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第四章 集う娘達
第103話 イレギュラー
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「ちょっとマーシャル。いつまでそうしているつもり?」
二人を抱き締めていたら、母さんが僕に質問してきた。
いつまでって言われても久し振り再会なんだからもうちょっとこうしていたいんだけど、退屈しちゃったのかな?
まぁずっとこうしててもすぐに日が暮れちゃうし、そろそろメアリが起きちゃうかもしれない。
目が覚めて僕と母さんが居ないことに気付いたら、また荒れそうだし、そうなったら恐ろしい。
「そうだね。全部終わったしメアリが目を覚ましたら大変だからそろそろ帰ろうか。ほら二人共、帰る準備するよ」
僕は二人から手を放し立ち上がりながら母さんの方に振り向いた。
すると母さんは呆れた顔で僕を見ている。
「どうしたの母さん?」
「どうしたもこうしたも無いわよ。まだ全然終わってないじゃない」
終わってない? 僕は母さんの言葉の意味が良く分からず首を傾げる。
すると母さんは額に手を当てて溜息を吐いた。
「あのね、あんた。肝心なこと忘れてるわよ。その子をそのままにしておくつもり?」
そう言ってファフを指差した。
あっ……。
「そ、そうか。契約しなきゃ」
「呆れた。本当に忘れてたのね」
母さんの言う通りすっかり忘れていたよ。
卵から産まれて僕のことを憶えていてくれたから全部終わった気になっていた。
僕は始祖とファフニールに施された二つの封印を解く為に五体の魔物と契りを結ばないとダメだったんだ。
「早くしないとすぐに大きくなっちゃうから気を付けないと」
「えっ、どうして? ファフは産まれたばかりだよ? そんなすぐには……」
そこまで言って母さんの言わんとする事に気付いた。
虚空でファフニールは自分が消えたらすぐに孵化すると言っていた通りこうやって生まれて来たわけだけど、いつまでこの姿でいるのか?
いや、いられるのかと言うこと。
ファフニールは卵は古い肉体を捨てて新しい肉体を得る為のただの器と言っていた。
300年毎に卵を産んで新生を繰り返すファフニール。
魔物図鑑や伝承の書物にはそんな生態は一切書かれて居なかった。
『原初の四体』の内、目覚めた後すぐに人前から姿を消したライアと北の果てで僅かな目撃例しかない不死鳥と違って、どの時代にも魔王と並ぶ人類の脅威として人々の間で語られ続けて来た邪龍ファフニールは、その伝承全てに天空を舞う巨龍の姿で伝わっていたんだ。
それは人魔大戦と呼ばれる人類と魔物の激しい最中でも変わらない。
当時今なんかよりもっとずっと死が身近な世界だった。
そんな必死に生きていた時代に、邪龍ファフニールが三百年毎に幼龍に戻り、年月掛けて成龍になるなんて事実に気付かないなんて事は有るのだろうか?
人類の魔物研究への研鑽を重ねた歴史は死と隣合わせで有るが故に、脅威が大きければ大きいほど現在に残る資料は膨大になる。
そりゃ時の権力者によって瑣末な魔物の生態や都合の悪い事実を焚書するなんてのが行われてきただろうから、平和な世の中で叔母さんみたいに魔物研究に勤しむ学問がいまだに存在しているわけだけど、魔王に並ぶ人類の敵の弱点と言える生まれ変わりを隠す必要なんてないだろう。
それに人類の悲願とも言える邪龍討伐なんて名誉を黙って見過すなんてするとは思えないし、何より今もファフニールはこうして存在している。
「ねぇトレ爺? ちょっと聞きたい事が有るんだけど~」
僕はこの森の長であるトレ爺に真相を聞こうと声を掛けた。
トレ爺は他の友達と共に少し離れた場所でダンテさん達と話をしてるみたいだ。
僕の声でトレ爺達がこちらに目を向けた。
「なんじゃマーシャ? ……あぁファフニール様の成長についてじゃな?」
「そう! ……なんだけど、トレ爺ってやっぱり心読めるの?」
虚空でファフニールと話した時みたいに最後まで言わなくても会話が成立しててなんだかムズムズするよ。
楽なんだけど逆にこれに馴れたら他の人と会話出来なくなりそう。
それとも僕って考えてる事が顔に出やすいのかな?
