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第三章 世界を巡る
第67話 遺言
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「ライアスフィア!!」
僕は大声でライアの真名を叫んだ。
これは叔母さんが教えてくれた解呪の方法。
あの時もこれで光が消えてくれた。
だから今回も早く消えてくれ~。
僕の願いが届いたのかライアの魔石から放たれている光は急速にその輝度を落としていく。
「ん……やっと消えた……か。そうだ! ライア! 大丈夫?」
光が治まったので僕は慌ててライアに声を掛けた。
そうなんだ、前回はこのまま暫くの間昏睡状態に陥ったんだよ。
そりゃそうだ、身体を透過する程の強い光を魔石が放ってるんだもん。
大量の魔力を使うはず。
そう考えると魔石自体に悪影響って無いんだろうか?
魔石の魔力が磨り減ったりとかしてやがて死んじゃうとかないよね?
『起動』の詠唱文を口にしただけでこれじゃ、デメリットが分からない以上ライアの前でこの魔法を使うのは禁止にしないとダメかもしれない。
「う、うみゅ? いまのにゃに? なんかばぁ~ってなったお」
「あっライア、良かった今回は意識が有るんだね」
「ん? ん? うん。ぱぱどしたの?」
光が消えたライアは前回とは違い意識が有るみたい。
さすがに何が起こったのかまでの記憶は無いようで、僕の言葉の意味が分からずにびっくりした顔で辺りをキョロキョロと見回している。
僕はまだ痛い目を擦りながらも、驚いているライアを落ち着かせる為に頭を撫でる事にした。
「……ふぅ、まだ目がチカチカするよ」
「マーシャル? 今のは……?」
強い光を間近で見てしまった所為で、いまだ少しばかり白くぼやけた視界に母さんの茫然としている顔が見えた。
あっ怒ってる? いきなり目潰し喰らったようなもんだものね。
そりゃ怒るか。
「ごめん母さん。僕が間違ってたよ。始祖がこれだけのページを割いて解説したのは、やっぱり今みたいな暴走を防ぐ為だったんだね。口にするだけでこれじゃ、呪文の事を迂闊に喋れないな」
僕は素直に母さんと巻き添えを喰らった形の父さんに頭を下げた。
始祖が手記の中で制御出来ない力についての危険性を訴えていたのに、僕ってば調子に乗ってその事について何も理解していなかったよ。
「マーシャルその事なんだが、違うんだよ」
「父さん? 違うってどう言う事?」
頭を下げる僕に父さんがそう声を掛けて来た。
僕は頭を上げて父さんを見上げる。
すると父さんは何故か分からないけど苦笑していた。
そしておもむろに手をライアに向けて突き出し……。
「『神の造りし器成る物、我の求めに応じその真名を唱えよ』……」
「え? 父さん? ちょっと待って! また目が……ん? あれ? 光ら……ない」
慌てて目を瞑ったけど、いつまで経ってもライアは光らなかった。
もしかしてこれが制御って事なのかな。
凄いや父さんは制御が出来るんだ。
「父さんは『起動』を制御出来るんだね。どうやってやるの? やっぱり始祖の解説を読んだ方が良いのかな?」
事も無げに『起動』を制御して見せた父さんに、僕は興奮気味に尋ねると父さんは頬をポリポリと書きながら申し訳なさそうに笑っていた。
「だから違うんだよ、マーシャル。制御したんじゃない。父さんにはこの魔法は使えないんだ」
「え? なんで? 僕なんて口にするだけで発動するんだよ? それに叔母さんだって今では父さんでも使えるんじゃないかなって言ってたんだけど」
父さんは僕の言葉に首を振った。
その行動の意味を説明するかのように母さんが口を開く。
「あのねマーシャル。使えないのが普通なのよ。あたしだって詠唱しただけじゃ発動なんてしないわ。そうじゃなきゃあんな中二病臭い短い文章だもの、永い年月の中で誰かが思春期の思い付きで口にする事が無かったなんて思えないじゃない?」
「いや、思えないじゃない? とか言われても意味が分からないんだけど……、どう言う事なの?」
「何度も言うようだけど、この呪文は恐ろしく高等なもので同時に多数の術式を構築しないと発動しないんだよ。言葉を口にすれば使える筈もない代物さ。それに私の場合はほら、二つの紋を常時開通している訳だから特にね。この魔法を唱えるだけのリソースを割く事は難しいんだ」
父さんが言う言葉の意味が理解出来ない僕は首を傾げる。
え~と、取りあえず『起動』について整理すると、まずこの呪文は始祖が20ページに渡る解説を理解する必要が有ると。
そして呪文を唱えながら身体の中に魔法陣を描き、更に脳内で七つのセフィロトの構築を行うだけじゃなく、なんか他にも術式が幾つか書かれてた。
父さんの言葉からすると、それらを全部同時に行わないと発動しない呪文って事みたい。
…………。
わぁ~母さんってば、そんなとんでもない事をしながらこの呪文を唱えてるなんて凄いなぁ~。
…………って僕もだよ!!
