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第三章 世界を巡る
第81話 サイス
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「マーシャル。怪我は……ふむ、無い様だな」
僕は一瞬耳を疑った。
聞き間違いじゃないよね。
てっきりすぐ近くに現れた理由は、僕の命を狩ろうと今まさに鎌を振り上げているかと思ったんだけど、その両手は胸の位置に組まれており腰をキュッと前に倒して顔だけを僕に近付けていると言う姿勢だった。
その言葉の通り僕が怪我していないか様子を見ていると言った感じだ。
死神のくせに僕の怪我の有無を確認するなんて、どう言う風の吹き回しなんだ?
「け、怪我は無いけど。な、何? 僕の命を取りに来たんじゃないの?」
僕の言葉を待っていたのか、死神は顔を起こして姿勢を直立不動の姿勢に戻る。
そして無表情のまま首をクイッと傾げた。
その動作は血が通っているとは思えない程無駄が一切無くまるでゴーレムの様な動きに一々ビビってしまう。
「……今のマーシャルからは命を取る気は無い」
死神の人外な動きに驚いている僕をよそに、相変わらず棒読みの声でそう答えた。
死神の吐いた言葉の意味がなかなか理解出来ない。
今の僕から取る気は無い?
『今の』って事は、今日ここに現れた理由は僕の命を狙って来たって訳じゃないって事?
「じゃあ、僕を助けに来てくれたって事なの? そんな……だって僕達は敵じゃないか」
『敵』と言う言葉に死神は眉をピクリと動かせた。
あれ? もしかして地雷を踏んじゃった?
当たり前の事過ぎて『何を分かり切った事を』とか『ならば今ここで斬り捨てようぞ』とか言って斬りかかって来ないよね?
「敵? 今のマーシャルは我の敵ではない」
「う……確かにこんな雑魚じゃ敵にもならないけどさ」
「…………」
ちょっと予想外の言葉が返って来たのに驚いたけど、言われると死神相手に僕なんかが敵と言うのは身の程を知らない発言だった。
始祖でさえ契約出来ずに逃げられたって手記に書かれていたし、『起動』や僕の『魔力マシマシキャッチ』でもどうにかなる代物じゃない可能性が高いと思う。
何より『今の』ってのをこれだけ強調するって事は、今の僕には命を奪う価値が無いって事なのかな。
あれだけ僕の命を狙っていたのに今更価値が無いってどう言う事だろう?
一瞬僕の命を奪っても魔王は蘇らないって事が判明したのかと思ったけど、だとすると『今の』って言葉はおかしい。
もしかしたらだけど、始祖の力を継いだだけの今の僕の力では魔王の封印を解く鍵には成り得ないって事なのか?
あ~……うんうん、きっとそうだよ!
『死神は僕が封印の鍵として利用出来るようになるまで様子を見ている』って事なんじゃないか?
これならこの一連の奇妙な行動の理由がしっくりくる。
多分だけど、その事を死神に伝えたのは恐らく母さんなんだと思う。
伝えたその言葉が嘘か真かは分からないけど、期限付きとは言え僕の命から死神を守る為の協定を申し込んだのかもしれない。
だから僕の危険が迫ったあの状況で、死神が現れるだろう事が分かったんだ。
なんたって僕は大切な魔王の封印を解く鍵だからね。
鍵として利用出来る様になるまでどっかに連れて行かれたり死なれたりなんかしたら大変……まぁ、今のところ全部僕の憶測だけど。
なにより母さんが今も相変わらずニヤニヤと僕達を見ている事がある意味証明と言えるし、僕が殺されないと言う自信が有るんだろう。
なるほどなるほど、安心したよ。
あくまで『今は』と言う前置きは付くけど、それでも一つ心の荷が下りた。
母さんは僕が来たる期限の日までに死神に勝てる力を身に付けると思ってくれているんだな。
その期待には応えたいけどね、近くに居るだけで息が詰まりそうになるこの死神の圧力からすると道程は遠そうだ。
「分かったよ。今日は助けてくれてありがとう」
死神にどんな思惑が有ろうとも助けてくれた事には変わりはない。
だから僕は素直に感謝の気持ちを言葉にして死神に伝えた。
思いっ切りの笑顔を浮かべてね。
多分僕は心の何処かで、死神の中にあの日の女の子が居て欲しいと願っているのかもしれない。
そんな未練がましい僕の想いなんて斬り捨てて『馴れ馴れしい』とか『調子に乗るな』とか言われそうだけど、それは仕方の無い事だ。
だって死神にとって僕なんてただの道具……。
「……? あれ? 死神……さん?」
感謝の言葉に対してマイナスの倍返しで悪口が来るものと思っていたら、死神は何も言わず無表情のまま止まってしまった。
心配になった僕が問い掛けても微動だにしない。
え? なにこれ怖い。
なんで固まっちゃってるの?