「おおよそ分かるぞ。自然種とは元々喋らぬ物が依代となっておるからのう。人だろうが魔物だろうが、それこそ樹木や鉱物だろうと思考を持つ者相手なら物事を思い浮かべる際に放たれる波動を……」
「トレ爺様! だからと言って主語を言わなくても言いと言う訳ではありませんよ? 今は口が有るのですから、若木達にはちゃんと分かるように説明して……」
あぁまたドリーのスイッチが入っちゃった。
本当に鬱憤が溜まってたんだね。
母さん達の誓約の所為で今までドリーとほとんど接点がなかったからこんな悩みがあるとは知らなかったよ。
「ドリー。そこらへんで勘弁してあげて。それよりトレ爺。ファフはすぐに大きくなっちゃうの?」
「ほ、ほら。マーシャの質問じゃ」
「もう仕方有りませんね……、はいトレ爺様説明してあげて下さい。ちゃんとですよ?」
「わがっておるって。そうじゃよマーシャ。ファフニール様の孵化は覚醒による急激な……はて? おかしいのう」
僕の助け舟に助かったと言う顔をしているトレ爺が話の途中で首を傾げだした。
そしてマジマジとファフを見ている。
「急激に何? 何がおかしいの?」
「う~む。この森は過去幾度かファフニール様の産卵地に選ばれた事があるのじゃが、こんな事は初めてじゃ。本来なら今も言おうとした通り、覚醒すると急激に成長が始まり卵を突き破って成龍になられるのじゃよ」
「えっと……どう言うこと?」
トレ爺の回答に僕もつられてファフに目を向けた。
するとファフは「ピ?」と鳴きながら同じように不思議そうな顔して首を捻る。
「何でだろ?」
「なんでかのう?」
「ピピィ?」
「なんでかは分からないけど丁度良いんじゃない?」
普通じゃないらしいファフの孵化の事を考えていると母さんがそんな事を言ってきた。
皆で母さんの方に顔を向ける。
「マーシャル。あんたのキャッチの特性忘れたの? 弱いけど巨大な魔石を持つなんて言う特殊な魔物としか契約出来ないってこと。今のファフニールはまさにその状態よ」
「あっ……」
そうだった、母さんが言った通り僕の契約の魔法は巨大な魔石を持つ魔物しか契約出来ない。
巨大な魔石を持つ魔物……そう例えば原初の四体と呼ばれる魔物達。
だけど今の僕の力では原初の四体そのものと契約する力は無いようだ。
それは始祖が掛けたライアの封印が解けてライアスフィアに戻った際に、その強大な魔力に勝てずに死にそうになった事が証明している。
あの時は良く分からない内に、それこそいまだに良く分からない絆魔法ってやつで3メートルの巨大な獣皇だったライアを今の幼い女の子の姿に変えたお陰で死なずに済んだんだ。
「もしかするとファフがこの姿のままでいてくれているのは、その為なのかな?」
「そうかもね。ほらファフニールがその姿でいる内に早く早く」
「そうだね。……さてと、ファフ。ちょっとそこに立ってて」
「ピイッ!」
僕はキャッチを唱える為、少し離れた場所にファフを立たせた。
母さんの言う通り本当にファフニールが最後のプレゼントとして僕に契約の時間をくれたのかもしれない。
いきなり成龍となったファフと契約なんて赤い召喚紋の所為で契約解除が出来ない僕にとってリスクの大き過ぎる博打だ。
ライアの時みたいに死ぬ前に絆魔法が発動してくれたら良いけど、自分の意思で発動出来ない内は気を付けないとね。
「じゃあ行くよ。キャッチッ! さぁ、ファフ! 僕と契約して従魔になって!!」
ファフに向けて突き出した右手から光輪が放たれた。
そしてファフ目掛けて飛んでいく。
ゴクリ。
僕は緊張のあまり唾を飲み混んだ。
