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第四章 集う娘達
第98話 全ての母
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「そう言えば僕を襲ったフォレストウルフってどうなったの?」
トレ爺の道案内で森の奥目指して歩いて僕達。
ふと気になって僕が虚空に連れ去られる原因となったあのフォレストウルフの事が気になったので尋ねてみた。
戻ってきた時、目の前にいきなりS級の魔物であるトレ爺が現れたもんだから、その衝撃ですっかり忘れていたよ。
「あぁ、それについてなんだが……俺達がやっちまったんだ」
僕の後ろからダンテさんが何故か申し訳無さそうな声でそう言ってきた。
なんで僕を助けてくれたのにまるで謝るかのような感じなんだろう?
僕は不思議に思いダンテさんの方を見ると目線が僕じゃなくトレ爺に向けられていた。
あっ、分かった。
フォレストウルフを倒した後にトレ爺が現れたんだな。
そりゃ味方の仇として復讐されるとビビッても仕方無いや。
実際のところどうなんだろう? 現にこうしてトレ爺はダンテさん達に何もしていない。
僕が居る手前、人間を殺さないようにしているだけなんだろうか?
トレ爺の本心を確認しておかなきゃ。
「ねぇトレ爺? 怒ってる?」
「……あぁ怒っておるとも」
僕がストレートに聞くとトレ爺は身体から威圧のオーラを出しながらそう答えた。
やっぱり怒ってた~!!
トレ爺の威圧を受けてダンテさん達が涙目になって震えている。
さすがのA級パーティーと言えど、S級の魔物が放つ威圧には抗いようが無い。
僕もチビリそうなほど怖いけど、元はと言えば僕が一人で走り出したのが原因なんだし、ダンテさん達を許してもらうようにお願いしなきゃ。
「あ、あの……」
「あの狼族め!! 流れ者の分際で儂達の大切なマーシャの命を狙うとは、もう少しそやつ等の行動が遅かったら儂自らの手で縊り殺しておるところだったわい」
「え?」
トレ爺の言葉に皆が言葉を失った。
威圧を消したトレ爺はダンテさん達に微笑みかける。
怒った理由ってそっち?
「お前達よくやったぞ。あの見事な手際褒めてやろう。あとで何か褒美を取らすから期待しておくのだな」
「え? え、あ、はい……恐縮です」
まるで王の如き威厳を放ち朗々と語るトレ爺に皆がうろたえながらも、Aランク冒険者の意地なのか気を取り直したダンテさんがパーティーの代表として頭を下げた。
あっそう言えば、『まるで』じゃなくてトレ爺はこの森を統べる頂点たる存在なんだから王様で間違いないのか。
しかし、ダンテさん達の驚きは無理もない。
僕だって魔物が魔物を倒した人間の事を褒めるなんて思わなかった。
けど、友達である僕を助けたからと言う理由なら少し複雑だ。
だってそうじゃなかったら、仲間である魔物を人間に殺されて納得出来る訳ないよ。
「あの、トレ爺?」
「みなまで言うなマーシャよ。お主の考えは分かっておるぞ。結論から言うと儂はなんとも思っておらぬ」
「えぇっ!? どう言う事?」
トレ爺の『何も思わない』と言う回答に皆が驚く。
僕の考えが分かっていると言ってるけど、本当に分かってる?
仲間を殺されて何も思わないって言ってるって事だよ?
「少し語弊が有ったわい。マーシャが関わっておらぬ場合であっても、そこの者達によってフォレストウルフが討たれた事はただの生存競争の一環としか思わないと言う事じゃよ」
あっ、ちゃんと僕の考えを理解してくれていた。
でもその言葉をきちんと理解する事が出来ない。
トレ爺の言葉はまるでごく当たり前の自然の摂理を語っているように聞こえる。
それとも人間と魔物が戦うのは今更そんな事でどうこう言うつもりは無いって意味なのかな?
……何故か分らないけど多分違うと思う。
なんて言えば良いんだろうか?
トレ爺の真意は別の視点から齎されたように感じる。
もしかしたらだけど、それが僕の中で整理出来ないでいる『人間と魔物への想い』に対する答えの手掛かりになるんじゃないだろうか?
