35 / 121
第二章 誰にも渡しませんわ
第35話 オズの正体
しおりを挟む戦意を喪失した兵士達を見てダルクとナオトは表面上は落ち着いていたが、内心は彼等が襲ってこないのかと不安を抱く。どうにかハッタリで誤魔化す事は出来たが、流石に1万の兵士を相手にするのはダルク達でも不可能である。こちらにユニコーンが居たとしてもそれを操るダルクは只の人間のため、彼女が狙われたらひとたまりもない。
(な、ナオ様……この後はどうするのですか?)
(えっと……ちょっと待って、カンペ見ますから)
ダルクが若干涙目でナオトに次の行動を尋ねると、掌に事前に書き込んでいた文字を確認し、ナオトは兵士達に指示を与えた。
「お前達の探している将軍と隊長達は我々が捕縛している!!もしも街の住民や他の村の人間に危害を加えれば彼等を殺す!!」
「な、何だと!?」
「これがその証拠の将軍の兜だ!!確かめろ!!」
空間魔法を発動させてナオトは兜を放り投げると、慌てて兵士達はギルス将軍の装備している兜だと気づき、顔色を青くさせる。まさか本当に将軍が捕まっているとは思わず、よりにもよって自分達を指揮する立場の人物を人質に取られた事を理解した。
彼等は将軍の指示を受けてここまで行動してきたが、その指示を与える将軍が居なくなれば自分達はどのように行動すればよいのか分からない。普通ならば将軍の次に偉い役職の人間が役目を引き継ぐのだが、一般兵以外の上の立場の人間は全員が先にダルクとナオトが捕獲している。
「さあ、お前達は自分の国へ帰れ!!このまま退散するというのならば我々も危害は加えない!!将軍達も国へ送り返そう!!」
「そ、それは無理だ!!このままみすみすと引き返せば俺達は処罰されるんだ!!」
「そうだ!!将軍が捕まって逃げ帰ったなんて報告すれば俺達は殺されちまう!!」
流石に将軍を人質に取られてもこのまま引き返す事は巨人軍も出来ず、何の成果も上げないうちに国へ引き返せば厳罰は免れない。そんな彼等の返答は予想済みなのでナオトはリーリスから教えて貰った対処法を行う。
「ならばお前達の協力者であるノーズ公爵の元へ戻るがいい!!そしてこう伝えろ、帝国は全てお前達の行動をお見通しだとな!!」
「な、何だって!?」
「どうしてノーズ公爵の事まで……」
「ノーズ公爵が帝国を裏切り、貴方達を引き寄せたのは既に調査済みです。後日、この地に100万の帝国兵が押し寄せるでしょう!!」
「ひゃ、百万だって!?」
ダルクの言葉に巨人軍は震えあがり、いくら自分達が最強の軍隊だと自覚していても流石に100万人という言葉を聞けば焦りを隠せない。実際には今の帝国にそれほど数の兵士を動かす余裕はないが、既にノーズ公爵の存在が知られている事を知った巨人軍はダルクとナオトの言葉が真実だと信じた。
「ど、どうすればいいんだよ……100万なんて数、俺達だけでどうしようも出来ねえぞ?」
「う、うろたえるな!!そんな数の兵士が現れるはずがないだろ!?」
「でも、こいつらはノーズ公爵が俺達に手を貸している事を知ってるぞ?それにこんな得体の知れない魔法使いやユニコーンを操る女騎士がいるなんて聞いてねえぞ……」
「そこ!!聞こえてますよ!!口を慎みなさい!!」
「ひいっ!?すいません!!」
こそこそと内緒話を行う兵士達にダルクが注意すると、ナオトは彼等が素直に従ってくれない事に焦り、反対の掌に書いていたリーリスの考えた対処法を実行する。
「ノーズ公爵の元に戻るというのであれば我々は街へ引き返そう。だが、もしも約束を破って街に攻め入ろうとしたら将軍を含めた捕虜を全員処刑する!!そうなればお前達は国へ戻っても厳罰は免れないぞ!!」
「そ、それだけは……!!」
「頼む、止めてくれ!!あの人に俺達は一生ついて行く事を誓ったんだ!?」
将軍が処刑されるかもしれないという不安に駆られた忠誠心の厚い兵士達は跪く。この軍隊の中には長年の間、ギルスの元で働いていた兵士も多く、ギルスの人望を利用してナオトは指示に従う様に命じた。
「ならばさっさと公爵の元へ戻れ!!そして公爵に伝えろ、大人しく降伏するのならば今回限りはお前の首だけで許してやる。但し、これ以上に反抗する気ならば一族郎党全員を処刑するとな!!」
「ナオト様、流石にそれは酷いのでは……」
「いや、書いてあるのを呼んでいるだけですから……ごほんっ!!さ、さあ、早く行動しろ!!」
『…………』
ナオトの発言にダルクの方が不安を抱いてしまうが、あくまでもナオトの言葉はリーリスが考えた作戦であるため、彼の本意ではない。ナオトに命令された兵士達は黙り込み、やがて一人の兵士が前に出る。
「分かった……お前の指示に従う。そうすれば将軍達は解放してくれるのか?」
「約束しよう。但し、お前達の行動は我々が常に監視している事を忘れるな。もしも街や村に近付こうとすれば捕まえた捕虜を処刑するぞ!!その事を忘れるな!!」
兵士の承諾を得たナオは即座に空間魔法を発動させ、黒渦の中に魔獣達を移動させる。最後にユニコーンに乗ったままダルクと共にナオトも姿を消すと、残された兵士達は自分達の目の前で消えてしまった彼等を見て呆然とした表情を浮かべる。
(な、ナオ様……この後はどうするのですか?)