けど僕そんなややこしい事してないよ? 頭空っぽのまま口にしているだけなんだけど……?
「それよりも、マーシャル? あなた身体の方は大丈夫なの?」
何故か母さんがとても心配そうな顔をして身体の事を聞いて来た。
僕と母さん達との『起動』に関する認識の違いに戸惑っている僕には、そんな心配される覚えが無いので首を捻る。
今のところ身体は何ともないし、そもそも前回の時だってなんともなかった。
「大丈夫だけど……? あっライアの事か。ライアは何処か痛い所とかない?」
「あたちはげんき~!!」
膝の上のライアはその言葉通り元気いっぱいに答える。
良かった、前回の時は最初死んだように寝ちゃってるもんだからこのまま起きないかって心配したんだよね。
今回昏睡しなかったのは二回目だから耐性でも付いたからかな?
相変わらず発動中の記憶はないみたいだけど。
「違う違う! 対象の魔物が大丈夫なのはあたしの研究結果でも分かっているわ。そうじゃなくてあなたの魔力の事よ。『起動』の魔法ってとんでもなく魔力を消費するんだから。術式の複数並列展開は伊達じゃないし、あたしでさえ魔力全体の四分の一を必要とする程の魔法よ? マーシャルの魔力も一般の魔術師と比べたら多いのは確かだけど、それでも今のあたしの六割程度。一気に半分もの魔力を消費したりなんかしたら魔力欠乏症になってもおかしくないわ」
「……いや、特に魔力は減ってないみたいだけど?」
感覚的には全く魔力は減った感じはないと思う。
精神的にも疲労感は無いし、肉体的にもちょっと目の痛みが残ってるくらい。
念の為、一度目を瞑り精神を自分の体内に集中させる事にする。
これによって自身の魔力残量が詳しく分かるんだ。
自分的には何ともないけど、どうやら『起動』は高度で特殊な魔法の様だし、普通の魔力消費感覚とは異なる可能性が有るからね。
大丈夫だと思っているのは本人だけと勘違いしている場合、いざと言う時に命取りな事態に陥るかもしれない。
確認する事に越した事はないよ。
え~と……僕の魔力はどれだけ残ってるのかな。
僕は意識を集中させて魔力残量を測る。
それによると確かに多少は消費はしているものの、母さんが言った様な半分近く魔力が減っているなんて事は無く、その消費分にしてもこうして残量の確認している間に自然回復によって満タンに戻った。
どう言う事なんだ? もしかして残された暗号からの解読では、不完全で非効率な方法でしか『起動』を唱えられない様になっているのだろうか?
けれど、天才である母さんならそんな非効率な魔法を改良して燃費の良い魔法に創り直す事だって可能だと思うんだけど……?
なんで僕は呪文を口にするだけで発動するんだろう……? あっ!
「そうか! やっぱりこれのお陰だよ。この赤い契約紋! 僕が始祖の後継者だから唱えるだけで発動するんじゃないかな?」
そうだよ、これが答えだと思う。
複雑な処理は始祖の力が勝手にやってくれるからこそ僕が意識しなくても『起動』が発動するんじゃないのかな。
と思い付いたので自信満々に言ったのだけど、母さんは目を瞑って首を振った。
「いえ、それは無いわ。恐らくマーシャルはその紋が無くとも使えたんだと思う」
「な、なんで? なんでそう言い切れるんだよ」
「なんでって、そりゃ当たり前でしょう。だって始祖は自分の力を継いだからその魔法を教えようとしてるのよ? 継いだだけで使えるならわざわざ沢山ページ取って懇切丁寧に解説しないでしょう?」
「そ、それは確かに……」
母さんの尤もな言葉に納得するしかなかった。
継いだだけでそんな高等魔法を使える様になるのなら、威厳ある文体を一ページ目で飽きたと言って地に戻った始祖の性格的に、見てるだけでも面倒臭そうな魔法の使用法を長々と書くなんてせずに、最初から『プレゼントだよ~』とか恩着せがましく書いてくると思う。
その考えをまるで肯定するかの様に使用法の最後のページは次のように書かれている。
『どう? 難しいでしょ? え? こんなん絶対無理やわ~って?