これは何度も見た光景。
いつもだったらこのまま光輪は目標の身体に入り込みそのまま魔石を素通りして消えてしまう。
魔力マシマシのキャッチなら魔石を掴めるけど弱い魔物ならそのまま壊してしまうんだ。
ライアと同じ原初の4体であるファフならマシマシでも壊れる事はないだろうけど、逆に言うとライアがモコの時は普通のキャッチで契約出来たんだから、敢えて今は普通のキャッチを唱えた。
普通のテイマーなら掴む事も包む込む事も出来ず、ましてや魔石に契約の刻印を印す間も無く弾き飛ばされるA級以上どころかS級? ううん原初の四体は恐らくSSS級の魔物の魔石。
「さぁ……どうだ……?」
僕だけじゃない、この場にいる全員がキャッチの結果に固唾を飲んで見守っている。
ファフは自分の周囲に浮かぶ光輪を不思議そうに眺めていたけど、徐々に狭まるソレにちょっと落ち着かない顔をしていた。
あと少し……。
「5……4……」
誰ともしれずカウントダウンの掛け声が始まった。
「3……2……」
光輪は魔石を探しファフの中に溶け込んだ。
ファフの魔石はどこだろうか?
ライアと同じならもう掴めるはず。
「1……ゼ…」
ガシリ
「掴んだ!」
カウントダウンギリギリで僕のキャッチがファフの魔石をしっかりと掴んだ感触が伝わってきた。
やった! これだ! この感覚だよ!
ライアの時に感じた魔石を包み込む感触。
後は魔石の表面に契約の証を印すだけ。
それも抵抗無く僕のキャッチは契約の証をファフの魔石に印して行く。
そして……。
「やったぁ! 成功だ!」
呪文が完了した感触。
これで僕とファフの間に契約は成された。
嬉しくて喜びの声を上げたんだけど……。
「……喜んでいるところ悪いが、イレギュラーの発生だ」
僕の喜びも束の間、僕達の背後からこの場には居ない筈の声が響いた。
二人を抱き締めていたら、母さんが僕に質問してきた。
いつまでって言われても久し振り再会なんだからもうちょっとこうしていたいんだけど、退屈しちゃったのかな?
まぁずっとこうしててもすぐに日が暮れちゃうし、そろそろメアリが起きちゃうかもしれない。
目が覚めて僕と母さんが居ないことに気付いたら、また荒れそうだし、そうなったら恐ろしい。
「そうだね。全部終わったしメアリが目を覚ましたら大変だからそろそろ帰ろうか。ほら二人共、帰る準備するよ」
僕は二人から手を放し立ち上がりながら母さんの方に振り向いた。
すると母さんは呆れた顔で僕を見ている。
「どうしたの母さん?」
「どうしたもこうしたも無いわよ。まだ全然終わってないじゃない」
終わってない? 僕は母さんの言葉の意味が良く分からず首を傾げる。
すると母さんは額に手を当てて溜息を吐いた。
「あのね、あんた。肝心なこと忘れてるわよ。その子をそのままにしておくつもり?」
そう言ってファフを指差した。
あっ……。
「そ、そうか。契約しなきゃ」
「呆れた。本当に忘れてたのね」
母さんの言う通りすっかり忘れていたよ。
卵から産まれて僕のことを憶えていてくれたから全部終わった気になっていた。
僕は始祖とファフニールに施された二つの封印を解く為に五体の魔物と契りを結ばないとダメだったんだ。
「早くしないとすぐに大きくなっちゃうから気を付けないと」
「えっ、どうして? ファフは産まれたばかりだよ? そんなすぐには……」
そこまで言って母さんの言わんとする事に気付いた。
虚空でファフニールは自分が消えたらすぐに孵化すると言っていた通りこうやって生まれて来たわけだけど、いつまでこの姿でいるのか?