要らない会話はする気が無いって事?
これ以上機嫌を損ねられても困るし、何か話題を変えた方が良いのかな?
え、え~と……何の話題が良いかな……あっ!
「ね、ねぇ、そのブローチ付けてくれてるんだね。嬉しいよ」
今も死神の胸に光ってる女性がモチーフのカメオのブローチ。
アクセサリー屋の店主の言葉によると保護の魔法が掛かった良い物らしい。
実際露店売りの品にしちゃ一年間冒険で貯めた僕の貯金が吹っ飛ぶくらい高かった。
そんなプレゼントだけど、てっきり何処かに捨てられてるものだと思っていたのに、まさかまだ持っててくれているなんて思ってもみなかったよ。
そりゃただ単にマジックアイテムだから装備しているだけかもしれないけどさ。
……このブローチを見たからまだ死神の中にサイスが居るのかもしれないと思っちゃったんだ。
正直女の子にアクセサリーをプレゼントしたのは生まれて初めてだったんで、ちゃんと身に着けてくれているなんてちょっと嬉しい。
(勿論女の子にプレゼントしたが初めてなのは妹の所為で、その妹にあげたプレゼントはノーカンだ)
だからこの言葉も本心からだし、嬉しいと言う想いは嘘じゃない。
まぁ、相手は女の子じゃなくて死神だったんだけどね。
「んんぅっ!」
僕が本心から笑い掛けた瞬間、突然死神の方から何かを耐えるように息を吸い込む声が聞こえた。
表情は相変わらず無表情なんだけど、その声がした瞬間今まで固まっていた死神がピクンと跳ねたように見える。
あれ? 急にどうしたの? ピクンとした後もなんだかプルプルと細かく震えているぞ?
心なしか白磁の様に白い肌が少し赤みが増して来た感じがする。
それに無表情な筈なのに眉が少しひそめられ、唇もきゅっと結んでいるように見える。
初めて見せる死神の表情に目が離せない。
何処か目が潤んでいるようにも見えるのは気のせいだろうか?
こ、これって……もしかして……。
もしかして怒っちゃった? それも無表情なのが崩れるくらいに?
や、やばい! 謝らなければっ!
「ご、ごめ……」
「……骸殻」ボソッ
ジャキンッ!!
「ひぃっ!!」
謝ろうとした瞬間の事だ、突然死神が小さく何か呪文を唱えたかと思うと、突然死神の顔が激しい金属音と共に黒い何かに覆われてしまった。
心臓が止まるかと思う程に驚いて僕は悲鳴を上げる。
そりゃ無理ないよ、恐怖の対象の顔がいきなり真っ黒になっちゃうんだもん。
突然の事にパニックになりながらも、死神に何が起こったのか確かめようと目を向けた。
訳の分からないまま死にたくないからね。
「あっ、か、甲冑……?」
全身を見回すと僕の言葉通りどうやら死神は全身を黒い甲冑で覆われているようだった。
完全武装! って言葉が似合いそうな程の完璧なフルプレート。
闇夜の如く漆黒の姿。
恐らくこれが先程の呪文の効果なんだろう。
闇から甲冑を召喚したのか、闇を甲冑と化したのか、それは分からないけど、そもそもそんな魔法の存在なんて僕は知らない。
何より魔力の物質化なんて現代魔法学では否定されてるからね。
これが種族特性によるものなのか良く分からないけど死神って凄いや。
人間ならこんな重装備の甲冑を身に着けようとしたら小一時間掛かっちゃうもんね。
いやいやいや、ショックで思わず現実逃避してしまった。
今の状況でこんな武装をする必要有る?