こら! そんな情け無い事言わない!
仮にもあたしに出来なかった絆魔法を完成させたんだし、後継者を名乗るなら最低でもこれくらいは出来てもらわないとダメ。
まぁ、無理って言いたくなる気持ちも分かる。
キミが言う通り確かに難しい……あたしでも習得には骨が折れたんだもの。
折角面倒臭がりのあたしが出来るだけ分かりやすく書いたんだし、じっくりと読んで頑張って習得して強く……そう誰よりも強くなって欲しいんだ』
……無理とは別に言ってないんだけど。
けど、始祖がここまで書いたんだ。
多分習得は真の後継者となる為の修行でもあるらしい。
そして、次の言葉で魔法の解説は締められていた。
『これはあたしの遺言だと思って受け取って欲しい。
キミには決してあたしみたいに途中で諦める道なんて選んで欲しくないんだ。
これから先、キミの進む道の前にどんな困難が待ち構えていようとも、スフィアと……ううんキミが絆を結ぶ皆と笑顔で乗り越えていけるようになってくれたま……いえ、下さい』
絆魔法を完成させただけじゃ足りない。
何が起ころうと繋いだ絆の手を離さないで良いように。
僕に自分が持っている全てを託そうとしてくれているんだろう。
そもそも始祖は僕の事を絆魔法を完成させたと書いてるけど、正直言うとあの時訳も分からず頭に浮かんで来た呪文を唱えただけなんだし、完成させたなんて自覚は全然無い。
『起動』にしてもそれは同じだ。
母さんも始祖も唱えるには高度で複雑な魔法詠唱をしないとダメだと言っている。
そんな事は、少なくとも今の僕の実力で実現出来るとは思えない。
なんで発動したのかチンプンカンプンだ。
ただ呪文を口にしただけで、どうしてライアが……?
ん? ライア?
「あっ! そうだ! 今まで『起動』を掛けた相手と言えばライアだけなんだよ。しかも絆魔法でこの姿になってからね。もしかしたらさあ、絆を結んだ相手には呪文を聞いただけで掛かるのかもしれないよ」
「う~ん? その説は信憑性が有るんだけど……どうやら違うと思うのよねぇ」
ナイスアイデアだと思ったのになぜか母さんは即座に否定した。
何でだろうと思って母さんの方を見ると母さんがスカートの中央に付いてる異次元ポケットとか言う魔道具を指差している。
魔道灯の灯りの方が明るくて一瞬何の事か分からなかったけど、どうやらポケットの口から微かに青い光が漏れ出していた。
「母さん、なんでポケットが光ってるの? 何か光る物でも入れてたの?」
「それが違うのよ。ちょっと待ってね……よいしょ、え~と」
母さんが異次元ポケットの中に手を入れてガサゴソと何かを探している。
外から見ると半円状のポケットで大きさも手の平全部は入らない感じなんだけど、目の前の母さんは現在そのポケットに右手を肘まで突っ込んでる。
一体あの中はどうなっているんだろうか?
ただあれも世に知られると混乱を起こす代物らしいし、これ以上深く考えるのを止めよう。
「あっ! 有った。パーパパー…」
「あっ母さん。そのファンファーレ要らないからね」
「あん、またそんなつれない事を言う。マーシャルったら意地悪ね。でも良いわ。はい、これよ」
前回に続き今回も例のファンファーレを途中で止められた母さんは口を尖らせて拗ねながらも異次元ポケットから何かを取り出して見せて来た。
それはポケットから漏れていたのと同じ青い色の光放つ丸い物体。
光っていると言ってもポケットから漏れていたのよりはマシ程度のとても淡い感じで、相変わらず魔導灯の明かるさに負けてるくらいだ。
新しい魔道具かなと思って目を凝らしてみると、どうやら半透明のゼリーみたいな物質の中に浮いている菱形の何かが光っているっぽい。
「それなんなの? 母さんの発明品?」
「違う違う、よく見てみて。これは昨日のスライムよ。余程昨日の事が怖かったのか水槽に入れられるのを嫌がってね。仕方無いからポケットの中に突っ込んでいたのよ」
「えぇ! それ昨日のスライムなの? なんで光ってるんだ? ……あっ、もしかして」
淡い光過ぎて気付くのが遅れたけど、叔母さんが言っていたじゃないか。
魔石の魔力の強さによって輝度が変わるって。
特にこのスライムは砕けた魔石から無理矢理母さんが蘇生させた事も有って特に光が弱いんだろう。
なぜ光っているのかは明白なんだけど、だとすると僕の理論は母さんの言う通り否定されるって事だ。
しかし、スライムなんかをそのままポケットの中に突っ込んだりして中身は大丈夫なんだろうか?
