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第二章 幼女モンスターな娘達
第49話 ライアスフィア
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「始祖が目指した力。それを僕が受け継いだ……」
僕は手に浮かぶ赤い契約紋を見詰めながら呟く。
いまだになぜ僕だったのか分からない。
いや、実はテイマーを目指す者全てに知らず知らずの内に同じ試練が課せられていて、それを運良くクリアしたのが僕だけだったと言う事かもしれないけど。
なんせ魔力が高いだけで、それを上手く使う事が出来ずスライムとさえも契約出来ないテイマーなんてそうそう居ないと思うし。
「受け継いだと言うか完成させたと言うのが近いわね」
母さんは何でもないような口調でそう言った。
まるで全てが分かっていると言う感じだ。
「ちょっと待ってよ。僕が完成させただって? 僕何もしてないよ?」
「あら? 気付いてないの? ライアちゃんがその証拠じゃない」
母さんはライアをギュッと抱き締めながら僕の問い掛けにそう答えた。
確かにライアは『絆魔法』とか言う始祖が残した遺産のお陰だろうけど、今言った通り僕自体は何もしていない。
頭の中に浮かんで来た魔法を唱えただけだ。
「禁書によると、始祖は自身の力を遥かに超えるカイザーファングとの契約によって大きく寿命を減らす事になったらしいわ」
「えぇっ! なんだって!」
カイザーファングと契約すると寿命が縮むって事?
そのカイザーファングのライアと契約している僕の寿命も短くなってるの?
どどどどどうしよう! ライアと契約解除しないと僕死んじゃうの? そんなぁ~。
僕は衝撃の事実にあたふたと焦ってギクシャクと変な動きをしてしまう。
「あぁ、安心して。その為の『絆魔法』なんだから。『絆魔法』を使わずにカイザーファングと繋がったままだったら今頃死んでたけどね」
「今頃死んでたって……。あれってそんなにやばい状況だったのか……。けど主従の力の差の問題なら普通なら強制的に契約が解除される筈じゃないの?」
「……前に話した『従魔戦争』の事は覚えている?」
「うん。平和を望む始祖の弟子の子孫達と圧政に反発する従魔術師達との戦いの事だよね? それによって『従魔術』の奥義の多くは封印され『従魔術師』は『テイマー』と呼ばれるようになった」
「そう、けど奥義が封印されたって言う言葉は他の系統の魔術師達からの言葉よ。弟子の子孫達はそうは思っていなかったわ。当時の自らの存在意義を貶める様な事を始祖の弟子達がなぜ従ったのか。本当の目的は別の所に有ったのよ」
「別の所……?」
確かに不思議だったんだ。
幾ら平和を望むと言っても始祖が命を懸けて創り上げた『従魔術』を封印する事に賛成したのか。
「古の従魔術には制限が無かったのは知っているわね。だから強大な魔物を使役する事が出来た。けど、自らの力を超える魔法なんて都合の良いものは存在しないのよ」
「ど、どう言う事なの?」
「行使する力には必ず代償と言う犠牲が存在する。普通は自らの魔力を消費したり、触媒や儀式。それに時には生贄なんてのも必要だったりするわ。要するに自分の力を超える事なんて自分の力だけじゃ無理なの。そして古の従魔術の代償は自らの命だったのよ」
自らの命……?
そ、そんな……。
「始祖がカイザーファングと契約して寿命を減らしたって言うのはそう言う事なの?」
母さんはコクリと頷いた。
そしてライアをもう一度キュッと抱き締める。
「特に始祖の手に浮かんだ赤い契約紋。それはある意味呪いの様な物だったようね。一度結んだ契約はその死によってしか解除出来なかった」
の、呪いって……なんだか一気に危ない話になって来たけど。
本当に僕って大丈夫なの?
「始祖も馬鹿じゃない。その欠陥とも言える術の代償をどうにかしようと、まず力との等価交換じゃなく周囲の魔力を緩やかに代償として変換すると言う術を開発したの。それによって自分より強い魔物と契約で即死亡と言う事は無くなったらしいわ。これが封印された奥義の一つ。それにいつでも術者の意志によって契約を切れるように紋章の改良もしたのよ。それが今私を含むテイマー達の手に浮かぶ白い契約紋の原型よ」
「始祖もその時白い契約紋にしたのかな? これ目立つし出来るなら白に戻したいんだけど」
「いえ、その後の記述でも赤い契約紋に関しての事は載っているから、始祖は白くしなかったようね」
ちぇ~見た目だけでも戻せるなら戻したいんだけどな~。
この赤い光って何故か覇者の手套以外の手袋だと結構漏れちゃうんだよね。
アーティファクトってのがバレるのが怖いから覇者の手套はあまり人前で着けたくないんだけどな。
「強大な魔物と契約出来て術者が自由に契約を切れるようになった改良された従魔術。けれどその従魔術にも副作用が有る事が分かったのよ。それは時と共に土地の魔力が枯渇していくと言う恐ろしいものだった」
「そんな……土地の魔力が枯渇なんて……」
始祖の弟子達が同胞達と戦ってまで従魔術を封印しようとした理由はそう言う事だったのか。
土地の魔力を代償として強大な魔物と契約していた古の従魔術。
それを自らの力までしか契約出来ず、それを従魔が超えたら自動的に契約が切れる様に修正した。
それがかつて強大な力を誇っていた従魔術師が、今日魔術体系で劣等と見下されるテイマーと呼ばれるようになった本当の理由なのか。
「その副作用を知った始祖は弟子達と共に『人魔大戦』を一刻も早く終わらせる為、魔王に決戦を挑む事にしたよの。禁書によると魔物との共存を望んだ始祖は大いに悩んだらしいわ。けれど、従魔の力が無ければ人類は滅ぶ道しかなかった。だから始祖は自らの命を捧げるつもりで、当時中立を保っていた伝説の魔物であるカイザーファングに味方になって欲しいと直談判しに行ったの」
母さんはライアの頭に顔を埋め匂いを嗅ぎながら静かにそう言った。
当の本人なのか分からないけど、ライアは今の話の事は全く分かっていないようでされるがままに目を閉じて気持ち良さそうに母さんに抱かれている。
「カイザーファングは魔物なのに魔物と戦う事に力を貸したって言うの?」
「う~ん、何があったのかまでは書かれてなかったわ。禁書によると始祖が一人で辺境界の更に先に有るカイザーファングの住処に向かったらしいの。そして一か月後にカイザーファングと共に帰って来た。ご先祖様の愚痴が書かれていたわ。『何があったのかを聞いても師匠は何も話してくれなかった』って。何があったのかどんな取り決めが二人の間に有ったのかは分からないけど中立を保っていたカイザーファングは人類の味方になった。それによって勝利の女神の天秤は人類へと大きく傾く事になる」
二人の間に何があったんだろう?