やっぱり怒らせちゃったんじゃ……。
「おーーい、いつまでもイチャイチャしてないの! 死神ちゃん! そろそろこっちに来て貰えないかしら? 今のあたしでもこいつを一人で抑えるのは結構しんどいのよ」
突然背後から母さんの声が聞こえて来た。
慌てて振り返ると、さっきまでこっちを見てニヤニヤしていた母さんが、唖然としていた筈のブリュンヒルドと対峙しながら魔法で牽制し合っている姿が目に映る。
い、いつの間にそんな事態に?
いや、そうか! 死神は僕の背後で戦いを始めた母さん達が見えたから急に甲冑を纏ったのか。
怒ってなくって良かった良かった……て言うか……。
「イチャイチャなんかしてないから!!」
死神とイチャイチャとだなんてとても恐ろしい事を言い放った母さんに向かって僕は思いっきり叫ぶ。
なんで母さん死神の事をちゃん付けしてるの?
僕が時限付きで見逃されたからって調子乗っていたら殺されちゃうよ?
「何言ってるのっ! こんな事態だと言うのに二人して頬染めて五分くらい見詰め合ってたのよ? そんな長時間放置してたらさすがのこいつも我に返るわよ」
「えっ! そ、そんなに経ってたの? 気付かなかった……」
五分も見詰め合ってただって?
ほんの一瞬の事だと思ったのに……、確かに母さんが言う通り五分も経っちゃうと死神の行動に驚いて唖然としていたブリュンヒルドも我に返っちゃうか。
けど、母さん勘違いしないでよ。
死神は頬染めたなんて恥ずかしい表現とは真反対で、ただ怒っていただけだって……。
「わっ! びっくりした」
そんな事を考えていると僕の横を漆黒の甲冑に身を包んだ死神が何も言わずに通り過ぎて行く。
パッと消えて移動するのかと思っていたから普通に視界に入ってきたのでビックリしたよ。
早く行ってあげてと思うけど、口にするのは怖いので黙っていよう。
一応声を掛けた方がいいのかな?
将来敵になる相手を応援するってのも変な話だけど、少なくとも今は僕を護る為に戦おうとしている死神に何も言わないのも何か違う気がする。
「死神……さん。頑張って!」
「……うん」
えぇっ!? 素直に応援を受けてくれた!?
なんだか気のせいかもしれないけど、死神との距離が少しだけ近付いた……気がする。
始祖は僕に無茶な遺言を幾つか残した。
諦めない為に誰よりも強くなる事、ライアとの絆を大切にする事、そして死神の心を救う事……。
正直愛の力なんて僕には荷が重すぎる。
それに実際は魔王復活を諦めてもらう必要が有るので土台無理な話だ。
だけど、死神の心が救われる……出来ればそんな未来が来て欲しいと僕も思った。
クイクイッ。
「ん?」
色々な理由が絡み合い、死神と敵対しない未来の事を考えていると、誰かが僕のズボンの引っ張っる感触が有った。
なんだろうと思って足元に視線を向けると、それはムッとした顔付きで僕を見上げているライアの姿。
あっ! 死神の乱入の所為ですっかりライアの事を忘れていた。
そう言えば僕と一緒にドリーの操る蔦でこの場に落下していたんだったね。
「どうしたのライア」
何故か不満気に口を尖らせているライア。
訳を聞いても、それには答えず何かをねだるように手を挙げて来た。
これが何を意味するのかは明白だ。
モコの時代から何度も目にした事なんだから。
「ごめん、ごめん。そう言えば抱っこしようとした途中だったね。はい、おいで」
甘えん坊だったモコはこんな感じで抱っこを強請る事が何度も有ったんだ。
それはライアになってからも変わらない。
僕ら二人の初勝利の抱擁を、ロタの不意打ちに始まりその後も色々邪魔され続けてやっとだもん。
そりゃ拗ねても仕方無いや。
僕の言葉に不満げだったライアの顔もパァっと満面の笑みに変わり、飛び付くように僕の腕にしがみ付いて来た。
「ぱぱ~」
抱き上げるとライアは嬉しそうに僕の胸に顔を埋める。
まだ戦闘中だけど母さんと死神が居るなら大丈夫だろう。
ここから二人で母さん達を応援させてもらおうかな。
「あっ、あの? 死神さんどうしたんですか?」
僕らが観戦モード体勢に入った途端、歩いていた死神が振り返った。
フルフェイスの兜なので良くは分からないけど、多分僕らをじっと見ているのだろう。
もしかして観戦モードに怒ってるの?