「そうね、これは間違いなくあなたが唱えた『起動』の影響よ」
「じゃあ絆魔法は関係無いって事なのか」
「それは一概には言えないけど、問題はそこじゃないの。実は異次元ポケットは所有者契約以外の存在からの排他処理を施してるのよ。この中に収納されている物体は外部からの影響を受けない、簡単に言うとこの中に入っている物体は時間が止まってると言えるの。それなのにマーシャルの『起動』はそれを突き破り中に居たスライムに影響を与えた。理論的にこれは有り得ない事なのよ」
今さらっと凄い事を母さんが言ったけど、それは聞かなかった事にしよう。
それより僕の『起動』に凄く驚いてるようだけど、それこそ『思てたのと違う~』ってやつじゃないのかな?
「有り得ないって言っても、その理論が間違っているとかじゃないの? 理論って言うからには実際には実験してないんでしょ?」
「まぁそれはそうなんだけど、有り得ない事は二つあるのよ。まず一つ『起動』の実験はしていないけど、他の魔法による環境試験は実施済みでね、水、火、雷、氷。あらゆる外部影響を受けなかった。生物実験は小型のマウスのみだけど、その理由は本物と違ってポケットの直径を超える物を入れられないから仕方が無いわ」
「本物……? それはレプリカって事?」
なんだ母さんオリジナルの発明じゃないんだな。
だけど僕の知識ではそんなポケットの存在を知らないし、もし先史魔法文明やそれより昔の超文明の遺産だったとしてもそんなに凄い物なら噂にくらいなってもおかしくない。
母さんは何処で本物ってのを知ったんだろう?
「え? あ、あぁ、その事は今置いておきましょう。それよりもう一つの有り得ない事の方を話すわね。この『起動』の魔法なんだけど、実は対象指定型の魔法なのよ。しかも単体のみのね。本来は呪文の詠唱を聞いたからと言って指定対象外の魔物には従魔でさえ影響は出ないものなのよ」
「ハァ? 僕はライアを指定なんかしてないよ。それにスライムが居るなんて知らなかったし……。もしかしたら始祖の残した本来の『起動』ってのは複数選択式なのかもしれない。ちょっと待って、手記を見てみるよ」
『起動』が単体指定型の魔法って母さんは言うけど、母さんが解読したのは所詮弟子が隠した暗号によるもの。
オリジナルである始祖が残した『起動』の使用法の中には複数選択の方法が載っているかもしれない。
どっちにしろなぜ僕がそんな魔法を使えるのかは分からないけど。
暫く『起動』についての記述を詳しく読んだんだけど、それによると母さんの言う通り確かに対象指定型の魔法の様だ。
だけど複数指定の方法は一応ながら書かれていた。
しかしそこには『取扱注意! 単純に対象分だけ構築時間がバカみたいに増えるし、一度に二体以上掛けても眩しくてうるさいだけから意味が無い。何より一瞬で魔力枯渇して最悪死んじゃうから気を付けてね』と書かれていた。
使えるけど大変なだけで無駄な魔法と言う事らしい。
そもそも複数指定方法と言いながらほぼ同じ術式を指定数分構築しないとダメなので、始祖が言う通りこんな物を幾つも唱えたら魔力がでれだけ有っても足りないよ。
弟子である僕のご先祖も暗号に入れなかったのも納得出来る。
術式の構築関係無く呪文を口にするだけで発動する僕が異常と言う事だろう。
「本当だ。複数指定は現実的じゃないみたい。最悪死ぬとか怖いこと書かれてるよ」
「でしょう? あたしだって複数式の可能性は考えたけど、前提段階で無理が有り過ぎたから諦めたの」
「う~ん、じゃあなんで発動したんだろう。書いているような呪文の構築なんて全くしてないのに……?」
「いいや、そんな事は無いよ。付与魔術師でもある僕の目にはマーシャルが呪文を口にした途端、幾つもの術式構築が発動した事を確認している。だからこそ驚いたんだよ。それにその分の魔力消費もしていた筈さ」
事実が分かる度に余計に訳が分からなくなってくる現状に僕が首を捻っていると父さんが嬉しそうに言ってきた。
父さんが言うように、付与魔術には発動した術式を視る魔法がある。
誰でも使える初歩魔法ではなく、継承紋を宿す付与魔術師にしか使えない高等魔法の部類に入るので僕には使えないからどう視えるのかは分からないんだけどね。
と言う事は、僕は無意識の内に複雑な術式を構築していたって事?
