるローズ。
怪我でもしているのを見付けようものなら、血で汚れるのを気にもせず持っているハンカチを切り裂いて手当をしてくれるローズ。
先日もお互い気になっていながら勇気を出せずにすれ違うばかりで、周囲がやきもきしていた食堂付きの使用人のメイドと執事の間を見事に取り持ってあげていた。
彼らは旦那様が帰って来たら結婚すると言う約束を交わしているそうだ。
そんな二人はローズに絶対の忠誠を誓っていた。
それだけではない。
過去の事で頑なにローズの事を憎んでいた使用人達でさえ、今ではローズに向けるその瞳に憎しみの色は見当たらなくなっている。
だから、エレナも何かの切っ掛けでローズの事が好きになったのでは? 皆は最近そう思うようになって来ていた。
勿論警戒心の強いフレデリカはいまだに心を許してはいないが、最近のエレナの仕事振りには時々関心の言葉を述べている。
それはさておき、彼女が主人公で自分がそのライバルである事を知っているローズにとっては、そのエレナの変貌振りが嬉しくも有るが、それ以上にそこはかとない恐怖も感じていた。
例え今の状況が隠しルートだったとしても、その主人公であるエレナが自分にこんなに懐いている現状が理解出来ない。
フレデリカからのエレナの行動に関する定期報告によると、この館にやって来た初期の頃に行っていたような各部門のリーダーに取り入る動きは見られず、誰彼とも問わず普通に接しているとの事だ。
またゲームの要であるイケメン攻略への動きも見られない。
フレデリカを通じて色々と探りを入れているが、特定の異性の話は一切出て来ないようだ。
『おかしいな~。ゲーム開始二週間目って既にイケメン達との面通しも終わってるし、本来ならお助けキャラのフレデリカにイケメン攻略の傾向と対策を尋ね出す頃なのよね。知らないルートなら特にだわ。だってフラグの立ち具合を確認しないと間違ったルートに進んでても分からないもの』
少なくともエレナがこの屋敷にやって来た時に零した『こんなの知らない』と言う言葉からすると、この隠しルートはプレイした事がない筈だ。
だからノーマルルートとはローズとイケメン達関係が異なってしまっているこのルートでの攻略法を知っているはずはないだろう。
「お嬢様。お茶をどうぞ」
「え? あぁ、ありがとう頂くわ」
いつの間にかお茶を淹れ終えたエレナがそう言ってテーブルの上に音を立てないようにそっとカップを置き、すっとローズの手元に差し出した。
ローズはそのカップを手に取りながらエレナに礼を言う。
『あぁ、またこの笑顔。ほんのり頬も染めちゃって。一体全体どうしたものかしらねぇ?』
にっこりと微笑んでいるエレナを眺めながらローズは溜息混じりに心の中で呟いた。
いつもの様にフレデリカによる午後の授業を受けている最中、ローズはポツリとそんな言葉を零した。
イケメン達との試合を行ったあの日からすでに二週間近くの時間が過ぎている。
その間、朝練に始まりフレデリカの午前の授業、イケメン達との楽しい時間そしてフレデリカとの午後の授業と言ったルーチンワークの如き平凡な毎日が続いていた。
一つ違うのは……。
「ローズちゃん。いいじゃない。平和って事はとっても幸せな事なのよ?」
そう、現在ローズの部屋には部屋の主であるローズ、そして家庭教師役のフレデリカ。
更にもう一人、驚いた事に王国に名高いベルナルド派閥の二大悪女の一人であったシャルロッテの三人の姿があった。
シャルロッテの来訪は何も今日だけでなく、実はのちの世に王国史に刻まれるであろう舞踏会改め運命のサーシャンズコーデ新事業発表会の次の日から幾度となく屋敷に訪れている。
それだけでなく、『ローズと仲直りした事』、それ以上に『ローズと仲が良い事』を周囲にアピールしたいシャルロッテによって、幾度かローズを街に連れ出して一緒にショッピングやレストランでの食事に出かけたりもしていた。
その信じられない光景を目撃した住民達は、あまりの衝撃に天変地異の前触れかと腰を抜かす者も居たらしい。
翌日には二人の仲直りが大事件だとして号外が配られたほどだ。
しかし、その光景が日常となり始めた今では、そんな仲の良い二人に驚く者はもう居ない。
それどころか、王国の明るい未来の到来を予兆する出来事として捉えている者も現れだした。
そんなシャルロッテがローズの屋敷に居る事に不思議はないものの、なぜフレデリカの授業に同席しているかと言うと、カールからの願いによるものであった。
あの運命の日、初めてフレデリカの類稀なる才の程を知ったカールは、フレデリカがローズの家庭教師も行っていると言う事を聞き付けて、フレデリカに対して是非娘にも授業を受けさせてやって欲しいとの要望した為である。