まぁ傍から見ると年の離れた妹を抱きかかえている兄にしか見えないし、暢気な奴だと腹を立ててもおかしくない。
で、でも抱っこしている方が咄嗟の時に抱えて走る事が出来るから便利なんだよ?
と言う感じに、どう言い訳取り繕って謝ろうかと考えていると、突然兜の面頬が開き、その顔が露わになる。
その目は大きく見開かれ、視線は僕じゃなくてライアに向けられていた。
なにその目? 無表情は何処行ったの?
そう言えばさっきも僕の言葉に目を剥いてたっけ。
やっぱりライアを抱っこしてるのに怒ってるんだな。
早くライアを降ろさないと……ん?
死神に睨まれて脅えているかと思い、降ろす前にライアの様子を伺ってみると、怖がっているどころか何故かニヤッとした笑みを浮かべ、何処か自慢気風に死神を見ていた。
ラ、ライアどうしたの?
いつもの無邪気なライアは何処行っちゃったの?
まるで悪い事を企んでいる時のメアリみたいな顔してるよ。
ハッ! ……もしかしてメアリの奴、二人っきりの間にライアに変な事吹き込んだんじゃないだろうな?
そう言えば昨日自分の事をママだとか教えたとか今朝言ってたし。
ライア駄目だよ、その道は修羅道だ!
僕は焦ってライアと死神を交互に見た。
なんだか目と目の間に火花が散っているようにも見える。
まるでライバル同士の前哨戦のにらみ合いって感じ。
やめてライア! 死神を挑発しないで!! 何より脳内からメアリ成分を消し去って!!
「ちょっと! 早く来てって!」
母さんからの救援を求める声が聞こえる。
チラッと目をやるとブリュンヒルドの周りに魔力が急激に高まっているのが見えた。
もしかして、またあの魔法を使うつもり?
「し、死神さん! お願い母さんを助けて!」
僕は死神に母さんの元に行ってもらうようにお願いした。
すると死神は僕をチラッと見て少し溜息をつく。
なんだかその仕草は普通の女の子に見えなくも無い。
だけど、僕のお願いは聞いてくれたようで死神は母さんの方に振り返る。
「ライアスフィア。今はその姿に免じてそこに甘んじる事を許してやる。しかし、いずれ我も……」
「は? え? 死神さん? それはどう言う意味……?」
歩きながらそんな事を言った死神に僕はその言葉の意味を尋ねた。
すると死神は一度立ち止まりこちらを振り返る。
「マーシャル……サイスだ」
「え? あ、あの……」
「これからは我の事はサイスと呼べ」
それだけを言うと、呆然としている僕を残し……サイスは戦場に向かって歩き出した。
僕は一瞬耳を疑った。
聞き間違いじゃないよね。
てっきりすぐ近くに現れた理由は、僕の命を狩ろうと今まさに鎌を振り上げているかと思ったんだけど、その両手は胸の位置に組まれており腰をキュッと前に倒して顔だけを僕に近付けていると言う姿勢だった。
その言葉の通り僕が怪我していないか様子を見ていると言った感じだ。
死神のくせに僕の怪我の有無を確認するなんて、どう言う風の吹き回しなんだ?
