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第四章 集う娘達
第96話 未来で会いましょう
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「……まーしゃ、それまでばいばい」
憎くて……そして愛しい神の娯楽の被害者に暫しの別れを告げたあと、人々から邪龍と恐れられていたファフニールこと私は、幾度と無く繰り返されて来た転生の儀に身を任せながら薄れ行く意識の中で今代の生についての記憶を噛締めるように思い出していた。
こんな感傷的になるのは今までの転生でも初めてのことだが、これは所謂人々が走馬灯と呼んでいるモノなのだろう。
それは私達原初の四体がこの世界に生まれ出でる時に産みの親であるパンゲア研究者に与えられた人間共の知識の中で最も私から縁遠い言葉だと思っていたモノだ。
死の淵において今生の記憶を思い出すことなど理解出来なかったからに他ならない。
三百年周期で転生を繰り返すと言っても、私にとってはただ古い肉体を捨て新しい肉体に移るだけのことである。
そもそも走馬灯とは死にたくないと言う生にしがみ付く弱き物の後悔がさせる最後の足掻きだと思っていたのだ。
奇しくも走馬灯を見ることになった私は、目の前に流れる今代の記憶について思いに耽る。
あぁ退屈だ。
それが最初に抱いた感想だ。
孵化してからの百年はそれこそ前代までの生をそのままなぞるように繰り広げられていた。
何の喜びも悲しみも感じない。
ただ心の中にはいつまでも燃え尽きぬ怒りの炎が燃え盛るのみだった。
あぁ退屈だ。
もう一度心の中で呟く。
百年を越え二百年に差し掛かっても全く同じ感想しか浮かばない。
なにもそれは今見ている走馬灯に対する感想ではなく、愚かにも自らを神などと勘違いし驕り昂ぶっていたパンゲア共が私をこの世に創り生み出したその日から心の中は人間に対する憎悪と、それと同じ大きさの退屈が蠢いていた。
……あぁ、違う。
そうだ、愚かなパンゲア共の中にも興味深い人間は居た。
ただその者も愚者には変わりない。
なぜなら彼女は魔力液で満たされた四基の巨大な培養槽の中でそれぞれ漂う生まれたばかりの私達を見て、涙を流しながら嬉しそうにこう言ったのだ。
『はじめましてみんな。私の名前は■■■■■よ。あなた達が生まれて来てくれて嬉しいわ』
名はなんと言っただろうか? 幾度の転生を繰り返した影響でその記憶は薄れて今では思い出せない。
残っているのはその者は当時パンゲアが推し進めていた魔物創生プロジェクトの研究主任であったと言うことだけだ。
『あなた達と一緒にお外で遊びたいわ。早く大きくなってね』
自らの手で創り出した魔物に対して話しかけようとする者など居る筈も無い。
彼等にとって私達はただの研究対象の実験動物に過ぎないのだから。
しかし、その者は毎日毎日飽きもせずこうやって私達に話しかけて来る。
自らの楽しかった思い出や、今の仕事の愚痴。
それに先程のようにこれからの未来に夢を馳せる絵空事……。
植え付けられた人間の知識から推測するに、彼女は私達の事をペットか何かだと思っていたのだろう。
今思えばたかが人間の分際で私達をペット扱いするなど許せるものではないのだが、当時の私達は他の人間ならいざ知らず彼女からのそう言った態度は少なからず心地良いものだったと感じていた。
なにしろその感情が、のちに怒りの炎を焚き付ける種火となるのだから……。
それはこの世に生を受け意識が覚醒してから一年が経ったある日のことだった。
小さかった身体も成長し、巨大な培養槽も少しばかり狭く感じるようになって来た頃だ。
私に比べると身体が小さいライアスフェアやアシュタロトが羨ましいと思っていたが、魔物創生プロジェクトも佳境に入り、とうとう実験も最終段階としてあと数日で培養槽から外に出るに至った。
その日も彼女は朝からご機嫌で、やっと触れ合える日が来るのだと私達に熱く語っていたのを憶えている。
『――――なんですって!! 研究所を明け渡せ?? 一体どう言う事なんですか!!』
その日の午後、彼女の叫ぶ声が休眠状態にあった私達の耳に届いた。
突如現れた人間共が彼女に告げた命令に抗議する声のようだ。
早期育成の為に魔道具によって状態制御をされていた私達だったが、彼女の叫びはその様な小賢しい制御など破り私達を覚醒させるに十分なものだった。
『今日から軍が管理するですって? この子達を兵器にするつもりですか!』
その言葉を聞いた時、何を言っているのだろうと思った。
人間が私達を作った理由など元より兵器としての利用価値としか見ていないのは火を見るより明らかだろう。
創られた自分達でさえ、そんな当たり前なことは物心ついた頃から自覚していた程だ。
この女もそれが分かって自分達を産み育てたのではないのか?