聞き付けた相手は、『午後から授業が有るので~』と帰るように促されるの事に悔し思いをしていた娘のシャルロッテからであり、ローズが変わる切っ掛けになったと思われるフレデリカの授業を娘にも受けさせてやりたいと思うカールの気持ちが重なり、そんなWin-Winの想いからの事であった。
折角のローズと二人きりの時間を邪魔されたくないフレデリカは、最初その申し出を断ろうと思ったのだが、人事院に勤めているカールの人脈、それに今後の事を考えると同性でしかも同等の身分の味方がローズには必要だと言う現実的な予測から、唇を噛み締めたくなる気持ちは有るものの、その申し出を渋々と了承したのであった。
勿論『午後の授業のみ』と言う、少しでも二人きりの時間は残すと言うささやかな抵抗は行っているのだが。
「それはそうなのだけどね~」
ローズはシャルロッテの言葉に同意しながらも、少しだけ不満気にそう答えた。
別にローズは波乱万丈の人生を望んでいる訳ではない。
元の世界の様に、日々続く創始者一族達の圧力や問題児達への対応、それにモンペア共との攻防など無縁のこの世界。
イケメン達との甘い語らい、良好な関係を築きつつある使用人達との心安らぐ交流、どことなく困った友人を思い出すこの世界で初めて出来た親友とのお出かけ。
そんな楽しい時間がいつまでも続いてくれる事を、毎日寝る前に神様に祈っているほどだ。
だがしかし、ローズはその願いが有り得ないと言う事を自覚している。
ここは乙女ゲームの世界で、自分は主人公のライバルキャラである悪役令嬢でしかない。
本来はもっとギスギスとした暗鬱なる日々を送っていて然るべき人物である。
こんな楽しいひと時を過ごしていて良い訳がなく、ゲームシナリオ的には主人公を毎日いびり倒していなければならないキャラなのだ。
そんなキャラに転生してしまった自分は、何とか幸せになろうとこの一か月半の間努力してきた。
その甲斐有ってかゲーム開始以前は言わずもがな、ゲーム開始以降も三桁回数クリアして全てのイベントは見てきたと言う自負が有ったにもかかわらず、日々発生するイベントは見た事が無い出来事ばかり。
そのいずれもが、なぜか悪役令嬢であり、ただのライバルキャラである自分に対して有利となるものばかりであったのだ。
さすがの前向き思考であるローズでも若干不安になってきた。
いつかしっぺ返しが来るのではないか……?
何しろ……。
コンコン―――。
「誰ですか? 今は授業中ですよ」
突然扉をノックする音が部屋に響き、家庭教師役のフレデリカがその扉に向かって尋ねる。
すると扉の向こうからローズの良く知る者の声が聞こえてきた。
『そろそろ休憩のお時間です。お茶をお持ちいたしました』
その声の主はメイドのエレナ。
彼女はこの乙女ゲーム『メイデン・ラバー』の主人公である。
本来ならローズにいびり倒されると言う不幸な日々を送る可哀そうな娘だ。
しかしながら今は違う。
「あぁ、もうそんな時間ですか。分かりました。入りなさい」
ガチャ、キィィーー、バタン。
「失礼します、お嬢様。それにシャルロッテ様」
そう挨拶をしながら部屋に入ってきたエレナは、満面な笑みを浮かべてローズを熱く見詰めていた。
そのエレナの眼差しを見たフレデリカとシャルロッテは微かに嫉妬の炎を浮かべたジト目でエレナを見ている。
エレナはそんな二人の目に気付いてはいるものの、ローズに笑みを向ける事の方が重要なのか気にする様子もなかった。
三人の細やかな自身を巡る熱い攻防に『なんか微妙な空気ね』程度にしか感じていないローズは、取りあえずこのゲームの主人公であるはずのエレナに少々顔を引きつらせながらも笑顔で返す。
このように激しい火花を散らした直接対決二戦目以降、何故かその『主人公であるはずのエレナ』がとても懐いている。
今回の様に気を利かせてお茶とお茶請けを運んできたりするのに留まらず、その他もフレデリカが別の事で手を取られている場合の身の回りの世話や、朝練明けの湯浴みや着替えの準備なども率先して行っていた。
その際の態度も仕事だからと言う事務的なものでなく、今エレナが浮かべている笑顔と同じ表情でとても楽しそうに行っているのだ。
話し掛けてくる時も顔に笑顔を浮かべたまま表情は一切濁らない。
その懐き様は、少しばかり危険な愛情を感じざるを得ないシャルロッテに近い匂いを醸し出しているほどである。
当初はこの異常なまでのエレナの態度に、テオドールが放った間者であろうと疑っていたフレデリカや他の使用人達に関しても、絶対に何か魂胆が有るはずだと思っていた。
お茶に毒が入っているのでは?