「け、怪我は無いけど。な、何? 僕の命を取りに来たんじゃないの?」
僕の言葉を待っていたのか、死神は顔を起こして姿勢を直立不動の姿勢に戻る。
そして無表情のまま首をクイッと傾げた。
その動作は血が通っているとは思えない程無駄が一切無くまるでゴーレムの様な動きに一々ビビってしまう。
「……今のマーシャルからは命を取る気は無い」
死神の人外な動きに驚いている僕をよそに、相変わらず棒読みの声でそう答えた。
死神の吐いた言葉の意味がなかなか理解出来ない。
今の僕から取る気は無い?
『今の』って事は、今日ここに現れた理由は僕の命を狙って来たって訳じゃないって事?
「じゃあ、僕を助けに来てくれたって事なの? そんな……だって僕達は敵じゃないか」
『敵』と言う言葉に死神は眉をピクリと動かせた。
あれ? もしかして地雷を踏んじゃった?
当たり前の事過ぎて『何を分かり切った事を』とか『ならば今ここで斬り捨てようぞ』とか言って斬りかかって来ないよね?
「敵? 今のマーシャルは我の敵ではない」
「う……確かにこんな雑魚じゃ敵にもならないけどさ」
「…………」
ちょっと予想外の言葉が返って来たのに驚いたけど、言われると死神相手に僕なんかが敵と言うのは身の程を知らない発言だった。
始祖でさえ契約出来ずに逃げられたって手記に書かれていたし、『起動』や僕の『魔力マシマシキャッチ』でもどうにかなる代物じゃない可能性が高いと思う。
何より『今の』ってのをこれだけ強調するって事は、今の僕には命を奪う価値が無いって事なのかな。
あれだけ僕の命を狙っていたのに今更価値が無いってどう言う事だろう?
一瞬僕の命を奪っても魔王は蘇らないって事が判明したのかと思ったけど、だとすると『今の』って言葉はおかしい。
もしかしたらだけど、始祖の力を継いだだけの今の僕の力では魔王の封印を解く鍵には成り得ないって事なのか?
あ~……うんうん、きっとそうだよ!
『死神は僕が封印の鍵として利用出来るようになるまで様子を見ている』って事なんじゃないか?
これならこの一連の奇妙な行動の理由がしっくりくる。
多分だけど、その事を死神に伝えたのは恐らく母さんなんだと思う。
伝えたその言葉が嘘か真かは分からないけど、期限付きとは言え僕の命から死神を守る為の協定を申し込んだのかもしれない。
だから僕の危険が迫ったあの状況で、死神が現れるだろう事が分かったんだ。
なんたって僕は大切な魔王の封印を解く鍵だからね。
鍵として利用出来る様になるまでどっかに連れて行かれたり死なれたりなんかしたら大変……まぁ、今のところ全部僕の憶測だけど。
なにより母さんが今も相変わらずニヤニヤと僕達を見ている事がある意味証明と言えるし、僕が殺されないと言う自信が有るんだろう。
なるほどなるほど、安心したよ。
あくまで『今は』と言う前置きは付くけど、それでも一つ心の荷が下りた。
母さんは僕が来たる期限の日までに死神に勝てる力を身に付けると思ってくれているんだな。
その期待には応えたいけどね、近くに居るだけで息が詰まりそうになるこの死神の圧力からすると道程は遠そうだ。
「分かったよ。今日は助けてくれてありがとう」
死神にどんな思惑が有ろうとも助けてくれた事には変わりはない。
だから僕は素直に感謝の気持ちを言葉にして死神に伝えた。
思いっ切りの笑顔を浮かべてね。
多分僕は心の何処かで、死神の中にあの日の女の子が居て欲しいと願っているのかもしれない。
そんな未練がましい僕の想いなんて斬り捨てて『馴れ馴れしい』とか『調子に乗るな』とか言われそうだけど、それは仕方の無い事だ。
だって死神にとって僕なんてただの道具……。
「……? あれ? 死神……さん?」
感謝の言葉に対してマイナスの倍返しで悪口が来るものと思っていたら、死神は何も言わず無表情のまま止まってしまった。
心配になった僕が問い掛けても微動だにしない。
え? なにこれ怖い。
なんで固まっちゃってるの?