『私は反対です! あの子達にそんなことはさせられません』
馬鹿なことを……、自分が創った強大な力を持つ私達を同種に向けて使用するのに今更怖気付いたとでも言うのだろうか?
軍とこの研究所の利権関係は教えられた知識の中に有った。
たかが研究主任如きが軍に立て付くなど愚かしいことだ。
大人しく言うことを聞かねば自分の立場が危ういだろうに。
『私を解任? そ、そんな……』
ほら、言わんこっちゃない。
本当に愚かな女だ、意地を張って立場を追われるとはな。
私は産みの親とも言える彼女に呆れた溜息を吐いた。
……ただ少し寂しくも思う。
なにしろこの培養槽の中は退屈だった。
魔道具によって行動を制限されている所為で自由に身体を動かすことも出来ず、見ることも喋ることも出来ない状態にさせられていたのだ。
しかし聴覚だけは制限させられていなかった為、外部からの刺激と言えば周囲の人間達の会話だけであった。
人間共から垂れ流されるくだらない会話の中、彼女だけは魔物である私達と真正面から向き合い暇を見付けては色々と話掛けてくれていた。
そのひと時だけが、世の理から外れた外法によって創られた私達にとって唯一の心休まる時間だったのだから……。
彼女が居なくなったらまた退屈な日々となるだろう。
まぁ、その退屈も暫しの間だけだ。
どうせ私達はすぐに兵器として戦場に向かうことになるのだから。
その時は思う存分暴れさせてもらおうか。
なにもそれはパンゲアの敵相手にだけではない。
私達を生み出した張本人であるパンゲア共にも世の理を破った天罰としてそれ相応の報いを受けてもらうがな。
『……させません! その子達は兵器なんかじゃありません!』
解任されて失意の元に諦めたのかと思った彼女の声がまた聞こえて来た。
本当に愚かな女だ。
……やめろ。
呆れる感情の奥で彼女の行動を止めようとする別の声が湧きあがってきた。
自分の感情が理解出来ない。
馬鹿な行動を嘲笑っているのかと思ったがそうではなようだ。
与えられた知識の中からその感情を解析したが、どうやらそれは焦りと言うモノらしい。
私は何を焦っているのだろうか?
軍の人間と思われる者達の声が聞こえる。
彼女のことを反逆者だとか用済みだとか喚いていようだ。
やめろっ!!
周囲の人間共の言葉を聞いた途端、心の奥の感情が更に大きくなり叫び声を上げる。
それによって焦りの感情の根源となっていたモノの正体が分かった。
私は彼女のことが心配なのだ。
このままだと彼女は軍の者共に殺されてしまう。
それが分かっているから心が叫んでいるんだ。
『私はあの子達の母親です!! 我が子に人殺しをさせる親が何処に居ると言うんですか!!』
愚かな! 何を言っているんだこいつは!
外法によって創られた魔物である私達を我が子だと? 馬鹿な馬鹿な馬鹿な!
私達のことなどペットだと思っていたのではなかったのか?
酔狂で武装した軍の兵士相手にこんなことを言える人間なんて居ないだろう。
それこそ自分の子供の為でも無い限り……。
そんな……まさか……もしかして本当に彼女は私達のことを……?
ビーーーー!! ビーーーー!!
突然研究所内に警報が鳴り響く。
それと共に人間共が慌てふためく声が聞こえて来た。
それは私達が魔道具の束縛を破ろうとしたからに他ならない。
我が子と言った彼女を助けたいと言う思いが、私達全員の心を動かしたのだ。
『だ、駄目よ。まだその中から出たら駄目。精製まであと数日はその中に居ないと……』
私達の力に魔道具が悲鳴を上げる中、彼女の叫ぶ声が聞こえて来た。
恐らく彼女の言ったことは正しいだろう。
私達の身体の精製は完成に至っていないのは自分でも分かっていた。
今外気に触れると身体の崩壊が始まるかもしれない。
あぁ無限の再生能力を持つライアスフィアや不死鳥であるブラフマーンダ・プラーナは辛うじて生きられるかもしれないが、私やアシュタロトは間違いなく死ぬだろう。
だけど今動かなければ彼女を助けられない。
私達は魔道具の束縛を破る為に力を振り絞る。
しかし、文明の持てる技術の粋を集めたパンゲアの魔道具の束縛は思ったより強固で身体が完成していない私達にはなかなか破られずにいた。
その内身体のあちこちからピシピシとヒビが入るような音が聞こえ出す。
急激な力の上昇に身体がついていけず、崩壊し出したのかもしれない。
『駄目!! みんな止めて!! あなた達このままじゃ死んじゃうわ』
身体の崩壊が始まった私達を見て彼女が培養槽まで駆け寄ってくる音が聞こえた。
やめろ!! 折角私達に注意が向いているのだ。