僕って……一体何なんだ?
僕は大声でライアの真名を叫んだ。
これは叔母さんが教えてくれた解呪の方法。
あの時もこれで光が消えてくれた。
だから今回も早く消えてくれ~。
僕の願いが届いたのかライアの魔石から放たれている光は急速にその輝度を落としていく。
「ん……やっと消えた……か。そうだ! ライア! 大丈夫?」
光が治まったので僕は慌ててライアに声を掛けた。
そうなんだ、前回はこのまま暫くの間昏睡状態に陥ったんだよ。
そりゃそうだ、身体を透過する程の強い光を魔石が放ってるんだもん。
大量の魔力を使うはず。
そう考えると魔石自体に悪影響って無いんだろうか?
魔石の魔力が磨り減ったりとかしてやがて死んじゃうとかないよね?
『起動』の詠唱文を口にしただけでこれじゃ、デメリットが分からない以上ライアの前でこの魔法を使うのは禁止にしないとダメかもしれない。
「う、うみゅ? いまのにゃに? なんかばぁ~ってなったお」
「あっライア、良かった今回は意識が有るんだね」
「ん? ん? うん。ぱぱどしたの?」
光が消えたライアは前回とは違い意識が有るみたい。
さすがに何が起こったのかまでの記憶は無いようで、僕の言葉の意味が分からずにびっくりした顔で辺りをキョロキョロと見回している。
僕はまだ痛い目を擦りながらも、驚いているライアを落ち着かせる為に頭を撫でる事にした。
「……ふぅ、まだ目がチカチカするよ」
「マーシャル? 今のは……?」
強い光を間近で見てしまった所為で、いまだ少しばかり白くぼやけた視界に母さんの茫然としている顔が見えた。
あっ怒ってる? いきなり目潰し喰らったようなもんだものね。
そりゃ怒るか。
「ごめん母さん。僕が間違ってたよ。始祖がこれだけのページを割いて解説したのは、やっぱり今みたいな暴走を防ぐ為だったんだね。口にするだけでこれじゃ、呪文の事を迂闊に喋れないな」
僕は素直に母さんと巻き添えを喰らった形の父さんに頭を下げた。
始祖が手記の中で制御出来ない力についての危険性を訴えていたのに、僕ってば調子に乗ってその事について何も理解していなかったよ。
「マーシャルその事なんだが、違うんだよ」
「父さん? 違うってどう言う事?」
頭を下げる僕に父さんがそう声を掛けて来た。
僕は頭を上げて父さんを見上げる。
すると父さんは何故か分からないけど苦笑していた。
そしておもむろに手をライアに向けて突き出し……。
「『神の造りし器成る物、我の求めに応じその真名を唱えよ』……」
「え? 父さん? ちょっと待って! また目が……ん? あれ? 光ら……ない」
慌てて目を瞑ったけど、いつまで経ってもライアは光らなかった。
もしかしてこれが制御って事なのかな。
凄いや父さんは制御が出来るんだ。
「父さんは『起動』を制御出来るんだね。どうやってやるの? やっぱり始祖の解説を読んだ方が良いのかな?」
事も無げに『起動』を制御して見せた父さんに、僕は興奮気味に尋ねると父さんは頬をポリポリと書きながら申し訳なさそうに笑っていた。
「だから違うんだよ、マーシャル。制御したんじゃない。父さんにはこの魔法は使えないんだ」
「え? なんで? 僕なんて口にするだけで発動するんだよ? それに叔母さんだって今では父さんでも使えるんじゃないかなって言ってたんだけど」
父さんは僕の言葉に首を振った。
その行動の意味を説明するかのように母さんが口を開く。
「あのねマーシャル。使えないのが普通なのよ。あたしだって詠唱しただけじゃ発動なんてしないわ。そうじゃなきゃあんな中二病臭い短い文章だもの、永い年月の中で誰かが思春期の思い付きで口にする事が無かったなんて思えないじゃない?」
「いや、思えないじゃない? とか言われても意味が分からないんだけど……、どう言う事なの?」
「何度も言うようだけど、この呪文は恐ろしく高等なもので同時に多数の術式を構築しないと発動しないんだよ。言葉を口にすれば使える筈もない代物さ。それに私の場合はほら、二つの紋を常時開通している訳だから特にね。この魔法を唱えるだけのリソースを割く事は難しいんだ」
父さんが言う言葉の意味が理解出来ない僕は首を傾げる。
え~と、取りあえず『起動』について整理すると、まずこの呪文は始祖が20ページに渡る解説を理解する必要が有ると。
そして呪文を唱えながら身体の中に魔法陣を描き、更に脳内で七つのセフィロトの構築を行うだけじゃなく、なんか他にも術式が幾つか書かれてた。
父さんの言葉からすると、それらを全部同時に行わないと発動しない呪文って事みたい。
…………。
わぁ~母さんってば、そんなとんでもない事をしながらこの呪文を唱えてるなんて凄いなぁ~。
…………って僕もだよ!!