要らない会話はする気が無いって事?
これ以上機嫌を損ねられても困るし、何か話題を変えた方が良いのかな?
え、え~と……何の話題が良いかな……あっ!
「ね、ねぇ、そのブローチ付けてくれてるんだね。嬉しいよ」
今も死神の胸に光ってる女性がモチーフのカメオのブローチ。
アクセサリー屋の店主の言葉によると保護の魔法が掛かった良い物らしい。
実際露店売りの品にしちゃ一年間冒険で貯めた僕の貯金が吹っ飛ぶくらい高かった。
そんなプレゼントだけど、てっきり何処かに捨てられてるものだと思っていたのに、まさかまだ持っててくれているなんて思ってもみなかったよ。
そりゃただ単にマジックアイテムだから装備しているだけかもしれないけどさ。
……このブローチを見たからまだ死神の中にサイスが居るのかもしれないと思っちゃったんだ。
正直女の子にアクセサリーをプレゼントしたのは生まれて初めてだったんで、ちゃんと身に着けてくれているなんてちょっと嬉しい。
(勿論女の子にプレゼントしたが初めてなのは妹の所為で、その妹にあげたプレゼントはノーカンだ)
だからこの言葉も本心からだし、嬉しいと言う想いは嘘じゃない。
まぁ、相手は女の子じゃなくて死神だったんだけどね。
「んんぅっ!」
僕が本心から笑い掛けた瞬間、突然死神の方から何かを耐えるように息を吸い込む声が聞こえた。
表情は相変わらず無表情なんだけど、その声がした瞬間今まで固まっていた死神がピクンと跳ねたように見える。
あれ? 急にどうしたの? ピクンとした後もなんだかプルプルと細かく震えているぞ?
心なしか白磁の様に白い肌が少し赤みが増して来た感じがする。
それに無表情な筈なのに眉が少しひそめられ、唇もきゅっと結んでいるように見える。
初めて見せる死神の表情に目が離せない。
何処か目が潤んでいるようにも見えるのは気のせいだろうか?
こ、これって……もしかして……。
もしかして怒っちゃった? それも無表情なのが崩れるくらいに?
や、やばい! 謝らなければっ!
「ご、ごめ……」
「……骸殻」ボソッ
ジャキンッ!!
「ひぃっ!!」
謝ろうとした瞬間の事だ、突然死神が小さく何か呪文を唱えたかと思うと、突然死神の顔が激しい金属音と共に黒い何かに覆われてしまった。
心臓が止まるかと思う程に驚いて僕は悲鳴を上げる。
そりゃ無理ないよ、恐怖の対象の顔がいきなり真っ黒になっちゃうんだもん。
突然の事にパニックになりながらも、死神に何が起こったのか確かめようと目を向けた。
訳の分からないまま死にたくないからね。
「あっ、か、甲冑……?」
全身を見回すと僕の言葉通りどうやら死神は全身を黒い甲冑で覆われているようだった。
完全武装! って言葉が似合いそうな程の完璧なフルプレート。
闇夜の如く漆黒の姿。
恐らくこれが先程の呪文の効果なんだろう。
闇から甲冑を召喚したのか、闇を甲冑と化したのか、それは分からないけど、そもそもそんな魔法の存在なんて僕は知らない。
何より魔力の物質化なんて現代魔法学では否定されてるからね。
これが種族特性によるものなのか良く分からないけど死神って凄いや。
人間ならこんな重装備の甲冑を身に着けようとしたら小一時間掛かっちゃうもんね。
いやいやいや、ショックで思わず現実逃避してしまった。
今の状況でこんな武装をする必要有る?