「教えてトレ爺。同じ魔物が人間に殺されたんだよ? それなのになんで生存競争として割り切れるの?」
「う~む。マーシャよ、物事を難しく考えるようになってしまったの。お主達人間に当て嵌めてみよ。自分の国の大切な者が、他国の侵略によって殺されてしまったら怒るじゃろう?」
「うん、そりゃ怒るよ」
「では、全く関係無い国同士の殺し合いにも同じ様に怒るかと問えば、どうじゃ?」
「えっとそれは……」
「勿論争いを好まない者であれば『愚かな事を』と眉を顰め、中には涙する者も居るであろうが、多くの人間は我関せず自分達に火の粉が飛んで来なければ、先程言ったように生存競争の一環として気にも留めないであろう」
僕達はトレ爺の言葉に何も言い返せなかった。
確かにトレ爺の言う通り、大切な人を殺されたら怒るし、関係無い国の話なら気にも止めないと思う。
けど、これは人間だからであって、人間と魔物の間でも同じ事が言えるのだろうか?
「お主達は勘違いしておる。確かにかつて魔物は人間を憎み永きに渡りお互い戦いに明け暮れた。それは魔王であるアシュタロト様が魔物達を率いていたと言うのも有るのじゃが、その根底に有るのは我ら魔物を創り虐げていた『パンゲア』と言う国に対する憎しみなのじゃよ。パンゲアが滅びた今、この世に暮らす人間達は我らと同じく『パンゲア』から隷属国として虐げられていた国々の末裔達。既に多くの魔物達にはある意味同胞と言える今の人間達対して憎しみはないのじゃ」
「そ、そんな……」
トレ爺の口から語られた言葉に僕達は驚愕した。
始祖の手記によってパンゲアと魔物の関係を知っていた僕でさえ魔物達の人間に対する考えに言葉を失っていると言うのに、『魔物は神の敵』と言う世に広まる一般常識を信じているダンテさん達には信じ難い話だと思う。
術系統的に信仰心に厚い治癒師のマルロフさんにとっては暴挙とも取れる発言じゃないだろうか?
心配になった僕はダンテさん達の様子を窺うと、何故か皆僕の事を真剣な眼差しで見詰めていた。
まるで今の言葉が真実なのかと僕に問い掛けているようだ。
なぜ僕に答えを求めるのかは分からないけど、確かにトレ爺の話が真実かどうかの答えを出せるのは、この場に置いて僕か母さんだけだろう。
だけど今ダンテさん達は僕に答えを求めている。
僕は今の話を肯定しべく力強く頷いた。
するとダンテさん達は『そうだったのか』と納得している。
驚いた事にマルロフさんも首を傾げながらも目を閉じて頷いていた。
あれ? 出会って間もない僕の事をなんでそこまで信じるの?
不思議に思っているとレイミーさんとアンドリューさんが「マーシャルが認めるなら納得」としみじみ呟いている。
それに二人だけじゃない他の皆も……。
「俺のスキルも今の話が事実だと告げてるんだよねぇ」
「邪龍と知り合いでトレントと友達だしな」
「さっきから聞いている話だけでも信じられない事ばかりなんだ。この後何が来ても驚かないぜ」
「神を疑う訳じゃないが、教義とは時に権力者達の手によって歪められる側面はある。俺は俺の目で真実を知りたいと思う」
ダンテさん達がそう言って笑い出した。
今までの概念の根底を覆すような話だよ?
う~ん、ベテラン冒険者になるにはこれくらい思考が柔軟じゃないとダメなのかな。
そう思うと確かに僕は考え過ぎなのかも。
「ほっほっほっ。納得してくれたかの? まぁ長年互いに殺し合った仲な訳じゃし、根底の憎しみは消えても新たな恨みつらみは有るのじゃがの。争いは早々消えぬわい。とは言え、ここまで割り切れるのは儂が自然種に属する魔物だからなのじゃがな」
「自然種?」
トレントであるトレ爺が自然種と言う意味は何となく分かるけど、自然種と言う種族は図鑑にも載っていなかった言葉だ。
魔物達の知識……ひいては『パンゲア』で使われていた言葉なのだろう。
だけど、何故それが『割り切れる』に繋がるのか分からない。
「人間達は魔物が一つの集団だと思っているようじゃが、実は魔物は大きく二つに分類されるのじゃよ。戦闘兵として創り出された鬼や獣、龍と言った類の生物種と、儂の様なトレントを筆頭にそこのドリアードと言った植物、それに土や水と言った通常なら意思を持たない者達を基として創られた自然種と言う風にな」
知らなかった。
いや勿論意識を持たない物を基礎とした魔物達の存在は知っているよ。
そしてそれは魔物学の中でも大いなる謎の一つとされている。
如何にして無機物に意思が宿り魔物となったのか? ってね。
そりゃ今の僕には分かるよ?