いや、いられるのかと言うこと。
ファフニールは卵は古い肉体を捨てて新しい肉体を得る為のただの器と言っていた。
300年毎に卵を産んで新生を繰り返すファフニール。
魔物図鑑や伝承の書物にはそんな生態は一切書かれて居なかった。
『原初の四体』の内、目覚めた後すぐに人前から姿を消したライアと北の果てで僅かな目撃例しかない不死鳥と違って、どの時代にも魔王と並ぶ人類の脅威として人々の間で語られ続けて来た邪龍ファフニールは、その伝承全てに天空を舞う巨龍の姿で伝わっていたんだ。
それは人魔大戦と呼ばれる人類と魔物の激しい最中でも変わらない。
当時今なんかよりもっとずっと死が身近な世界だった。
そんな必死に生きていた時代に、邪龍ファフニールが三百年毎に幼龍に戻り、年月掛けて成龍になるなんて事実に気付かないなんて事は有るのだろうか?
人類の魔物研究への研鑽を重ねた歴史は死と隣合わせで有るが故に、脅威が大きければ大きいほど現在に残る資料は膨大になる。
そりゃ時の権力者によって瑣末な魔物の生態や都合の悪い事実を焚書するなんてのが行われてきただろうから、平和な世の中で叔母さんみたいに魔物研究に勤しむ学問がいまだに存在しているわけだけど、魔王に並ぶ人類の敵の弱点と言える生まれ変わりを隠す必要なんてないだろう。
それに人類の悲願とも言える邪龍討伐なんて名誉を黙って見過すなんてするとは思えないし、何より今もファフニールはこうして存在している。
「ねぇトレ爺? ちょっと聞きたい事が有るんだけど~」
僕はこの森の長であるトレ爺に真相を聞こうと声を掛けた。
トレ爺は他の友達と共に少し離れた場所でダンテさん達と話をしてるみたいだ。
僕の声でトレ爺達がこちらに目を向けた。
「なんじゃマーシャ? ……あぁファフニール様の成長についてじゃな?」
「そう! ……なんだけど、トレ爺ってやっぱり心読めるの?」
虚空でファフニールと話した時みたいに最後まで言わなくても会話が成立しててなんだかムズムズするよ。
楽なんだけど逆にこれに馴れたら他の人と会話出来なくなりそう。
それとも僕って考えてる事が顔に出やすいのかな?
「おおよそ分かるぞ。自然種とは元々喋らぬ物が依代となっておるからのう。人だろうが魔物だろうが、それこそ樹木や鉱物だろうと思考を持つ者相手なら物事を思い浮かべる際に放たれる波動を……」
「トレ爺様! だからと言って主語を言わなくても言いと言う訳ではありませんよ? 今は口が有るのですから、若木達にはちゃんと分かるように説明して……」
あぁまたドリーのスイッチが入っちゃった。
本当に鬱憤が溜まってたんだね。
母さん達の誓約の所為で今までドリーとほとんど接点がなかったからこんな悩みがあるとは知らなかったよ。
「ドリー。そこらへんで勘弁してあげて。それよりトレ爺。ファフはすぐに大きくなっちゃうの?」
「ほ、ほら。マーシャの質問じゃ」
「もう仕方有りませんね……、はいトレ爺様説明してあげて下さい。ちゃんとですよ?」
「わがっておるって。そうじゃよマーシャ。ファフニール様の孵化は覚醒による急激な……はて? おかしいのう」
僕の助け舟に助かったと言う顔をしているトレ爺が話の途中で首を傾げだした。
そしてマジマジとファフを見ている。
「急激に何? 何がおかしいの?」
「う~む。この森は過去幾度かファフニール様の産卵地に選ばれた事があるのじゃが、こんな事は初めてじゃ。本来なら今も言おうとした通り、覚醒すると急激に成長が始まり卵を突き破って成龍になられるのじゃよ」
「えっと……どう言うこと?」
トレ爺の回答に僕もつられてファフに目を向けた。
するとファフは「ピ?」と鳴きながら同じように不思議そうな顔して首を捻る。
「何でだろ?」
「なんでかのう?」
「ピピィ?」
「なんでかは分からないけど丁度良いんじゃない?」