けど僕そんなややこしい事してないよ? 頭空っぽのまま口にしているだけなんだけど……?
「それよりも、マーシャル? あなた身体の方は大丈夫なの?」
何故か母さんがとても心配そうな顔をして身体の事を聞いて来た。
僕と母さん達との『起動』に関する認識の違いに戸惑っている僕には、そんな心配される覚えが無いので首を捻る。
今のところ身体は何ともないし、そもそも前回の時だってなんともなかった。
「大丈夫だけど……? あっライアの事か。ライアは何処か痛い所とかない?」
「あたちはげんき~!!」
膝の上のライアはその言葉通り元気いっぱいに答える。
良かった、前回の時は最初死んだように寝ちゃってるもんだからこのまま起きないかって心配したんだよね。
今回昏睡しなかったのは二回目だから耐性でも付いたからかな?
相変わらず発動中の記憶はないみたいだけど。
「違う違う! 対象の魔物が大丈夫なのはあたしの研究結果でも分かっているわ。そうじゃなくてあなたの魔力の事よ。『起動』の魔法ってとんでもなく魔力を消費するんだから。術式の複数並列展開は伊達じゃないし、あたしでさえ魔力全体の四分の一を必要とする程の魔法よ? マーシャルの魔力も一般の魔術師と比べたら多いのは確かだけど、それでも今のあたしの六割程度。一気に半分もの魔力を消費したりなんかしたら魔力欠乏症になってもおかしくないわ」
「……いや、特に魔力は減ってないみたいだけど?」
感覚的には全く魔力は減った感じはないと思う。
精神的にも疲労感は無いし、肉体的にもちょっと目の痛みが残ってるくらい。
念の為、一度目を瞑り精神を自分の体内に集中させる事にする。
これによって自身の魔力残量が詳しく分かるんだ。
自分的には何ともないけど、どうやら『起動』は高度で特殊な魔法の様だし、普通の魔力消費感覚とは異なる可能性が有るからね。
大丈夫だと思っているのは本人だけと勘違いしている場合、いざと言う時に命取りな事態に陥るかもしれない。
確認する事に越した事はないよ。
え~と……僕の魔力はどれだけ残ってるのかな。
僕は意識を集中させて魔力残量を測る。
それによると確かに多少は消費はしているものの、母さんが言った様な半分近く魔力が減っているなんて事は無く、その消費分にしてもこうして残量の確認している間に自然回復によって満タンに戻った。
どう言う事なんだ? もしかして残された暗号からの解読では、不完全で非効率な方法でしか『起動』を唱えられない様になっているのだろうか?
けれど、天才である母さんならそんな非効率な魔法を改良して燃費の良い魔法に創り直す事だって可能だと思うんだけど……?
なんで僕は呪文を口にするだけで発動するんだろう……? あっ!
「そうか! やっぱりこれのお陰だよ。この赤い契約紋! 僕が始祖の後継者だから唱えるだけで発動するんじゃないかな?」
そうだよ、これが答えだと思う。
複雑な処理は始祖の力が勝手にやってくれるからこそ僕が意識しなくても『起動』が発動するんじゃないのかな。
と思い付いたので自信満々に言ったのだけど、母さんは目を瞑って首を振った。
「いえ、それは無いわ。恐らくマーシャルはその紋が無くとも使えたんだと思う」
「な、なんで? なんでそう言い切れるんだよ」
「なんでって、そりゃ当たり前でしょう。だって始祖は自分の力を継いだからその魔法を教えようとしてるのよ? 継いだだけで使えるならわざわざ沢山ページ取って懇切丁寧に解説しないでしょう?」
「そ、それは確かに……」
母さんの尤もな言葉に納得するしかなかった。
継いだだけでそんな高等魔法を使える様になるのなら、威厳ある文体を一ページ目で飽きたと言って地に戻った始祖の性格的に、見てるだけでも面倒臭そうな魔法の使用法を長々と書くなんてせずに、最初から『プレゼントだよ~』とか恩着せがましく書いてくると思う。
その考えをまるで肯定するかの様に使用法の最後のページは次のように書かれている。
『どう? 難しいでしょ? え? こんなん絶対無理やわ~って?
こら! そんな情け無い事言わない!