それともお菓子に毒を盛っているのだろうか?
服の裏に毒針が縫い込まれているのでは?
この笑顔の裏ではどんな悪巧みを考えているんだ?
等々、疑って掛かっていたのだ。
しかしながら、そんな事実は一切見当たらない。
それどころか毎日甲斐甲斐しくもローズに奉仕をしているエレナに対する疑いの目がこのところ変わりつつあった。
もしかしたら、ローズに対して本当に心酔しているのではないだろうか? と。
今のローズに心酔する切っ掛けなど毎日屋敷の中に転がっている。
使用人達は日々ローズの事が好きになって言っている事を自覚していた。
下人でさえ、まるで家族に接するように挨拶をしてくれるローズ。
怪我でもしているのを見付けようものなら、血で汚れるのを気にもせず持っているハンカチを切り裂いて手当をしてくれるローズ。
先日もお互い気になっていながら勇気を出せずにすれ違うばかりで、周囲がやきもきしていた食堂付きの使用人のメイドと執事の間を見事に取り持ってあげていた。
彼らは旦那様が帰って来たら結婚すると言う約束を交わしているそうだ。
そんな二人はローズに絶対の忠誠を誓っていた。
それだけではない。
過去の事で頑なにローズの事を憎んでいた使用人達でさえ、今ではローズに向けるその瞳に憎しみの色は見当たらなくなっている。
だから、エレナも何かの切っ掛けでローズの事が好きになったのでは? 皆は最近そう思うようになって来ていた。
勿論警戒心の強いフレデリカはいまだに心を許してはいないが、最近のエレナの仕事振りには時々関心の言葉を述べている。
それはさておき、彼女が主人公で自分がそのライバルである事を知っているローズにとっては、そのエレナの変貌振りが嬉しくも有るが、それ以上にそこはかとない恐怖も感じていた。
例え今の状況が隠しルートだったとしても、その主人公であるエレナが自分にこんなに懐いている現状が理解出来ない。
フレデリカからのエレナの行動に関する定期報告によると、この館にやって来た初期の頃に行っていたような各部門のリーダーに取り入る動きは見られず、誰彼とも問わず普通に接しているとの事だ。
またゲームの要であるイケメン攻略への動きも見られない。
フレデリカを通じて色々と探りを入れているが、特定の異性の話は一切出て来ないようだ。
『おかしいな~。ゲーム開始二週間目って既にイケメン達との面通しも終わってるし、本来ならお助けキャラのフレデリカにイケメン攻略の傾向と対策を尋ね出す頃なのよね。知らないルートなら特にだわ。だってフラグの立ち具合を確認しないと間違ったルートに進んでても分からないもの』
少なくともエレナがこの屋敷にやって来た時に零した『こんなの知らない』と言う言葉からすると、この隠しルートはプレイした事がない筈だ。
だからノーマルルートとはローズとイケメン達関係が異なってしまっているこのルートでの攻略法を知っているはずはないだろう。
「お嬢様。お茶をどうぞ」
「え? あぁ、ありがとう頂くわ」
いつの間にかお茶を淹れ終えたエレナがそう言ってテーブルの上に音を立てないようにそっとカップを置き、すっとローズの手元に差し出した。
ローズはそのカップを手に取りながらエレナに礼を言う。
『あぁ、またこの笑顔。ほんのり頬も染めちゃって。一体全体どうしたものかしらねぇ?』
にっこりと微笑んでいるエレナを眺めながらローズは溜息混じりに心の中で呟いた。
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