ただ単にパンゲアの人達がそう創っただけだって事はね。
僕が知らないと言ったのはごく単純な話。
魔物がそんな分類に別けられていた事。
そしてそれを自覚している事。
ううん、違うな。
そもそもそんな分類の事を知ってたとか知らなかったとかの話じゃない。
逆に知ったとしてどうなのって話だ。
まぁお姉さんはないて喜ぶと思うけどね。
しかし、その分類に意味があるとしたら?
例えば……。
「もしかして、トレントや一部の魔物達が人魔大戦に与さなかった理由と関係有るの?」
「あぁそうじゃ」
やっぱり。
これこそ本当に知らなかった事だと心から言える。
だったら聞きたい事は一つ。
魔物を戦争の道具としか見ていなかったパンゲアがなにを求めて自然種と呼ばれる魔物を創ったのか?
自分達を襲わせないセーフティー機能を仕組んでいた?
いやいや、それだったら全ての魔物に仕組んでいてもおかしくない。
自然種と言う存在を創ったのは何か重要な意味が有ったんだろう。
「教えてトレ爺! 自然種とは何の為に創り出されたと言うの?」
「あぁ教えてやろうとも。最初に断っておくが自然種と言っても世代代謝の激しい末端の者達はアシュタロト様について行った者もおる。しかし儂の様な第一世代、そしてそれに順ずる古い世代の自然種達は己のすべき使命の為に世界に散っていった」
「己の使命? それは一体なんなの?」
「我ら自然種の使命。それは原初の四体の母……いや我らが魔物全ての母たるエターナル様の遺志を継ぎ、マナの枯渇したこの世界を蘇らせることじゃ」
魔物全ての母たるエターナル。
その名を聞いて僕の心臓がトクンと震えた。
トレ爺の道案内で森の奥目指して歩いて僕達。
ふと気になって僕が虚空に連れ去られる原因となったあのフォレストウルフの事が気になったので尋ねてみた。
戻ってきた時、目の前にいきなりS級の魔物であるトレ爺が現れたもんだから、その衝撃ですっかり忘れていたよ。
「あぁ、それについてなんだが……俺達がやっちまったんだ」
僕の後ろからダンテさんが何故か申し訳無さそうな声でそう言ってきた。
なんで僕を助けてくれたのにまるで謝るかのような感じなんだろう?
僕は不思議に思いダンテさんの方を見ると目線が僕じゃなくトレ爺に向けられていた。
あっ、分かった。
フォレストウルフを倒した後にトレ爺が現れたんだな。
そりゃ味方の仇として復讐されるとビビッても仕方無いや。
実際のところどうなんだろう? 現にこうしてトレ爺はダンテさん達に何もしていない。
僕が居る手前、人間を殺さないようにしているだけなんだろうか?
トレ爺の本心を確認しておかなきゃ。
「ねぇトレ爺? 怒ってる?」
「……あぁ怒っておるとも」
僕がストレートに聞くとトレ爺は身体から威圧のオーラを出しながらそう答えた。
やっぱり怒ってた~!!
トレ爺の威圧を受けてダンテさん達が涙目になって震えている。
さすがのA級パーティーと言えど、S級の魔物が放つ威圧には抗いようが無い。
僕もチビリそうなほど怖いけど、元はと言えば僕が一人で走り出したのが原因なんだし、ダンテさん達を許してもらうようにお願いしなきゃ。
「あ、あの……」
「あの狼族め!! 流れ者の分際で儂達の大切なマーシャの命を狙うとは、もう少しそやつ等の行動が遅かったら儂自らの手で縊り殺しておるところだったわい」
「え?」
トレ爺の言葉に皆が言葉を失った。
威圧を消したトレ爺はダンテさん達に微笑みかける。
怒った理由ってそっち?
「お前達よくやったぞ。あの見事な手際褒めてやろう。あとで何か褒美を取らすから期待しておくのだな」
「え? え、あ、はい……恐縮です」
まるで王の如き威厳を放ち朗々と語るトレ爺に皆がうろたえながらも、Aランク冒険者の意地なのか気を取り直したダンテさんがパーティーの代表として頭を下げた。
あっそう言えば、『まるで』じゃなくてトレ爺はこの森を統べる頂点たる存在なんだから王様で間違いないのか。
しかし、ダンテさん達の驚きは無理もない。
僕だって魔物が魔物を倒した人間の事を褒めるなんて思わなかった。
けど、友達である僕を助けたからと言う理由なら少し複雑だ。
だってそうじゃなかったら、仲間である魔物を人間に殺されて納得出来る訳ないよ。
「あの、トレ爺?」
「みなまで言うなマーシャよ。お主の考えは分かっておるぞ。結論から言うと儂はなんとも思っておらぬ」
「えぇっ!? どう言う事?」
トレ爺の『何も思わない』と言う回答に皆が驚く。
僕の考えが分かっていると言ってるけど、本当に分かってる?
仲間を殺されて何も思わないって言ってるって事だよ?
「少し語弊が有ったわい。マーシャが関わっておらぬ場合であっても、そこの者達によってフォレストウルフが討たれた事はただの生存競争の一環としか思わないと言う事じゃよ」
あっ、ちゃんと僕の考えを理解してくれていた。
でもその言葉をきちんと理解する事が出来ない。
トレ爺の言葉はまるでごく当たり前の自然の摂理を語っているように聞こえる。
それとも人間と魔物が戦うのは今更そんな事でどうこう言うつもりは無いって意味なのかな?
……何故か分らないけど多分違うと思う。
なんて言えば良いんだろうか?
トレ爺の真意は別の視点から齎されたように感じる。
もしかしたらだけど、それが僕の中で整理出来ないでいる『人間と魔物への想い』に対する答えの手掛かりになるんじゃないだろうか?
「教えてトレ爺。同じ魔物が人間に殺されたんだよ? それなのになんで生存競争として割り切れるの?」
「う~む。マーシャよ、物事を難しく考えるようになってしまったの。お主達人間に当て嵌めてみよ。自分の国の大切な者が、他国の侵略によって殺されてしまったら怒るじゃろう?」
「うん、そりゃ怒るよ」
「では、全く関係無い国同士の殺し合いにも同じ様に怒るかと問えば、どうじゃ?」
「えっとそれは……」
「勿論争いを好まない者であれば『愚かな事を』と眉を顰め、中には涙する者も居るであろうが、多くの人間は我関せず自分達に火の粉が飛んで来なければ、先程言ったように生存競争の一環として気にも留めないであろう」
僕達はトレ爺の言葉に何も言い返せなかった。
確かにトレ爺の言う通り、大切な人を殺されたら怒るし、関係無い国の話なら気にも止めないと思う。
けど、これは人間だからであって、人間と魔物の間でも同じ事が言えるのだろうか?
「お主達は勘違いしておる。確かにかつて魔物は人間を憎み永きに渡りお互い戦いに明け暮れた。それは魔王であるアシュタロト様が魔物達を率いていたと言うのも有るのじゃが、その根底に有るのは我ら魔物を創り虐げていた『パンゲア』と言う国に対する憎しみなのじゃよ。パンゲアが滅びた今、この世に暮らす人間達は我らと同じく『パンゲア』から隷属国として虐げられていた国々の末裔達。既に多くの魔物達にはある意味同胞と言える今の人間達対して憎しみはないのじゃ」
「そ、そんな……」
トレ爺の口から語られた言葉に僕達は驚愕した。
始祖の手記によってパンゲアと魔物の関係を知っていた僕でさえ魔物達の人間に対する考えに言葉を失っていると言うのに、『魔物は神の敵』と言う世に広まる一般常識を信じているダンテさん達には信じ難い話だと思う。
術系統的に信仰心に厚い治癒師のマルロフさんにとっては暴挙とも取れる発言じゃないだろうか?
心配になった僕はダンテさん達の様子を窺うと、何故か皆僕の事を真剣な眼差しで見詰めていた。
まるで今の言葉が真実なのかと僕に問い掛けているようだ。
なぜ僕に答えを求めるのかは分からないけど、確かにトレ爺の話が真実かどうかの答えを出せるのは、この場に置いて僕か母さんだけだろう。
だけど今ダンテさん達は僕に答えを求めている。
僕は今の話を肯定しべく力強く頷いた。
するとダンテさん達は『そうだったのか』と納得している。
驚いた事にマルロフさんも首を傾げながらも目を閉じて頷いていた。
あれ? 出会って間もない僕の事をなんでそこまで信じるの?
不思議に思っているとレイミーさんとアンドリューさんが「マーシャルが認めるなら納得」としみじみ呟いている。
それに二人だけじゃない他の皆も……。
「俺のスキルも今の話が事実だと告げてるんだよねぇ」
「邪龍と知り合いでトレントと友達だしな」
「さっきから聞いている話だけでも信じられない事ばかりなんだ。この後何が来ても驚かないぜ」
「神を疑う訳じゃないが、教義とは時に権力者達の手によって歪められる側面はある。俺は俺の目で真実を知りたいと思う」
ダンテさん達がそう言って笑い出した。
今までの概念の根底を覆すような話だよ?
う~ん、ベテラン冒険者になるにはこれくらい思考が柔軟じゃないとダメなのかな。
そう思うと確かに僕は考え過ぎなのかも。
「ほっほっほっ。納得してくれたかの? まぁ長年互いに殺し合った仲な訳じゃし、根底の憎しみは消えても新たな恨みつらみは有るのじゃがの。争いは早々消えぬわい。とは言え、ここまで割り切れるのは儂が自然種に属する魔物だからなのじゃがな」
「自然種?」
トレントであるトレ爺が自然種と言う意味は何となく分かるけど、自然種と言う種族は図鑑にも載っていなかった言葉だ。
魔物達の知識……ひいては『パンゲア』で使われていた言葉なのだろう。
だけど、何故それが『割り切れる』に繋がるのか分からない。
「人間達は魔物が一つの集団だと思っているようじゃが、実は魔物は大きく二つに分類されるのじゃよ。戦闘兵として創り出された鬼や獣、龍と言った類の生物種と、儂の様なトレントを筆頭にそこのドリアードと言った植物、それに土や水と言った通常なら意思を持たない者達を基として創られた自然種と言う風にな」
知らなかった。
いや勿論意識を持たない物を基礎とした魔物達の存在は知っているよ。
そしてそれは魔物学の中でも大いなる謎の一つとされている。
如何にして無機物に意思が宿り魔物となったのか? ってね。
そりゃ今の僕には分かるよ?
ただ単にパンゲアの人達がそう創っただけだって事はね。
僕が知らないと言ったのはごく単純な話。
魔物がそんな分類に別けられていた事。
そしてそれを自覚している事。
ううん、違うな。
そもそもそんな分類の事を知ってたとか知らなかったとかの話じゃない。
逆に知ったとしてどうなのって話だ。
まぁお姉さんはないて喜ぶと思うけどね。
しかし、その分類に意味があるとしたら?
例えば……。
「もしかして、トレントや一部の魔物達が人魔大戦に与さなかった理由と関係有るの?」
「あぁそうじゃ」
やっぱり。
これこそ本当に知らなかった事だと心から言える。
だったら聞きたい事は一つ。
魔物を戦争の道具としか見ていなかったパンゲアがなにを求めて自然種と呼ばれる魔物を創ったのか?
自分達を襲わせないセーフティー機能を仕組んでいた?
いやいや、それだったら全ての魔物に仕組んでいてもおかしくない。
自然種と言う存在を創ったのは何か重要な意味が有ったんだろう。
「教えてトレ爺! 自然種とは何の為に創り出されたと言うの?」
「あぁ教えてやろうとも。最初に断っておくが自然種と言っても世代代謝の激しい末端の者達はアシュタロト様について行った者もおる。しかし儂の様な第一世代、そしてそれに順ずる古い世代の自然種達は己のすべき使命の為に世界に散っていった」
「己の使命? それは一体なんなの?」
「我ら自然種の使命。それは原初の四体の母……いや我らが魔物全ての母たるエターナル様の遺志を継ぎ、マナの枯渇したこの世界を蘇らせることじゃ」
魔物全ての母たるエターナル。
その名を聞いて僕の心臓がトクンと震えた。
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