仮にもあたしに出来なかった絆魔法を完成させたんだし、後継者を名乗るなら最低でもこれくらいは出来てもらわないとダメ。
まぁ、無理って言いたくなる気持ちも分かる。
キミが言う通り確かに難しい……あたしでも習得には骨が折れたんだもの。
折角面倒臭がりのあたしが出来るだけ分かりやすく書いたんだし、じっくりと読んで頑張って習得して強く……そう誰よりも強くなって欲しいんだ』
……無理とは別に言ってないんだけど。
けど、始祖がここまで書いたんだ。
多分習得は真の後継者となる為の修行でもあるらしい。
そして、次の言葉で魔法の解説は締められていた。
『これはあたしの遺言だと思って受け取って欲しい。
キミには決してあたしみたいに途中で諦める道なんて選んで欲しくないんだ。
これから先、キミの進む道の前にどんな困難が待ち構えていようとも、スフィアと……ううんキミが絆を結ぶ皆と笑顔で乗り越えていけるようになってくれたま……いえ、下さい』
絆魔法を完成させただけじゃ足りない。
何が起ころうと繋いだ絆の手を離さないで良いように。
僕に自分が持っている全てを託そうとしてくれているんだろう。
そもそも始祖は僕の事を絆魔法を完成させたと書いてるけど、正直言うとあの時訳も分からず頭に浮かんで来た呪文を唱えただけなんだし、完成させたなんて自覚は全然無い。
『起動』にしてもそれは同じだ。
母さんも始祖も唱えるには高度で複雑な魔法詠唱をしないとダメだと言っている。
そんな事は、少なくとも今の僕の実力で実現出来るとは思えない。
なんで発動したのかチンプンカンプンだ。
ただ呪文を口にしただけで、どうしてライアが……?
ん? ライア?
「あっ! そうだ! 今まで『起動』を掛けた相手と言えばライアだけなんだよ。しかも絆魔法でこの姿になってからね。もしかしたらさあ、絆を結んだ相手には呪文を聞いただけで掛かるのかもしれないよ」
「う~ん? その説は信憑性が有るんだけど……どうやら違うと思うのよねぇ」
ナイスアイデアだと思ったのになぜか母さんは即座に否定した。
何でだろうと思って母さんの方を見ると母さんがスカートの中央に付いてる異次元ポケットとか言う魔道具を指差している。
魔道灯の灯りの方が明るくて一瞬何の事か分からなかったけど、どうやらポケットの口から微かに青い光が漏れ出していた。
「母さん、なんでポケットが光ってるの? 何か光る物でも入れてたの?」
「それが違うのよ。ちょっと待ってね……よいしょ、え~と」
母さんが異次元ポケットの中に手を入れてガサゴソと何かを探している。
外から見ると半円状のポケットで大きさも手の平全部は入らない感じなんだけど、目の前の母さんは現在そのポケットに右手を肘まで突っ込んでる。
一体あの中はどうなっているんだろうか?
ただあれも世に知られると混乱を起こす代物らしいし、これ以上深く考えるのを止めよう。
「あっ! 有った。パーパパー…」
「あっ母さん。そのファンファーレ要らないからね」
「あん、またそんなつれない事を言う。マーシャルったら意地悪ね。でも良いわ。はい、これよ」
前回に続き今回も例のファンファーレを途中で止められた母さんは口を尖らせて拗ねながらも異次元ポケットから何かを取り出して見せて来た。
それはポケットから漏れていたのと同じ青い色の光放つ丸い物体。
光っていると言ってもポケットから漏れていたのよりはマシ程度のとても淡い感じで、相変わらず魔導灯の明かるさに負けてるくらいだ。
新しい魔道具かなと思って目を凝らしてみると、どうやら半透明のゼリーみたいな物質の中に浮いている菱形の何かが光っているっぽい。
「それなんなの? 母さんの発明品?」
「違う違う、よく見てみて。これは昨日のスライムよ。余程昨日の事が怖かったのか水槽に入れられるのを嫌がってね。仕方無いからポケットの中に突っ込んでいたのよ」
「えぇ! それ昨日のスライムなの? なんで光ってるんだ? ……あっ、もしかして」
淡い光過ぎて気付くのが遅れたけど、叔母さんが言っていたじゃないか。
魔石の魔力の強さによって輝度が変わるって。
特にこのスライムは砕けた魔石から無理矢理母さんが蘇生させた事も有って特に光が弱いんだろう。
なぜ光っているのかは明白なんだけど、だとすると僕の理論は母さんの言う通り否定されるって事だ。
しかし、スライムなんかをそのままポケットの中に突っ込んだりして中身は大丈夫なんだろうか?