やっぱり怒らせちゃったんじゃ……。
「おーーい、いつまでもイチャイチャしてないの! 死神ちゃん! そろそろこっちに来て貰えないかしら? 今のあたしでもこいつを一人で抑えるのは結構しんどいのよ」
突然背後から母さんの声が聞こえて来た。
慌てて振り返ると、さっきまでこっちを見てニヤニヤしていた母さんが、唖然としていた筈のブリュンヒルドと対峙しながら魔法で牽制し合っている姿が目に映る。
い、いつの間にそんな事態に?
いや、そうか! 死神は僕の背後で戦いを始めた母さん達が見えたから急に甲冑を纏ったのか。
怒ってなくって良かった良かった……て言うか……。
「イチャイチャなんかしてないから!!」
死神とイチャイチャとだなんてとても恐ろしい事を言い放った母さんに向かって僕は思いっきり叫ぶ。
なんで母さん死神の事をちゃん付けしてるの?
僕が時限付きで見逃されたからって調子乗っていたら殺されちゃうよ?
「何言ってるのっ! こんな事態だと言うのに二人して頬染めて五分くらい見詰め合ってたのよ? そんな長時間放置してたらさすがのこいつも我に返るわよ」
「えっ! そ、そんなに経ってたの? 気付かなかった……」
五分も見詰め合ってただって?
ほんの一瞬の事だと思ったのに……、確かに母さんが言う通り五分も経っちゃうと死神の行動に驚いて唖然としていたブリュンヒルドも我に返っちゃうか。
けど、母さん勘違いしないでよ。
死神は頬染めたなんて恥ずかしい表現とは真反対で、ただ怒っていただけだって……。
「わっ! びっくりした」
そんな事を考えていると僕の横を漆黒の甲冑に身を包んだ死神が何も言わずに通り過ぎて行く。
パッと消えて移動するのかと思っていたから普通に視界に入ってきたのでビックリしたよ。
早く行ってあげてと思うけど、口にするのは怖いので黙っていよう。
一応声を掛けた方がいいのかな?
将来敵になる相手を応援するってのも変な話だけど、少なくとも今は僕を護る為に戦おうとしている死神に何も言わないのも何か違う気がする。
「死神……さん。頑張って!」
「……うん」
えぇっ!? 素直に応援を受けてくれた!?
なんだか気のせいかもしれないけど、死神との距離が少しだけ近付いた……気がする。
始祖は僕に無茶な遺言を幾つか残した。
諦めない為に誰よりも強くなる事、ライアとの絆を大切にする事、そして死神の心を救う事……。
正直愛の力なんて僕には荷が重すぎる。
それに実際は魔王復活を諦めてもらう必要が有るので土台無理な話だ。
だけど、死神の心が救われる……出来ればそんな未来が来て欲しいと僕も思った。
クイクイッ。
「ん?」
色々な理由が絡み合い、死神と敵対しない未来の事を考えていると、誰かが僕のズボンの引っ張っる感触が有った。
なんだろうと思って足元に視線を向けると、それはムッとした顔付きで僕を見上げているライアの姿。
あっ! 死神の乱入の所為ですっかりライアの事を忘れていた。
そう言えば僕と一緒にドリーの操る蔦でこの場に落下していたんだったね。
「どうしたのライア」
何故か不満気に口を尖らせているライア。
訳を聞いても、それには答えず何かをねだるように手を挙げて来た。
これが何を意味するのかは明白だ。
モコの時代から何度も目にした事なんだから。
「ごめん、ごめん。そう言えば抱っこしようとした途中だったね。はい、おいで」
甘えん坊だったモコはこんな感じで抱っこを強請る事が何度も有ったんだ。
それはライアになってからも変わらない。
僕ら二人の初勝利の抱擁を、ロタの不意打ちに始まりその後も色々邪魔され続けてやっとだもん。
そりゃ拗ねても仕方無いや。
僕の言葉に不満げだったライアの顔もパァっと満面の笑みに変わり、飛び付くように僕の腕にしがみ付いて来た。
「ぱぱ~」
抱き上げるとライアは嬉しそうに僕の胸に顔を埋める。
まだ戦闘中だけど母さんと死神が居るなら大丈夫だろう。
ここから二人で母さん達を応援させてもらおうかな。
「あっ、あの? 死神さんどうしたんですか?」
僕らが観戦モード体勢に入った途端、歩いていた死神が振り返った。
フルフェイスの兜なので良くは分からないけど、多分僕らをじっと見ているのだろう。
もしかして観戦モードに怒ってるの?