普通じゃないらしいファフの孵化の事を考えていると母さんがそんな事を言ってきた。
皆で母さんの方に顔を向ける。
「マーシャル。あんたのキャッチの特性忘れたの? 弱いけど巨大な魔石を持つなんて言う特殊な魔物としか契約出来ないってこと。今のファフニールはまさにその状態よ」
「あっ……」
そうだった、母さんが言った通り僕の契約の魔法は巨大な魔石を持つ魔物しか契約出来ない。
巨大な魔石を持つ魔物……そう例えば原初の四体と呼ばれる魔物達。
だけど今の僕の力では原初の四体そのものと契約する力は無いようだ。
それは始祖が掛けたライアの封印が解けてライアスフィアに戻った際に、その強大な魔力に勝てずに死にそうになった事が証明している。
あの時は良く分からない内に、それこそいまだに良く分からない絆魔法ってやつで3メートルの巨大な獣皇だったライアを今の幼い女の子の姿に変えたお陰で死なずに済んだんだ。
「もしかするとファフがこの姿のままでいてくれているのは、その為なのかな?」
「そうかもね。ほらファフニールがその姿でいる内に早く早く」
「そうだね。……さてと、ファフ。ちょっとそこに立ってて」
「ピイッ!」
僕はキャッチを唱える為、少し離れた場所にファフを立たせた。
母さんの言う通り本当にファフニールが最後のプレゼントとして僕に契約の時間をくれたのかもしれない。
いきなり成龍となったファフと契約なんて赤い召喚紋の所為で契約解除が出来ない僕にとってリスクの大き過ぎる博打だ。
ライアの時みたいに死ぬ前に絆魔法が発動してくれたら良いけど、自分の意思で発動出来ない内は気を付けないとね。
「じゃあ行くよ。キャッチッ! さぁ、ファフ! 僕と契約して従魔になって!!」
ファフに向けて突き出した右手から光輪が放たれた。
そしてファフ目掛けて飛んでいく。
ゴクリ。
僕は緊張のあまり唾を飲み混んだ。
これは何度も見た光景。
いつもだったらこのまま光輪は目標の身体に入り込みそのまま魔石を素通りして消えてしまう。
魔力マシマシのキャッチなら魔石を掴めるけど弱い魔物ならそのまま壊してしまうんだ。
ライアと同じ原初の4体であるファフならマシマシでも壊れる事はないだろうけど、逆に言うとライアがモコの時は普通のキャッチで契約出来たんだから、敢えて今は普通のキャッチを唱えた。
普通のテイマーなら掴む事も包む込む事も出来ず、ましてや魔石に契約の刻印を印す間も無く弾き飛ばされるA級以上どころかS級? ううん原初の四体は恐らくSSS級の魔物の魔石。
「さぁ……どうだ……?」
僕だけじゃない、この場にいる全員がキャッチの結果に固唾を飲んで見守っている。
ファフは自分の周囲に浮かぶ光輪を不思議そうに眺めていたけど、徐々に狭まるソレにちょっと落ち着かない顔をしていた。
あと少し……。
「5……4……」
誰ともしれずカウントダウンの掛け声が始まった。
「3……2……」
光輪は魔石を探しファフの中に溶け込んだ。
ファフの魔石はどこだろうか?
ライアと同じならもう掴めるはず。
「1……ゼ…」
ガシリ
「掴んだ!」
カウントダウンギリギリで僕のキャッチがファフの魔石をしっかりと掴んだ感触が伝わってきた。
やった! これだ! この感覚だよ!
ライアの時に感じた魔石を包み込む感触。
後は魔石の表面に契約の証を印すだけ。
それも抵抗無く僕のキャッチは契約の証をファフの魔石に印して行く。
そして……。
「やったぁ! 成功だ!」
呪文が完了した感触。
これで僕とファフの間に契約は成された。
嬉しくて喜びの声を上げたんだけど……。
「……喜んでいるところ悪いが、イレギュラーの発生だ」
僕の喜びも束の間、僕達の背後からこの場には居ない筈の声が響いた。
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