今の内に逃げろ!! 今私達に近付こうとすると……。
ダーーーンッ! 『うっ……』ドサッ。
研究室に銃声が鳴り響く。
そしてその後、彼女の呻きとその場で崩れ落ちる音が聞こえた。
「グワォォォォォォォォ!!」
「ギャギャギャァァァァ!!」
「ガァァァァァァァァァ!!」
「ギャオォォォォォォォ!!」
これがこの世に生まれ出でて初めて出した私達の声だった。
彼女が死ぬ。
そう思った瞬間、私達の力はパンゲアの魔道具など凌駕しその束縛を断ち切った。
魔道具の影響が消えたことによって封印されていた視覚が機能し始める。
私達は初めての光に滲む視界を必死に堪えて彼女の姿を探したが、それはそれ程時間がかからない内に見付かった。
彼女は私達の培養槽のすぐ側にまるで水溜りのような血の中にうつ伏せで倒れていたのだ。
背中から撃たれたのだろう。
元は白衣だったと思われる上着は血で真っ赤に染まっていた。
培養槽の中からでもその命が消えようとしているのが分かった。
不死鳥ならば傷を癒せるかと思ってブラフマーンダ・プラーナの方を伺ったが、培養槽に施された魔術結界によって阻まれているのかその魔法は彼女にまで届いていないようだ。
その奥にライアスフィアの姿が見えたが、全てを打ち砕くはずのその拳も結界を打ち破れないでいた。
能力自体は知っていても、今まで実際に使ったことなどないのだから仕方無いのかもしれない。
それにいまだ完成に至っていないこの身体では自らの能力を十全に発揮する事が出来ないでいるのだろう。
あと数日後ならばこのようなことは無かっただろうに……。
私達はその悔しさにもう一度吼えた!
身体の崩壊が早まろうと怒りに身を任せ雄々しく全ての物を薙倒すかのように!
私達の身体を崩壊させながらも怒りに狂う姿を見た人間共は恐れおののき一目散に逃げていった。
クソッ! 逃げるな人間共! お前達全員殺してやる!!
『……駄目よ』
研究所を貫きこの国中に轟く程の私達の絶叫の中、確かに彼女の声を聞いた。
私達は弾かれたように叫ぶのをやめて彼女に目を向ける。
するとそこには血の海から這い上がり培養槽の制御装置に身体を預けている彼女の姿があった。
動いては駄目だ! これ以上血が出ると死んでしまう!!
彼女を止める為に言葉を出そうとするが、魔力液の中からでは上手く言葉に出来ず口からガボガボと泡を出すだけ。
後にも先にもこれ程までに自分が無力だと思った時は無かった。
始めてみる彼女の……母の顔。
血に塗れているが、とても綺麗で優しく私達に微笑み掛けていた。
魔力液の中だから分からないだろうが、恐らく私達は涙を流していたと思う。
『私の可愛い娘たち……もう暴れないで。これ以上崩壊が進むとあなた達でも死んじゃうわ』
自らが死の淵に立っているというのに、それでも私達の心配をするというのか。
愚かだ……本当に愚かだ。
私達はもう一度叫ぶ。
『ごめんね。一緒に遊ぶ約束は守れそうにないわ』
そんな約束なんてどうでもいい!!
お母さんさえ生きてくれれば、他は要らない!
『でもあなた達のことは守ってあげるね。……今からあなた達を研究所の地下に封印します。この封印式は私以外ではそうそう解けるものではないわ。それに政府の人達も今すぐあなた達を兵器にしようなんて思わないでしょう。ゴホッゴホッ……少なくとも……あなた達を抑え込む程の強力な思考制御装置なんてものを……完成させるまではね。でも私なら分かる。成体となったあなた達を……ゴホッ……制御することなんて不可能だってことを……ゴホッゴボッ』
お母さんは咳き込み口から血を吐きながらも私達を安心させようと笑顔を浮かべたままだった。
やがてお母さんは培養槽の制御装置に対して魔力を込め封印式を起動させる。
それと共に私達の意識も少しずつ薄れ始めた。
今意識を失うと二度とお母さんに会えなくなると言う思いから必死に抵抗しようとするが、身を包む封印式の力はまるで誰かに抱かれているような心地良さだった。
お母さんが私達を想う温もりそのもののような……。
そんな優しく穏やかで暖かい温もりに包まれて薄れ行く意識の中、私達の耳にお母さんの言葉が聞こえて来た。
『可愛い娘たち……良く聞きなさい。今のあなた達は人間の事が嫌いになっちゃったかもしれないけど、遥か未来私のようにあなた達のことを愛してくれる人がきっと現れるわ。そしてその人はあなた達のように人間によって創られた存在と人間達を繋ぐ架け橋となるの』
嫌いかもじゃなくて人間は大嫌いだ。
お母さん以外の人間が私達を愛するだと?
しかも私達と人間を繋ぐ架け橋になるなんて有り得ない。
お母さんはなんでそんな事を言うのだろうか?
『え? なんでそんな事が分かるのかって? ふふっそれはね、実は神様に聞いたの。私はその為にこの世に生まれたんだって。ただの夢だと思っていたけど今なら分かる。それは本当のことだったんだって』
神だと? 私達を生み出しそして死ぬ……神はお母さんにそんな悲惨な運命を与えたと言うのか!
許せぬ! 許せぬ! 人間だけじゃない、神も滅ぼしてくれる!!
『そんなに怒らないで。私は満足よ。だってあなた達に会えたんですもの。そして死ぬ前にこうやってお話しすることも出来た。一つ心残りがあるとすればあなた達と人間が仲良くなるその時をこの目で見れないことかな……ううん、やっぱり納得出来ないわね。う~ん……よし決めたっ! 私もその時代に転生してやる! 待っててね。絶対会いに行くんだから』
お母さんは死にかけにしては元気良くそう宣言した。
……いや、既にこの時は死んでいたのだろう。
魂となって私達に話しかけているのだ。
だから会話することが出来たのだ。
私達は口々にお母さんの名前を呼ぶ。
あぁ、そうだ彼女の名は……。
『愛しているわ娘達……。また未来で会いましょう……』
走馬灯を見ながら亡き母のことを思い出していた。
それから数百年が過ぎた頃、死神によって封印を解かれた私達は暫く後にそれぞれ袂を分かつことにした。
獣皇は人を殺すことを良しとせず世界の果てに旅立った。
不死鳥は人里離れた山に篭もり母が残した予言の到来を期待しながら気紛れで人を癒しているらしい。
魔人は自らを魔王と称し魔物を率いて母を殺した愚かな人間共を蹂躙することにした。
あぁ、そう言えば今は人間如きに封印されているのだったな。
丁度前回の転生の最中に起こった事なので詳しくは知らぬが、原初の四体である私達を封印する程の力を持つと言う人間の顔を一目見たかったと思う。
魔人と道を違えはしたものの、斯く言う私も母の復讐の為に人間共に裁きの鉄槌を下すことにしたのだが、燃え盛る怒りの裏にはそれと同じくらい母の居ないこの世に対する虚無感に苛まれていた。
あぁ退屈だ……。
幼きあの日に母が聞かせてくれていた色々な話をまた聞きたい。
この思いは一生心から消えないのだろうか?
そう思っていた矢先のことだった。
『ぼく……まーしゃっていうの……キミのなまえは?』
あぁ……やっと……やっと走馬灯がこの時まで回ってきたか。
退屈だった筈の三百年がこの瞬間から光を帯びた。
これがあの少年と娘が初めて出会った時の記憶。
私の記憶ではないのが悔やまれるが、既に私の意識の半分以上は娘と同化し、やがて全てその中に消えるのだから同じことだ。
彼は不思議な少年だった。
私達魔物を怖がるどころか友達と言ってくれた。
それにどうやら精霊達とも友達らしい。
意識が分かれていた時には気付かなかったが、今なら理解出来る。
この少年こそが母が言う私達が出会うべき人間だったのだと。
彼はこの世界に生まれた特異点。
神の思惑が何なのかは知らないが、今までこの世界で起こった全ての因果は彼の元に紡がれるのだと……。
……しかしライアスフェアめ、私より先に彼と契りを交わしているとはな。
してやられたが、なに出会った順番なら私の方が先なのだ。
絆の深さは奴にも負けていないだろう。
そしてふと思う。
母は最期にこう言った……『また未来で会いましょう』……と。
少年と出会うことが出来たこの時代において、もしかしたら母もこの世に転生しているかもしれない。
いや、享楽趣味の神ならそれくらいのわがままを聞いていることだろう。
これからの未来、退屈以外のモノと出会える予感がする。
あぁ……これからが楽しみだ。
怒りと退屈で止まっていた心が動き出すのを感じた。
もうこの意識は消えるけど娘の中でじっくり楽しませてもらおう。
ふふっ、しかし娘か……。
よもや私が母になるなど思わなかったぞ。
神の享楽も捨てた物じゃないな。
お母さんは母となった私を見てなんて言うのだろうな?
……いや、私はもう消えるのだから感想なぞ聞けるわけないか。
少し寂しいがそれでもいい、再び会えると言うだけで十分だ。
本当にこれからが楽しみ……だ……。
やがて私の意識は完全に娘の中に消えた……。
コツ……コツ……パリン。
たまごのからをなかからわったの。
するとまっくらだったたまごのなかにおそとのひかりがはいってきてとってもまぶしかったの。
めがしぱしぱする。
やっとめがなれておそとをのそいたらそこにはだいすきなまーしゃのかおがあったの。
「やぁ久し振り……で良いのかな? ええと僕の名前はマーシャル……ううん、マーシャだよ」
しってる。
わたしはえがおでそういったの。
憎くて……そして愛しい神の娯楽の被害者に暫しの別れを告げたあと、人々から邪龍と恐れられていたファフニールこと私は、幾度と無く繰り返されて来た転生の儀に身を任せながら薄れ行く意識の中で今代の生についての記憶を噛締めるように思い出していた。
こんな感傷的になるのは今までの転生でも初めてのことだが、これは所謂人々が走馬灯と呼んでいるモノなのだろう。
それは私達原初の四体がこの世界に生まれ出でる時に産みの親であるパンゲア研究者に与えられた人間共の知識の中で最も私から縁遠い言葉だと思っていたモノだ。
死の淵において今生の記憶を思い出すことなど理解出来なかったからに他ならない。
三百年周期で転生を繰り返すと言っても、私にとってはただ古い肉体を捨て新しい肉体に移るだけのことである。
そもそも走馬灯とは死にたくないと言う生にしがみ付く弱き物の後悔がさせる最後の足掻きだと思っていたのだ。
奇しくも走馬灯を見ることになった私は、目の前に流れる今代の記憶について思いに耽る。
あぁ退屈だ。
それが最初に抱いた感想だ。
孵化してからの百年はそれこそ前代までの生をそのままなぞるように繰り広げられていた。
何の喜びも悲しみも感じない。
ただ心の中にはいつまでも燃え尽きぬ怒りの炎が燃え盛るのみだった。
あぁ退屈だ。
もう一度心の中で呟く。
百年を越え二百年に差し掛かっても全く同じ感想しか浮かばない。
なにもそれは今見ている走馬灯に対する感想ではなく、愚かにも自らを神などと勘違いし驕り昂ぶっていたパンゲア共が私をこの世に創り生み出したその日から心の中は人間に対する憎悪と、それと同じ大きさの退屈が蠢いていた。
……あぁ、違う。
そうだ、愚かなパンゲア共の中にも興味深い人間は居た。
ただその者も愚者には変わりない。
なぜなら彼女は魔力液で満たされた四基の巨大な培養槽の中でそれぞれ漂う生まれたばかりの私達を見て、涙を流しながら嬉しそうにこう言ったのだ。
『はじめましてみんな。私の名前は■■■■■よ。あなた達が生まれて来てくれて嬉しいわ』
名はなんと言っただろうか? 幾度の転生を繰り返した影響でその記憶は薄れて今では思い出せない。
残っているのはその者は当時パンゲアが推し進めていた魔物創生プロジェクトの研究主任であったと言うことだけだ。
『あなた達と一緒にお外で遊びたいわ。早く大きくなってね』
自らの手で創り出した魔物に対して話しかけようとする者など居る筈も無い。
彼等にとって私達はただの研究対象の実験動物に過ぎないのだから。
しかし、その者は毎日毎日飽きもせずこうやって私達に話しかけて来る。
自らの楽しかった思い出や、今の仕事の愚痴。
それに先程のようにこれからの未来に夢を馳せる絵空事……。
植え付けられた人間の知識から推測するに、彼女は私達の事をペットか何かだと思っていたのだろう。
今思えばたかが人間の分際で私達をペット扱いするなど許せるものではないのだが、当時の私達は他の人間ならいざ知らず彼女からのそう言った態度は少なからず心地良いものだったと感じていた。
なにしろその感情が、のちに怒りの炎を焚き付ける種火となるのだから……。
それはこの世に生を受け意識が覚醒してから一年が経ったある日のことだった。
小さかった身体も成長し、巨大な培養槽も少しばかり狭く感じるようになって来た頃だ。
私に比べると身体が小さいライアスフェアやアシュタロトが羨ましいと思っていたが、魔物創生プロジェクトも佳境に入り、とうとう実験も最終段階としてあと数日で培養槽から外に出るに至った。
その日も彼女は朝からご機嫌で、やっと触れ合える日が来るのだと私達に熱く語っていたのを憶えている。
『――――なんですって!! 研究所を明け渡せ?? 一体どう言う事なんですか!!』
その日の午後、彼女の叫ぶ声が休眠状態にあった私達の耳に届いた。
突如現れた人間共が彼女に告げた命令に抗議する声のようだ。
早期育成の為に魔道具によって状態制御をされていた私達だったが、彼女の叫びはその様な小賢しい制御など破り私達を覚醒させるに十分なものだった。
『今日から軍が管理するですって? この子達を兵器にするつもりですか!』
その言葉を聞いた時、何を言っているのだろうと思った。
人間が私達を作った理由など元より兵器としての利用価値としか見ていないのは火を見るより明らかだろう。
創られた自分達でさえ、そんな当たり前なことは物心ついた頃から自覚していた程だ。
この女もそれが分かって自分達を産み育てたのではないのか?
『私は反対です! あの子達にそんなことはさせられません』
馬鹿なことを……、自分が創った強大な力を持つ私達を同種に向けて使用するのに今更怖気付いたとでも言うのだろうか?
軍とこの研究所の利権関係は教えられた知識の中に有った。
たかが研究主任如きが軍に立て付くなど愚かしいことだ。
大人しく言うことを聞かねば自分の立場が危ういだろうに。
『私を解任? そ、そんな……』
ほら、言わんこっちゃない。
本当に愚かな女だ、意地を張って立場を追われるとはな。
私は産みの親とも言える彼女に呆れた溜息を吐いた。
……ただ少し寂しくも思う。
なにしろこの培養槽の中は退屈だった。
魔道具によって行動を制限されている所為で自由に身体を動かすことも出来ず、見ることも喋ることも出来ない状態にさせられていたのだ。
しかし聴覚だけは制限させられていなかった為、外部からの刺激と言えば周囲の人間達の会話だけであった。
人間共から垂れ流されるくだらない会話の中、彼女だけは魔物である私達と真正面から向き合い暇を見付けては色々と話掛けてくれていた。
そのひと時だけが、世の理から外れた外法によって創られた私達にとって唯一の心休まる時間だったのだから……。
彼女が居なくなったらまた退屈な日々となるだろう。
まぁ、その退屈も暫しの間だけだ。
どうせ私達はすぐに兵器として戦場に向かうことになるのだから。
その時は思う存分暴れさせてもらおうか。
なにもそれはパンゲアの敵相手にだけではない。
私達を生み出した張本人であるパンゲア共にも世の理を破った天罰としてそれ相応の報いを受けてもらうがな。
『……させません! その子達は兵器なんかじゃありません!』
解任されて失意の元に諦めたのかと思った彼女の声がまた聞こえて来た。
本当に愚かな女だ。
……やめろ。
呆れる感情の奥で彼女の行動を止めようとする別の声が湧きあがってきた。
自分の感情が理解出来ない。
馬鹿な行動を嘲笑っているのかと思ったがそうではなようだ。
与えられた知識の中からその感情を解析したが、どうやらそれは焦りと言うモノらしい。
私は何を焦っているのだろうか?
軍の人間と思われる者達の声が聞こえる。
彼女のことを反逆者だとか用済みだとか喚いていようだ。
やめろっ!!
周囲の人間共の言葉を聞いた途端、心の奥の感情が更に大きくなり叫び声を上げる。
それによって焦りの感情の根源となっていたモノの正体が分かった。
私は彼女のことが心配なのだ。
このままだと彼女は軍の者共に殺されてしまう。
それが分かっているから心が叫んでいるんだ。
『私はあの子達の母親です!! 我が子に人殺しをさせる親が何処に居ると言うんですか!!』
愚かな! 何を言っているんだこいつは!
外法によって創られた魔物である私達を我が子だと? 馬鹿な馬鹿な馬鹿な!
私達のことなどペットだと思っていたのではなかったのか?
酔狂で武装した軍の兵士相手にこんなことを言える人間なんて居ないだろう。
それこそ自分の子供の為でも無い限り……。
そんな……まさか……もしかして本当に彼女は私達のことを……?
ビーーーー!! ビーーーー!!
突然研究所内に警報が鳴り響く。
それと共に人間共が慌てふためく声が聞こえて来た。
それは私達が魔道具の束縛を破ろうとしたからに他ならない。
我が子と言った彼女を助けたいと言う思いが、私達全員の心を動かしたのだ。
『だ、駄目よ。まだその中から出たら駄目。精製まであと数日はその中に居ないと……』
私達の力に魔道具が悲鳴を上げる中、彼女の叫ぶ声が聞こえて来た。
恐らく彼女の言ったことは正しいだろう。
私達の身体の精製は完成に至っていないのは自分でも分かっていた。
今外気に触れると身体の崩壊が始まるかもしれない。
あぁ無限の再生能力を持つライアスフィアや不死鳥であるブラフマーンダ・プラーナは辛うじて生きられるかもしれないが、私やアシュタロトは間違いなく死ぬだろう。
だけど今動かなければ彼女を助けられない。
私達は魔道具の束縛を破る為に力を振り絞る。
しかし、文明の持てる技術の粋を集めたパンゲアの魔道具の束縛は思ったより強固で身体が完成していない私達にはなかなか破られずにいた。
その内身体のあちこちからピシピシとヒビが入るような音が聞こえ出す。
急激な力の上昇に身体がついていけず、崩壊し出したのかもしれない。
『駄目!! みんな止めて!! あなた達このままじゃ死んじゃうわ』
身体の崩壊が始まった私達を見て彼女が培養槽まで駆け寄ってくる音が聞こえた。
やめろ!! 折角私達に注意が向いているのだ。
今の内に逃げろ!! 今私達に近付こうとすると……。
ダーーーンッ! 『うっ……』ドサッ。
研究室に銃声が鳴り響く。
そしてその後、彼女の呻きとその場で崩れ落ちる音が聞こえた。
「グワォォォォォォォォ!!」
「ギャギャギャァァァァ!!」
「ガァァァァァァァァァ!!」
「ギャオォォォォォォォ!!」
これがこの世に生まれ出でて初めて出した私達の声だった。
彼女が死ぬ。
そう思った瞬間、私達の力はパンゲアの魔道具など凌駕しその束縛を断ち切った。
魔道具の影響が消えたことによって封印されていた視覚が機能し始める。
私達は初めての光に滲む視界を必死に堪えて彼女の姿を探したが、それはそれ程時間がかからない内に見付かった。
彼女は私達の培養槽のすぐ側にまるで水溜りのような血の中にうつ伏せで倒れていたのだ。
背中から撃たれたのだろう。
元は白衣だったと思われる上着は血で真っ赤に染まっていた。
培養槽の中からでもその命が消えようとしているのが分かった。
不死鳥ならば傷を癒せるかと思ってブラフマーンダ・プラーナの方を伺ったが、培養槽に施された魔術結界によって阻まれているのかその魔法は彼女にまで届いていないようだ。
その奥にライアスフィアの姿が見えたが、全てを打ち砕くはずのその拳も結界を打ち破れないでいた。
能力自体は知っていても、今まで実際に使ったことなどないのだから仕方無いのかもしれない。
それにいまだ完成に至っていないこの身体では自らの能力を十全に発揮する事が出来ないでいるのだろう。
あと数日後ならばこのようなことは無かっただろうに……。
私達はその悔しさにもう一度吼えた!
身体の崩壊が早まろうと怒りに身を任せ雄々しく全ての物を薙倒すかのように!
私達の身体を崩壊させながらも怒りに狂う姿を見た人間共は恐れおののき一目散に逃げていった。
クソッ! 逃げるな人間共! お前達全員殺してやる!!
『……駄目よ』
研究所を貫きこの国中に轟く程の私達の絶叫の中、確かに彼女の声を聞いた。
私達は弾かれたように叫ぶのをやめて彼女に目を向ける。
するとそこには血の海から這い上がり培養槽の制御装置に身体を預けている彼女の姿があった。
動いては駄目だ! これ以上血が出ると死んでしまう!!
彼女を止める為に言葉を出そうとするが、魔力液の中からでは上手く言葉に出来ず口からガボガボと泡を出すだけ。
後にも先にもこれ程までに自分が無力だと思った時は無かった。
始めてみる彼女の……母の顔。
血に塗れているが、とても綺麗で優しく私達に微笑み掛けていた。
魔力液の中だから分からないだろうが、恐らく私達は涙を流していたと思う。
『私の可愛い娘たち……もう暴れないで。これ以上崩壊が進むとあなた達でも死んじゃうわ』
自らが死の淵に立っているというのに、それでも私達の心配をするというのか。
愚かだ……本当に愚かだ。
私達はもう一度叫ぶ。
『ごめんね。一緒に遊ぶ約束は守れそうにないわ』
そんな約束なんてどうでもいい!!
お母さんさえ生きてくれれば、他は要らない!
『でもあなた達のことは守ってあげるね。……今からあなた達を研究所の地下に封印します。この封印式は私以外ではそうそう解けるものではないわ。それに政府の人達も今すぐあなた達を兵器にしようなんて思わないでしょう。ゴホッゴホッ……少なくとも……あなた達を抑え込む程の強力な思考制御装置なんてものを……完成させるまではね。でも私なら分かる。成体となったあなた達を……ゴホッ……制御することなんて不可能だってことを……ゴホッゴボッ』
お母さんは咳き込み口から血を吐きながらも私達を安心させようと笑顔を浮かべたままだった。
やがてお母さんは培養槽の制御装置に対して魔力を込め封印式を起動させる。
それと共に私達の意識も少しずつ薄れ始めた。
今意識を失うと二度とお母さんに会えなくなると言う思いから必死に抵抗しようとするが、身を包む封印式の力はまるで誰かに抱かれているような心地良さだった。
お母さんが私達を想う温もりそのもののような……。
そんな優しく穏やかで暖かい温もりに包まれて薄れ行く意識の中、私達の耳にお母さんの言葉が聞こえて来た。
『可愛い娘たち……良く聞きなさい。今のあなた達は人間の事が嫌いになっちゃったかもしれないけど、遥か未来私のようにあなた達のことを愛してくれる人がきっと現れるわ。そしてその人はあなた達のように人間によって創られた存在と人間達を繋ぐ架け橋となるの』
嫌いかもじゃなくて人間は大嫌いだ。
お母さん以外の人間が私達を愛するだと?
しかも私達と人間を繋ぐ架け橋になるなんて有り得ない。
お母さんはなんでそんな事を言うのだろうか?
『え? なんでそんな事が分かるのかって? ふふっそれはね、実は神様に聞いたの。私はその為にこの世に生まれたんだって。ただの夢だと思っていたけど今なら分かる。それは本当のことだったんだって』
神だと? 私達を生み出しそして死ぬ……神はお母さんにそんな悲惨な運命を与えたと言うのか!
許せぬ! 許せぬ! 人間だけじゃない、神も滅ぼしてくれる!!
『そんなに怒らないで。私は満足よ。だってあなた達に会えたんですもの。そして死ぬ前にこうやってお話しすることも出来た。一つ心残りがあるとすればあなた達と人間が仲良くなるその時をこの目で見れないことかな……ううん、やっぱり納得出来ないわね。う~ん……よし決めたっ! 私もその時代に転生してやる! 待っててね。絶対会いに行くんだから』
お母さんは死にかけにしては元気良くそう宣言した。
……いや、既にこの時は死んでいたのだろう。
魂となって私達に話しかけているのだ。
だから会話することが出来たのだ。
私達は口々にお母さんの名前を呼ぶ。
あぁ、そうだ彼女の名は……。
『愛しているわ娘達……。また未来で会いましょう……』
走馬灯を見ながら亡き母のことを思い出していた。
それから数百年が過ぎた頃、死神によって封印を解かれた私達は暫く後にそれぞれ袂を分かつことにした。
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不死鳥は人里離れた山に篭もり母が残した予言の到来を期待しながら気紛れで人を癒しているらしい。
魔人は自らを魔王と称し魔物を率いて母を殺した愚かな人間共を蹂躙することにした。
あぁ、そう言えば今は人間如きに封印されているのだったな。
丁度前回の転生の最中に起こった事なので詳しくは知らぬが、原初の四体である私達を封印する程の力を持つと言う人間の顔を一目見たかったと思う。
魔人と道を違えはしたものの、斯く言う私も母の復讐の為に人間共に裁きの鉄槌を下すことにしたのだが、燃え盛る怒りの裏にはそれと同じくらい母の居ないこの世に対する虚無感に苛まれていた。
あぁ退屈だ……。
幼きあの日に母が聞かせてくれていた色々な話をまた聞きたい。
この思いは一生心から消えないのだろうか?
そう思っていた矢先のことだった。
『ぼく……まーしゃっていうの……キミのなまえは?』
あぁ……やっと……やっと走馬灯がこの時まで回ってきたか。
退屈だった筈の三百年がこの瞬間から光を帯びた。
これがあの少年と娘が初めて出会った時の記憶。
私の記憶ではないのが悔やまれるが、既に私の意識の半分以上は娘と同化し、やがて全てその中に消えるのだから同じことだ。
彼は不思議な少年だった。
私達魔物を怖がるどころか友達と言ってくれた。
それにどうやら精霊達とも友達らしい。
意識が分かれていた時には気付かなかったが、今なら理解出来る。
この少年こそが母が言う私達が出会うべき人間だったのだと。
彼はこの世界に生まれた特異点。
神の思惑が何なのかは知らないが、今までこの世界で起こった全ての因果は彼の元に紡がれるのだと……。
……しかしライアスフェアめ、私より先に彼と契りを交わしているとはな。
してやられたが、なに出会った順番なら私の方が先なのだ。
絆の深さは奴にも負けていないだろう。
そしてふと思う。
母は最期にこう言った……『また未来で会いましょう』……と。
少年と出会うことが出来たこの時代において、もしかしたら母もこの世に転生しているかもしれない。
いや、享楽趣味の神ならそれくらいのわがままを聞いていることだろう。
これからの未来、退屈以外のモノと出会える予感がする。
あぁ……これからが楽しみだ。
怒りと退屈で止まっていた心が動き出すのを感じた。
もうこの意識は消えるけど娘の中でじっくり楽しませてもらおう。
ふふっ、しかし娘か……。
よもや私が母になるなど思わなかったぞ。
神の享楽も捨てた物じゃないな。
お母さんは母となった私を見てなんて言うのだろうな?
……いや、私はもう消えるのだから感想なぞ聞けるわけないか。
少し寂しいがそれでもいい、再び会えると言うだけで十分だ。
本当にこれからが楽しみ……だ……。
やがて私の意識は完全に娘の中に消えた……。
コツ……コツ……パリン。
たまごのからをなかからわったの。
するとまっくらだったたまごのなかにおそとのひかりがはいってきてとってもまぶしかったの。
めがしぱしぱする。
やっとめがなれておそとをのそいたらそこにはだいすきなまーしゃのかおがあったの。
「やぁ久し振り……で良いのかな? ええと僕の名前はマーシャル……ううん、マーシャだよ」
しってる。
わたしはえがおでそういったの。
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