まぁ傍から見ると年の離れた妹を抱きかかえている兄にしか見えないし、暢気な奴だと腹を立ててもおかしくない。
で、でも抱っこしている方が咄嗟の時に抱えて走る事が出来るから便利なんだよ?
と言う感じに、どう言い訳取り繕って謝ろうかと考えていると、突然兜の面頬が開き、その顔が露わになる。
その目は大きく見開かれ、視線は僕じゃなくてライアに向けられていた。
なにその目? 無表情は何処行ったの?
そう言えばさっきも僕の言葉に目を剥いてたっけ。
やっぱりライアを抱っこしてるのに怒ってるんだな。
早くライアを降ろさないと……ん?
死神に睨まれて脅えているかと思い、降ろす前にライアの様子を伺ってみると、怖がっているどころか何故かニヤッとした笑みを浮かべ、何処か自慢気風に死神を見ていた。
ラ、ライアどうしたの?
いつもの無邪気なライアは何処行っちゃったの?
まるで悪い事を企んでいる時のメアリみたいな顔してるよ。
ハッ! ……もしかしてメアリの奴、二人っきりの間にライアに変な事吹き込んだんじゃないだろうな?
そう言えば昨日自分の事をママだとか教えたとか今朝言ってたし。
ライア駄目だよ、その道は修羅道だ!
僕は焦ってライアと死神を交互に見た。
なんだか目と目の間に火花が散っているようにも見える。
まるでライバル同士の前哨戦のにらみ合いって感じ。
やめてライア! 死神を挑発しないで!! 何より脳内からメアリ成分を消し去って!!
「ちょっと! 早く来てって!」
母さんからの救援を求める声が聞こえる。
チラッと目をやるとブリュンヒルドの周りに魔力が急激に高まっているのが見えた。
もしかして、またあの魔法を使うつもり?
「し、死神さん! お願い母さんを助けて!」
僕は死神に母さんの元に行ってもらうようにお願いした。
すると死神は僕をチラッと見て少し溜息をつく。
なんだかその仕草は普通の女の子に見えなくも無い。
だけど、僕のお願いは聞いてくれたようで死神は母さんの方に振り返る。
「ライアスフィア。今はその姿に免じてそこに甘んじる事を許してやる。しかし、いずれ我も……」
「は? え? 死神さん? それはどう言う意味……?」
歩きながらそんな事を言った死神に僕はその言葉の意味を尋ねた。
すると死神は一度立ち止まりこちらを振り返る。
「マーシャル……サイスだ」
「え? あ、あの……」
「これからは我の事はサイスと呼べ」
それだけを言うと、呆然としている僕を残し……サイスは戦場に向かって歩き出した。
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新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
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おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。
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ドラゴンでもチートなのに、竜神になってさらにチートに! (修正中)
お寿司食べたい
ファンタジー
前の世界で死んだ時の記憶を持って生まれてきた者、今世では『ドラゴン』に生まれ変わり、フレーシャという名を与えられた。
両親(竜)はチートだが、しかし、俺は両親(竜)よりもチートだった……
これは、ドラゴンというただでさえチートな主人公がもっとチートになっていく物語。
文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
『小説家になろう』と『ノベルバ』と『ツギクル』にも投稿してます。
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ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
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あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
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とある元令嬢の選択
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第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
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基本的には、ほのぼのです。
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