「そうね、これは間違いなくあなたが唱えた『起動』の影響よ」
「じゃあ絆魔法は関係無いって事なのか」
「それは一概には言えないけど、問題はそこじゃないの。実は異次元ポケットは所有者契約以外の存在からの排他処理を施してるのよ。この中に収納されている物体は外部からの影響を受けない、簡単に言うとこの中に入っている物体は時間が止まってると言えるの。それなのにマーシャルの『起動』はそれを突き破り中に居たスライムに影響を与えた。理論的にこれは有り得ない事なのよ」
今さらっと凄い事を母さんが言ったけど、それは聞かなかった事にしよう。
それより僕の『起動』に凄く驚いてるようだけど、それこそ『思てたのと違う~』ってやつじゃないのかな?
「有り得ないって言っても、その理論が間違っているとかじゃないの? 理論って言うからには実際には実験してないんでしょ?」
「まぁそれはそうなんだけど、有り得ない事は二つあるのよ。まず一つ『起動』の実験はしていないけど、他の魔法による環境試験は実施済みでね、水、火、雷、氷。あらゆる外部影響を受けなかった。生物実験は小型のマウスのみだけど、その理由は本物と違ってポケットの直径を超える物を入れられないから仕方が無いわ」
「本物……? それはレプリカって事?」
なんだ母さんオリジナルの発明じゃないんだな。
だけど僕の知識ではそんなポケットの存在を知らないし、もし先史魔法文明やそれより昔の超文明の遺産だったとしてもそんなに凄い物なら噂にくらいなってもおかしくない。
母さんは何処で本物ってのを知ったんだろう?
「え? あ、あぁ、その事は今置いておきましょう。それよりもう一つの有り得ない事の方を話すわね。この『起動』の魔法なんだけど、実は対象指定型の魔法なのよ。しかも単体のみのね。本来は呪文の詠唱を聞いたからと言って指定対象外の魔物には従魔でさえ影響は出ないものなのよ」
「ハァ? 僕はライアを指定なんかしてないよ。それにスライムが居るなんて知らなかったし……。もしかしたら始祖の残した本来の『起動』ってのは複数選択式なのかもしれない。ちょっと待って、手記を見てみるよ」
『起動』が単体指定型の魔法って母さんは言うけど、母さんが解読したのは所詮弟子が隠した暗号によるもの。
オリジナルである始祖が残した『起動』の使用法の中には複数選択の方法が載っているかもしれない。
どっちにしろなぜ僕がそんな魔法を使えるのかは分からないけど。
暫く『起動』についての記述を詳しく読んだんだけど、それによると母さんの言う通り確かに対象指定型の魔法の様だ。
だけど複数指定の方法は一応ながら書かれていた。
しかしそこには『取扱注意! 単純に対象分だけ構築時間がバカみたいに増えるし、一度に二体以上掛けても眩しくてうるさいだけから意味が無い。何より一瞬で魔力枯渇して最悪死んじゃうから気を付けてね』と書かれていた。
使えるけど大変なだけで無駄な魔法と言う事らしい。
そもそも複数指定方法と言いながらほぼ同じ術式を指定数分構築しないとダメなので、始祖が言う通りこんな物を幾つも唱えたら魔力がでれだけ有っても足りないよ。
弟子である僕のご先祖も暗号に入れなかったのも納得出来る。
術式の構築関係無く呪文を口にするだけで発動する僕が異常と言う事だろう。
「本当だ。複数指定は現実的じゃないみたい。最悪死ぬとか怖いこと書かれてるよ」
「でしょう? あたしだって複数式の可能性は考えたけど、前提段階で無理が有り過ぎたから諦めたの」
「う~ん、じゃあなんで発動したんだろう。書いているような呪文の構築なんて全くしてないのに……?」
「いいや、そんな事は無いよ。付与魔術師でもある僕の目にはマーシャルが呪文を口にした途端、幾つもの術式構築が発動した事を確認している。だからこそ驚いたんだよ。それにその分の魔力消費もしていた筈さ」
事実が分かる度に余計に訳が分からなくなってくる現状に僕が首を捻っていると父さんが嬉しそうに言ってきた。
父さんが言うように、付与魔術には発動した術式を視る魔法がある。
誰でも使える初歩魔法ではなく、継承紋を宿す付与魔術師にしか使えない高等魔法の部類に入るので僕には使えないからどう視えるのかは分からないんだけどね。
と言う事は、僕は無意識の内に複雑な術式を構築していたって事?
僕って……一体何なんだ?
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