(えっと……ちょっと待って、カンペ見ますから)
ダルクが若干涙目でナオトに次の行動を尋ねると、掌に事前に書き込んでいた文字を確認し、ナオトは兵士達に指示を与えた。
「お前達の探している将軍と隊長達は我々が捕縛している!!もしも街の住民や他の村の人間に危害を加えれば彼等を殺す!!」
「な、何だと!?」
「これがその証拠の将軍の兜だ!!確かめろ!!」
空間魔法を発動させてナオトは兜を放り投げると、慌てて兵士達はギルス将軍の装備している兜だと気づき、顔色を青くさせる。まさか本当に将軍が捕まっているとは思わず、よりにもよって自分達を指揮する立場の人物を人質に取られた事を理解した。
彼等は将軍の指示を受けてここまで行動してきたが、その指示を与える将軍が居なくなれば自分達はどのように行動すればよいのか分からない。普通ならば将軍の次に偉い役職の人間が役目を引き継ぐのだが、一般兵以外の上の立場の人間は全員が先にダルクとナオトが捕獲している。
「さあ、お前達は自分の国へ帰れ!!このまま退散するというのならば我々も危害は加えない!!将軍達も国へ送り返そう!!」
「そ、それは無理だ!!このままみすみすと引き返せば俺達は処罰されるんだ!!」
「そうだ!!将軍が捕まって逃げ帰ったなんて報告すれば俺達は殺されちまう!!」
流石に将軍を人質に取られてもこのまま引き返す事は巨人軍も出来ず、何の成果も上げないうちに国へ引き返せば厳罰は免れない。そんな彼等の返答は予想済みなのでナオトはリーリスから教えて貰った対処法を行う。
「ならばお前達の協力者であるノーズ公爵の元へ戻るがいい!!そしてこう伝えろ、帝国は全てお前達の行動をお見通しだとな!!」
「な、何だって!?」
「どうしてノーズ公爵の事まで……」
「ノーズ公爵が帝国を裏切り、貴方達を引き寄せたのは既に調査済みです。後日、この地に100万の帝国兵が押し寄せるでしょう!!」
「ひゃ、百万だって!?」
ダルクの言葉に巨人軍は震えあがり、いくら自分達が最強の軍隊だと自覚していても流石に100万人という言葉を聞けば焦りを隠せない。実際には今の帝国にそれほど数の兵士を動かす余裕はないが、既にノーズ公爵の存在が知られている事を知った巨人軍はダルクとナオトの言葉が真実だと信じた。
「ど、どうすればいいんだよ……100万なんて数、俺達だけでどうしようも出来ねえぞ?」
「う、うろたえるな!!そんな数の兵士が現れるはずがないだろ!?」
「でも、こいつらはノーズ公爵が俺達に手を貸している事を知ってるぞ?それにこんな得体の知れない魔法使いやユニコーンを操る女騎士がいるなんて聞いてねえぞ……」
「そこ!!聞こえてますよ!!口を慎みなさい!!」
「ひいっ!?すいません!!」
こそこそと内緒話を行う兵士達にダルクが注意すると、ナオトは彼等が素直に従ってくれない事に焦り、反対の掌に書いていたリーリスの考えた対処法を実行する。
「ノーズ公爵の元に戻るというのであれば我々は街へ引き返そう。だが、もしも約束を破って街に攻め入ろうとしたら将軍を含めた捕虜を全員処刑する!!そうなればお前達は国へ戻っても厳罰は免れないぞ!!」
「そ、それだけは……!!」
「頼む、止めてくれ!!あの人に俺達は一生ついて行く事を誓ったんだ!?」
将軍が処刑されるかもしれないという不安に駆られた忠誠心の厚い兵士達は跪く。この軍隊の中には長年の間、ギルスの元で働いていた兵士も多く、ギルスの人望を利用してナオトは指示に従う様に命じた。
「ならばさっさと公爵の元へ戻れ!!そして公爵に伝えろ、大人しく降伏するのならば今回限りはお前の首だけで許してやる。但し、これ以上に反抗する気ならば一族郎党全員を処刑するとな!!」
「ナオト様、流石にそれは酷いのでは……」
「いや、書いてあるのを呼んでいるだけですから……ごほんっ!!さ、さあ、早く行動しろ!!」
『…………』
ナオトの発言にダルクの方が不安を抱いてしまうが、あくまでもナオトの言葉はリーリスが考えた作戦であるため、彼の本意ではない。ナオトに命令された兵士達は黙り込み、やがて一人の兵士が前に出る。
「分かった……お前の指示に従う。そうすれば将軍達は解放してくれるのか?」
「約束しよう。但し、お前達の行動は我々が常に監視している事を忘れるな。もしも街や村に近付こうとすれば捕まえた捕虜を処刑するぞ!!その事を忘れるな!!」
兵士の承諾を得たナオは即座に空間魔法を発動させ、黒渦の中に魔獣達を移動させる。最後にユニコーンに乗ったままダルクと共にナオトも姿を消すと、残された兵士達は自分達の目の前で消えてしまった彼等を見て呆然とした表情を浮かべる。
0
お気に入りに追加
488
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?
山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる