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第三章 世界を巡る
第93話 冒険者達
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「あれはマーシャルだ! うわっ! 本当に居たぞ? おーいマーシャルーー! 無事かぁーー!」
近付いて来た冒険者達は人影が視認出来る距離まで来ると、驚いた事に僕の名を呼んできた。
なんで相手は僕がここに居る事を知っているんだ?
それも真っ先に無事を確認して来るなんて、まるで僕の身に危険が迫っていた事を知っていたみたいじゃないか。
近付いて来る冒険者の意図が分からないので、何か面倒事が有っても嫌なので母さんの提案に乗ってこの場から去ろうとしたのだけど、一足遅くこんな感じで逃げ遅れてしまった。
どうせ相手は僕らの事を知らないだろうし、この場所で近い将来この世界を脅かす存在との邂逅が有ったなんて分かる筈も無い。
まぁ、母さんは有名人なんで相手は知っているかもしれないけど、それはそれで好都合。
音に釣られてここにやって来たというのなら、母さん発案の魔道具の実験をしていたと言ったら誤魔化せるだろう。
……と思っていたのに、いきなりの僕を名指しだよ。
僕は有名人じゃないし、僕の事を心配してこんな所までやって来る人に叔母さんやサンドさん以外に心当たりは無い。
その二人はメイノースで僕の帰りを待ってるんだから絶対に違う。
そもそもなんで僕がピンチだって事を知っているんだ?
一体誰なんだろうか? ……いや、そう言えばさっきの声はどっかで聞き覚えが……あっ。
「もしかしてダンテさん? それに後ろに居るのもパーティの皆っぽい! でも、なんでこんな所に?」
僕を呼ぶ声と人影のシルエットから思い付いたのは昨日まで一緒に馬車の旅をしていたダンテさんの事だ。
そう思ってよく目を凝らすと、やはりその人影はダンテさんに間違い無く、そして彼の後ろに見える大男の影はおそらくホルツさんだろう。
その二人が先行して全速力でこちらに向かっているようだ。
それに遅れて四人の人影が見えるけど、それも他のパーティーの面々の特徴が見て取れた。
「あらマーシャルの知り合い? ん~~? そう言やその名前聞き覚えがあるわね。 確かダンテって人は家に帰るまでお世話になったって言う冒険者のリーダーの名前だったかしら?」
「うん。Aランクパーティーの冒険者でとっても頼りになる人なんだ。おーーいダンテさーーん!!」
僕が大声でダンテさんの名前を呼ぶと、先頭を走っていた二人は少し速度を緩め、後ろからやって来ていた四人と合流し歩き出した。
もう表情がはっきりと分かる距離だ。
その顔には安堵の笑みが浮かんでいる。
事情が一切分からないけど、一日しか経っていないとは言え一緒に旅をした皆の顔を見られて僕は嬉しくなってきた。
◇◆◇
「良かった無事だったんだな」
「心配したぞマーシャル」
合流したダンテさんとホルツさんがそう言って僕の肩を背中をバンバン叩いてくる。
イタイイタイ。
冒険者の先輩達って皆こうなのかな?
メイノースの先輩達も僕が冒険から帰ると『大丈夫か?』と言いながらバンバン叩いてきたっけ。
まぁこれも愛情の一種なのだとは分かるんだけど……イタイイタイ!
皆さん力が強過ぎるよ。
「ライアちゃーん。おねぇちゃん助けに来たのよ~」
「れーみーおねちゃーん!」
レイミーさんがライアに駆け寄り抱き上げた。
ライアも嬉しそうに抱き付いている。
しかし今助けに来たって言ったよね?
と言う事は爆発音を聞きつけて取りあえずここに向かってきたって訳じゃないのは確かなようだ。
一瞬ダンテさん達は凄く目が良くて遠くから僕の姿を見つけたのかなとも思ったけど、そうじゃなかったみたい。
やっぱり僕達に危機が迫っていた事を知っていたって事なの?
「えっと、助けに来てくれてありがとうございます。けど、なんで僕達がヤバイ状況だったって知っていたんですか?」
「え? あぁ、それなんだが、なぁ?」
「俺達もなんて言うか……その」
「ど、どうしたんです?」
ダンテさん達になぜ僕を助けにここに来た理由を尋ねてみると、皆歯切れの悪い顔をしながらお互いにどう言葉にしようか迷っているって感じに声を掛け合っている。
やがてパーティーの中の一人に皆の視線が集中した。
その一人とはライアを抱き締めたっきり話に入らず、ずっとライアに頬摺りをしていたレイミーさんだ。
そんなレイミーさんだけど、皆の視線を感じたのか顔を上げてる。
すぐさまその視線の意味を理解したのか、口を開き理由を語ってくれた。
「えっと……最近この辺に怪しい奴等が徘徊してるんで特別報酬出すからってガイウースのギルドに依頼されたの。昨日の今日だから本当は街でゆっくりしたかったんだけど、ほら昨日マーシャルが『アルラウネの呼び声』を聞いたって言うじゃない? あれって冒険者達の間ではこの森にビビッた臆病者が聞いたただの幻聴って事になっていたのよ。けど、あの時のマーシャルの様子はそうには見えなかった。だから気になってこの森に来たの」
「えっと……僕臆病者なのは間違いないですよ? 昨日も声聞いてビビッてましたし」
とは言うものの、実際はあの声が幻聴でない事を僕は知っている。
あれは『疎通』と言う始祖が生み出した魔法で、何故か僕が生まれつき持っている能力によって僕の元に届いた誰かの呼び声。
思い起こすとロタとの交戦最中に『大丈夫』と教えてくれたあの声と昨日の呼び声は同じ声だったと思う。
だけどそんな事を知らないレイミーさん達がなぜ僕の様子を気にして依頼を請ける事にしたのだろうか?
しかも旅の疲れも取れていない翌日から森の探索を開始するなんて。
「レイミーが言うにはな、先の旅の間中ずっと風の精霊が俺達の事を見守っていたんだと。それもマーシャル、お前を中心としてな」
「あっ! そうか。レイミーさんは精霊魔術師だから僕の『風の壁』に気付いていたんですね」
今まで精霊魔術師と一緒に行動した事がなかったから気付かれる事なんて気にした事が無かったよ。
しまった~、つい癖で使ってたけど本職を前にして恥ずかしいや。
「え? あれ『風の壁』だったのっ? マジで? う~あたしってば師匠から精霊に愛されし天才だって言われていたけど、上には上が居るわ~。万象紋も刻んでないって言うのに、そこまで風の精霊達に愛されるなんてちょっと妬けちゃう。しかもこんな可愛い従魔まで居るなんて羨ましい~」
そう言ってライアを抱き締めるレイミーさん。
どうやら精霊魔術師の目から見ると僕が『風の壁』だと思っていた物は別物だったようだ。
確かに『精霊の矢』ばかりか『暴風』も無効化するなんておかしいもんね。
これからは人前で使うのは自重しないとすぐに僕の力の事がバレそうだ。
「おいおいレイミー。なに話を脱線してるんだよ。なんでマーシャルの危機が分かったのか話してやれよ」
「え? あぁそうね。森の奥から急激な魔力の高まりを感じた少し前の事よ。なんと風の精霊があたしに話し掛けてきたのよ。精霊魔術師になって数年経つけどこんな事は初めてよ。それどころか熟練精霊魔術師でも精霊の声を聞いた事がある人なんて書物の中でも数える程しかないわ」
話の途中にライアを抱き締める事に夢中になったレイミーさんにシーフのバーディーさんがツッコミを入れると、我に返ったレイミーさんが興奮気味に話してきた。
「声を聞いたってどんな事を言ってきたんです?」
「それがね『マーシャルが襲われているの。お願い助けてあげて』って悲痛な表情で訴えてくるのよ。あたしびっくりよ。精霊がこんな明確な意思を持って訴えかけてくるなんて。これを公表したら精霊魔術師界がひっくり返るわね」
「そうだったんだ……ありがとう皆」
レイミーさんの話でダンテさん達パーティーがなぜ僕を助けに来てくれたのか理解出来た。
そうか、風の精霊達が僕の事を心配して、僕と顔見知りのダンテさん達に助けを求めてくれたんだね。
僕の周囲を飛び回っている風の精霊達に感謝の言葉を掛けた。
するとにっこり笑いながら楽しそうに舞い踊り辺りに心地良い風が流れ出す。
その様子を一人精霊達を見る事が出来るレイミーさんが目を丸くして驚いていた。
「ちょ、ちょっと! マーシャルには精霊が見えてるの? と言うか今普通に意思疎通している会話したよね? そりゃ精霊が助け求めるからには何かあるんだろうけど。え? マーシャルってテイマーだって話なのにデュオクレストだったの?」
「そう言や、マーシャルってあの有名なクロウリー家の御曹司だろ? 父親がデュオだって話なんだからマーシャルも有り得るんじゃないか?」
「だが、こんな若い内に複数の紋を開く者が居たら国中大騒ぎになる筈だ。 全く知られてないなんて事は無いと思うがなぁ?」
あっしまった! ついうっかり精霊達と会話しちゃった。
なんだか皆してどんどん僕の事を勘違いして言ってるぞ?
デュオクレストってのは父さんの持つ称号だ。
二つの紋を奏でる者って意味らしい。
五系統全てを持つ者はクインテットクレストって言うらしいけど、歴史上存在していない。
だって従魔術は三百年前に出来た新系統だし、それ以降その下のカルテットどころかデュオでさえ父さんが実現するまで居なかったんだもの。
あっイモータルがそうなんだっけ? なんだかさっき起きた事が夢だったんじゃないかと思いたくなって頭から消えていたよ。
でもイモータルは五系統魔術の他に神聖魔法まで使えるんだからセクステットって言うのかな? あ~もう訳が分からないよ。
そんな事よりレイミーさんってばさっき精霊魔術界に公表したらとか言ってたし、この力が知られちゃうと雪崩倒しで他の力の事までバレちゃう。
どうにかしなくっちゃ!
「あ、あの皆さんにお願いがあるんだ。今はまだこの力の事を秘密にしておきたいので黙っててもらえないでしょうか? お願いします」
僕はそう言ってダンテさん達に頭を下げた。
冒険者の流儀に『冒険者同士の秘密は守る』と言う言葉がある。
僕はそれに賭ける事にしたんだ。
少しでも僕の事を冒険者の仲間だと思ってくれるのなら、ダンテさん達は僕の秘密を守ってくれると信じたい。
「私からもお願いするわ。あなた達には馬車の道中、息子がお世話になったみたいだし、黙ってくれれば取って置きの魔道具をプレゼントするわよ」
僕が深く頭を下げている横で母さんも同じ様にダンテさん達に軽く頭を下げる。
なんか買収紛いな事言ってるけど、実際効果抜群そうなんだよな。
冒険者の間でも母さんの魔道具は重宝されているみたいだし。
冒険者の流儀で情に訴えた僕としては微妙にモヤる。
「え? 息子? と言う事は貴女がマーシャルの母親? 天才発明家でこの国最強の魔術師としても有名なあの賢者マリア?」
「おぉマリア殿。貴女の初歩魔術であるにも拘らず紋を刻みし高等魔法を凌駕する御技の数々。魔術師として尊敬しておりました。どうか頭を上げて下さい」
「かつて東方の国で名を馳せていた冒険者として大先輩である貴女にこうして頭を下げてもらうなんて恐れ多い話だ。貴女のお願いはしっかり胸に刻みましたので安心して下さいよ」
「そうですってば。短い時間ながらもマーシャルは私達にとって大事な仲間ですから。冒険者として仲間の秘密な絶対に喋りません。それに喋ったら精霊達に嫌われそうだし……だって風の精霊達が腕組しながら喋るな~って顔して私を睨んでるんだもん」
一応有名人な母さんが頭を下げた事でダンテさん達は恐縮して慌てて母さんに頭を上げるように
ん? 今気になる言葉が聞こえたような?
母さんが冒険者とか言ってなかった?
「えっ? 母さん冒険者だったの?」
「えぇ、そうよ。言ってなかったかしら? もう二十年も前の事だけどね。私に相応しい従魔を大陸中捜し歩くのに冒険者の肩書きは便利だったのよ」
「聞いてないよ。確かに従魔を探してウロウロしてたってのは聞いていたけど冒険者だったなんて初耳だ」
「実際に活動していたのはほんの数年だったし、久し振りに実家に帰ってきたらあのバカ親父がティナを虐めてたもんだから冒険者家業から足を洗ったのよ。旅の目的だった頼もしい従魔達もゲットしたしね」
なるほど、自分が冒険者をやっていたから叔母さんにも冒険者になる様に薦めたのか。
しかし二十年前の活躍がいまだに冒険者の間で広まっているなんて知らなかったよ。
うちのギルドで話題にならなかったのって叔母さんの緘口令が関係してたのかな?
「なぁ、マーシャル。ずっと気になってたんだが、それも秘密の一つなんだよな?」
突然ホルツさんが僕の左手を指差して質問してきた。
すると他の皆も自分もそう思っていたって顔をして頷いている。
皆の視線の追って左手に目を向けるとそこには赤い契約紋が煌々と輝いていた。
「あっ! 『覇者の手套』を外したままだった! ごめんなさい! これも秘密でお願いします!」
慌てて足元に転がってる『覇者の手套』を拾い上げて手に嵌めながらお願いした。
ダンテさんはその言葉に赤い契約紋を見た以上に驚いている。
「はっ『覇者の手套』? おいマーシャル! お前って伝説のアーティファクトの継承者だったのか?」
「あれ? てっきり知ってるものかと……」
そうかホフキンスさんから『覇者の手套』の事を聞いたのは馬車の中だったんだっけ。
まだあの頃はダンテさん達を信じていなかったし奪われたりしたらどうしようって黙っていたんだった。
「よく考えたらマーシャルはその手套の継承者だった凶暴龍の甥っ子でもあるんだったな。血が成せる業ってやつなのか? ……はぁ、なんか考えるのが疲れて来たよ」
ダンテさん達が驚くのにも疲れたと言う顔で溜息を吐いている。
その気持ち分かる。
改めて今の自分の状況を顧みると同じ感想しか浮かばないよ。
自分が一番なんでこうなったか分からないんだもん。
「えっと……取りあえず諸々併せて秘密でお願いします」
「あぁ分かってるよ。って言うかこんな事を誰かに話したらこちらの正気を疑い兼ねられんしな」
ダンテさんが苦笑いをしながら額を掻いてそう言った。
正気を疑われるって……そこまで酷いかな?
いや確かに酷いよな。
「はぁ、ここまで知られたら最後まで知ってもらおうかしら。中途半端に知られるより全部話して共犯……ゲフンゲフン。仲間に引き入れて協力してもらう方が良いと思うのよね。それに今ならプレゼントする便利な魔道具をもう一個つけちゃうわよ。未公開の特別品よ」
母さんがいい笑顔でそう言った。
笑顔だけど有無を言わさない迫力がある。
魔道具をプレゼントって聞こえは良いけど、未公開って事は恐らくダンテさん達に試用実験させる気なんだと思う。
「え? 何か聞きたいような、聞きたくないような……」
「聞いたら後戻り出来なくなりそう……いや確実にヤバイ案件に巻き込まれそうだ」
「う~ここで断ったらライアちゃんにスリスリ出来なくなるし……う~ん」
明らかにヤバイ空気を察したダンテさん達が僕の秘密を聞く事に躊躇しているなか、母さんはそんな事はお構い無しとダンテさん達を無視して僕の秘密を喋り出した。
近付いて来た冒険者達は人影が視認出来る距離まで来ると、驚いた事に僕の名を呼んできた。
なんで相手は僕がここに居る事を知っているんだ?
それも真っ先に無事を確認して来るなんて、まるで僕の身に危険が迫っていた事を知っていたみたいじゃないか。
近付いて来る冒険者の意図が分からないので、何か面倒事が有っても嫌なので母さんの提案に乗ってこの場から去ろうとしたのだけど、一足遅くこんな感じで逃げ遅れてしまった。
どうせ相手は僕らの事を知らないだろうし、この場所で近い将来この世界を脅かす存在との邂逅が有ったなんて分かる筈も無い。
まぁ、母さんは有名人なんで相手は知っているかもしれないけど、それはそれで好都合。
音に釣られてここにやって来たというのなら、母さん発案の魔道具の実験をしていたと言ったら誤魔化せるだろう。
……と思っていたのに、いきなりの僕を名指しだよ。
僕は有名人じゃないし、僕の事を心配してこんな所までやって来る人に叔母さんやサンドさん以外に心当たりは無い。
その二人はメイノースで僕の帰りを待ってるんだから絶対に違う。
そもそもなんで僕がピンチだって事を知っているんだ?
一体誰なんだろうか? ……いや、そう言えばさっきの声はどっかで聞き覚えが……あっ。
「もしかしてダンテさん? それに後ろに居るのもパーティの皆っぽい! でも、なんでこんな所に?」
僕を呼ぶ声と人影のシルエットから思い付いたのは昨日まで一緒に馬車の旅をしていたダンテさんの事だ。
そう思ってよく目を凝らすと、やはりその人影はダンテさんに間違い無く、そして彼の後ろに見える大男の影はおそらくホルツさんだろう。
その二人が先行して全速力でこちらに向かっているようだ。
それに遅れて四人の人影が見えるけど、それも他のパーティーの面々の特徴が見て取れた。
「あらマーシャルの知り合い? ん~~? そう言やその名前聞き覚えがあるわね。 確かダンテって人は家に帰るまでお世話になったって言う冒険者のリーダーの名前だったかしら?」
「うん。Aランクパーティーの冒険者でとっても頼りになる人なんだ。おーーいダンテさーーん!!」
僕が大声でダンテさんの名前を呼ぶと、先頭を走っていた二人は少し速度を緩め、後ろからやって来ていた四人と合流し歩き出した。
もう表情がはっきりと分かる距離だ。
その顔には安堵の笑みが浮かんでいる。
事情が一切分からないけど、一日しか経っていないとは言え一緒に旅をした皆の顔を見られて僕は嬉しくなってきた。
◇◆◇
「良かった無事だったんだな」
「心配したぞマーシャル」
合流したダンテさんとホルツさんがそう言って僕の肩を背中をバンバン叩いてくる。
イタイイタイ。
冒険者の先輩達って皆こうなのかな?
メイノースの先輩達も僕が冒険から帰ると『大丈夫か?』と言いながらバンバン叩いてきたっけ。
まぁこれも愛情の一種なのだとは分かるんだけど……イタイイタイ!
皆さん力が強過ぎるよ。
「ライアちゃーん。おねぇちゃん助けに来たのよ~」
「れーみーおねちゃーん!」
レイミーさんがライアに駆け寄り抱き上げた。
ライアも嬉しそうに抱き付いている。
しかし今助けに来たって言ったよね?
と言う事は爆発音を聞きつけて取りあえずここに向かってきたって訳じゃないのは確かなようだ。
一瞬ダンテさん達は凄く目が良くて遠くから僕の姿を見つけたのかなとも思ったけど、そうじゃなかったみたい。
やっぱり僕達に危機が迫っていた事を知っていたって事なの?
「えっと、助けに来てくれてありがとうございます。けど、なんで僕達がヤバイ状況だったって知っていたんですか?」
「え? あぁ、それなんだが、なぁ?」
「俺達もなんて言うか……その」
「ど、どうしたんです?」
ダンテさん達になぜ僕を助けにここに来た理由を尋ねてみると、皆歯切れの悪い顔をしながらお互いにどう言葉にしようか迷っているって感じに声を掛け合っている。
やがてパーティーの中の一人に皆の視線が集中した。
その一人とはライアを抱き締めたっきり話に入らず、ずっとライアに頬摺りをしていたレイミーさんだ。
そんなレイミーさんだけど、皆の視線を感じたのか顔を上げてる。
すぐさまその視線の意味を理解したのか、口を開き理由を語ってくれた。
「えっと……最近この辺に怪しい奴等が徘徊してるんで特別報酬出すからってガイウースのギルドに依頼されたの。昨日の今日だから本当は街でゆっくりしたかったんだけど、ほら昨日マーシャルが『アルラウネの呼び声』を聞いたって言うじゃない? あれって冒険者達の間ではこの森にビビッた臆病者が聞いたただの幻聴って事になっていたのよ。けど、あの時のマーシャルの様子はそうには見えなかった。だから気になってこの森に来たの」
「えっと……僕臆病者なのは間違いないですよ? 昨日も声聞いてビビッてましたし」
とは言うものの、実際はあの声が幻聴でない事を僕は知っている。
あれは『疎通』と言う始祖が生み出した魔法で、何故か僕が生まれつき持っている能力によって僕の元に届いた誰かの呼び声。
思い起こすとロタとの交戦最中に『大丈夫』と教えてくれたあの声と昨日の呼び声は同じ声だったと思う。
だけどそんな事を知らないレイミーさん達がなぜ僕の様子を気にして依頼を請ける事にしたのだろうか?
しかも旅の疲れも取れていない翌日から森の探索を開始するなんて。
「レイミーが言うにはな、先の旅の間中ずっと風の精霊が俺達の事を見守っていたんだと。それもマーシャル、お前を中心としてな」
「あっ! そうか。レイミーさんは精霊魔術師だから僕の『風の壁』に気付いていたんですね」
今まで精霊魔術師と一緒に行動した事がなかったから気付かれる事なんて気にした事が無かったよ。
しまった~、つい癖で使ってたけど本職を前にして恥ずかしいや。
「え? あれ『風の壁』だったのっ? マジで? う~あたしってば師匠から精霊に愛されし天才だって言われていたけど、上には上が居るわ~。万象紋も刻んでないって言うのに、そこまで風の精霊達に愛されるなんてちょっと妬けちゃう。しかもこんな可愛い従魔まで居るなんて羨ましい~」
そう言ってライアを抱き締めるレイミーさん。
どうやら精霊魔術師の目から見ると僕が『風の壁』だと思っていた物は別物だったようだ。
確かに『精霊の矢』ばかりか『暴風』も無効化するなんておかしいもんね。
これからは人前で使うのは自重しないとすぐに僕の力の事がバレそうだ。
「おいおいレイミー。なに話を脱線してるんだよ。なんでマーシャルの危機が分かったのか話してやれよ」
「え? あぁそうね。森の奥から急激な魔力の高まりを感じた少し前の事よ。なんと風の精霊があたしに話し掛けてきたのよ。精霊魔術師になって数年経つけどこんな事は初めてよ。それどころか熟練精霊魔術師でも精霊の声を聞いた事がある人なんて書物の中でも数える程しかないわ」
話の途中にライアを抱き締める事に夢中になったレイミーさんにシーフのバーディーさんがツッコミを入れると、我に返ったレイミーさんが興奮気味に話してきた。
「声を聞いたってどんな事を言ってきたんです?」
「それがね『マーシャルが襲われているの。お願い助けてあげて』って悲痛な表情で訴えてくるのよ。あたしびっくりよ。精霊がこんな明確な意思を持って訴えかけてくるなんて。これを公表したら精霊魔術師界がひっくり返るわね」
「そうだったんだ……ありがとう皆」
レイミーさんの話でダンテさん達パーティーがなぜ僕を助けに来てくれたのか理解出来た。
そうか、風の精霊達が僕の事を心配して、僕と顔見知りのダンテさん達に助けを求めてくれたんだね。
僕の周囲を飛び回っている風の精霊達に感謝の言葉を掛けた。
するとにっこり笑いながら楽しそうに舞い踊り辺りに心地良い風が流れ出す。
その様子を一人精霊達を見る事が出来るレイミーさんが目を丸くして驚いていた。
「ちょ、ちょっと! マーシャルには精霊が見えてるの? と言うか今普通に意思疎通している会話したよね? そりゃ精霊が助け求めるからには何かあるんだろうけど。え? マーシャルってテイマーだって話なのにデュオクレストだったの?」
「そう言や、マーシャルってあの有名なクロウリー家の御曹司だろ? 父親がデュオだって話なんだからマーシャルも有り得るんじゃないか?」
「だが、こんな若い内に複数の紋を開く者が居たら国中大騒ぎになる筈だ。 全く知られてないなんて事は無いと思うがなぁ?」
あっしまった! ついうっかり精霊達と会話しちゃった。
なんだか皆してどんどん僕の事を勘違いして言ってるぞ?
デュオクレストってのは父さんの持つ称号だ。
二つの紋を奏でる者って意味らしい。
五系統全てを持つ者はクインテットクレストって言うらしいけど、歴史上存在していない。
だって従魔術は三百年前に出来た新系統だし、それ以降その下のカルテットどころかデュオでさえ父さんが実現するまで居なかったんだもの。
あっイモータルがそうなんだっけ? なんだかさっき起きた事が夢だったんじゃないかと思いたくなって頭から消えていたよ。
でもイモータルは五系統魔術の他に神聖魔法まで使えるんだからセクステットって言うのかな? あ~もう訳が分からないよ。
そんな事よりレイミーさんってばさっき精霊魔術界に公表したらとか言ってたし、この力が知られちゃうと雪崩倒しで他の力の事までバレちゃう。
どうにかしなくっちゃ!
「あ、あの皆さんにお願いがあるんだ。今はまだこの力の事を秘密にしておきたいので黙っててもらえないでしょうか? お願いします」
僕はそう言ってダンテさん達に頭を下げた。
冒険者の流儀に『冒険者同士の秘密は守る』と言う言葉がある。
僕はそれに賭ける事にしたんだ。
少しでも僕の事を冒険者の仲間だと思ってくれるのなら、ダンテさん達は僕の秘密を守ってくれると信じたい。
「私からもお願いするわ。あなた達には馬車の道中、息子がお世話になったみたいだし、黙ってくれれば取って置きの魔道具をプレゼントするわよ」
僕が深く頭を下げている横で母さんも同じ様にダンテさん達に軽く頭を下げる。
なんか買収紛いな事言ってるけど、実際効果抜群そうなんだよな。
冒険者の間でも母さんの魔道具は重宝されているみたいだし。
冒険者の流儀で情に訴えた僕としては微妙にモヤる。
「え? 息子? と言う事は貴女がマーシャルの母親? 天才発明家でこの国最強の魔術師としても有名なあの賢者マリア?」
「おぉマリア殿。貴女の初歩魔術であるにも拘らず紋を刻みし高等魔法を凌駕する御技の数々。魔術師として尊敬しておりました。どうか頭を上げて下さい」
「かつて東方の国で名を馳せていた冒険者として大先輩である貴女にこうして頭を下げてもらうなんて恐れ多い話だ。貴女のお願いはしっかり胸に刻みましたので安心して下さいよ」
「そうですってば。短い時間ながらもマーシャルは私達にとって大事な仲間ですから。冒険者として仲間の秘密な絶対に喋りません。それに喋ったら精霊達に嫌われそうだし……だって風の精霊達が腕組しながら喋るな~って顔して私を睨んでるんだもん」
一応有名人な母さんが頭を下げた事でダンテさん達は恐縮して慌てて母さんに頭を上げるように
ん? 今気になる言葉が聞こえたような?
母さんが冒険者とか言ってなかった?
「えっ? 母さん冒険者だったの?」
「えぇ、そうよ。言ってなかったかしら? もう二十年も前の事だけどね。私に相応しい従魔を大陸中捜し歩くのに冒険者の肩書きは便利だったのよ」
「聞いてないよ。確かに従魔を探してウロウロしてたってのは聞いていたけど冒険者だったなんて初耳だ」
「実際に活動していたのはほんの数年だったし、久し振りに実家に帰ってきたらあのバカ親父がティナを虐めてたもんだから冒険者家業から足を洗ったのよ。旅の目的だった頼もしい従魔達もゲットしたしね」
なるほど、自分が冒険者をやっていたから叔母さんにも冒険者になる様に薦めたのか。
しかし二十年前の活躍がいまだに冒険者の間で広まっているなんて知らなかったよ。
うちのギルドで話題にならなかったのって叔母さんの緘口令が関係してたのかな?
「なぁ、マーシャル。ずっと気になってたんだが、それも秘密の一つなんだよな?」
突然ホルツさんが僕の左手を指差して質問してきた。
すると他の皆も自分もそう思っていたって顔をして頷いている。
皆の視線の追って左手に目を向けるとそこには赤い契約紋が煌々と輝いていた。
「あっ! 『覇者の手套』を外したままだった! ごめんなさい! これも秘密でお願いします!」
慌てて足元に転がってる『覇者の手套』を拾い上げて手に嵌めながらお願いした。
ダンテさんはその言葉に赤い契約紋を見た以上に驚いている。
「はっ『覇者の手套』? おいマーシャル! お前って伝説のアーティファクトの継承者だったのか?」
「あれ? てっきり知ってるものかと……」
そうかホフキンスさんから『覇者の手套』の事を聞いたのは馬車の中だったんだっけ。
まだあの頃はダンテさん達を信じていなかったし奪われたりしたらどうしようって黙っていたんだった。
「よく考えたらマーシャルはその手套の継承者だった凶暴龍の甥っ子でもあるんだったな。血が成せる業ってやつなのか? ……はぁ、なんか考えるのが疲れて来たよ」
ダンテさん達が驚くのにも疲れたと言う顔で溜息を吐いている。
その気持ち分かる。
改めて今の自分の状況を顧みると同じ感想しか浮かばないよ。
自分が一番なんでこうなったか分からないんだもん。
「えっと……取りあえず諸々併せて秘密でお願いします」
「あぁ分かってるよ。って言うかこんな事を誰かに話したらこちらの正気を疑い兼ねられんしな」
ダンテさんが苦笑いをしながら額を掻いてそう言った。
正気を疑われるって……そこまで酷いかな?
いや確かに酷いよな。
「はぁ、ここまで知られたら最後まで知ってもらおうかしら。中途半端に知られるより全部話して共犯……ゲフンゲフン。仲間に引き入れて協力してもらう方が良いと思うのよね。それに今ならプレゼントする便利な魔道具をもう一個つけちゃうわよ。未公開の特別品よ」
母さんがいい笑顔でそう言った。
笑顔だけど有無を言わさない迫力がある。
魔道具をプレゼントって聞こえは良いけど、未公開って事は恐らくダンテさん達に試用実験させる気なんだと思う。
「え? 何か聞きたいような、聞きたくないような……」
「聞いたら後戻り出来なくなりそう……いや確実にヤバイ案件に巻き込まれそうだ」
「う~ここで断ったらライアちゃんにスリスリ出来なくなるし……う~ん」
明らかにヤバイ空気を察したダンテさん達が僕の秘密を聞く事に躊躇しているなか、母さんはそんな事はお構い無しとダンテさん達を無視して僕の秘密を喋り出した。
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王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
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貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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