魔物が魔物と戦う為に力を貸す。
従魔術で無理矢理言う事を聞かせた……いや、人魔大戦の最中に魔物との共存なんて絵空事を描いていた始祖がそんな事をする訳が無い。
何故だか分からないけど始祖がそんな事をする筈が無いと僕は思った。
多分だけど始祖はカイザーファングを説得した、そして絆を結んだ……そう思う。
僕はライアを見ながら300年前の始祖とカイザーファングの出会いに思いを馳せた。
「始祖の膨大なる魔力、そして代償を肩代わりする奥義をもってしても、さすがにカイザーファングとの力の差を補える物じゃなかったようね。戦いが長引くにつれ始祖の命は確実に蝕まれていたと、後になって分かったと禁書に書かれていたわ。決戦を急いだ始祖は起死回生の案として魔王を従魔にする計画を実行した。魔王が味方になれば人と魔物が争う理由もないからね。けど、始祖の命はもう魔王と契約する余分な力は残っていなかった……。それが魔王との契約に失敗して封印せざるを得なかった本当の理由」
「そうだったのか……。始祖は最後まで和平の道を探していたんだね。えっと、それで『絆魔法』って言うのは一体何なの?」
「始祖の望まぬ結果に終わった人魔大戦終結後の事よ。始祖は自身の余命が幾ばくも無い事を弟子達に告げたそうよ。そしてこう言ったらしいの。『魔物を従わせるだけの魔法では全てが不幸となる。私とライアスフィアの間に結ばれし絆。その奇跡が光となるだろう』とね」
「ライアスフィア……! 絆が光……」
「代償が要るのは魔石に対して力で無理矢理契約させる為なのよ。意の望まない行為を魔物にさせるんですもの、対価が必要になるのも当然ね。それが力の強い者なら尚更よ。けれど始祖は強大なカイザーファングと契約し三年の月日共に戦った。そして大戦終結後に始祖が死ぬまでの五年間ずっと共に有り続けた。伝承の通りの力ならそれよりも早く代償によって始祖の命か土地の魔力か、どっちかが枯渇してたと思うわ。始祖はカイザーファングとの契約で何かを掴んだ様ね」
「何を掴んだの?」
「……分からないわ」
「分からないって……どうして?」
「だってうちに残っている禁書にはこれ以上の事は書いてないもの。分かっているのは結局『絆魔法』は未完成だって事だけね」
相変わらずライアの頭に顔を半分埋めながら母さんは目を瞑りながら眉間に皺を寄せてそう言った。
とても不満気だ。
「あ……そう」
それ以上の言葉が出ないや。
僕が『絆魔法』を完成させたとか言うから全部知っているのかと思ったよ。
「まぁ、一応始祖の死の間際の事は書かれていたわ。それによると始祖は死の原因をカイザーファングに伝えていなかったみたい。けれどふとした切っ掛けで始祖の衰弱が自分の所為だと知ったカイザーファングは驚いた事に自分の命を絶とうとしたそうよ。それを阻止する為にカイザーファングを『虚船』に封印した。全てを未来に託してね」
虚船……。
叔母さんが言っていた始祖が持つ失われた文明の遺産。
そこに始祖はカイザーファングを封印しただって?
そ、そんな、まさか……。
「ちょっと待ってよ。と言う事は始祖の従魔であるカイザーファングって……」
「ええ、そう。ライアちゃんは始祖の従魔だったライアスフィア本人よ」
母さんは顔を上げ僕をまっすぐ見ながらそう言った。
僕は手に浮かぶ赤い契約紋を見詰めながら呟く。
いまだになぜ僕だったのか分からない。
いや、実はテイマーを目指す者全てに知らず知らずの内に同じ試練が課せられていて、それを運良くクリアしたのが僕だけだったと言う事かもしれないけど。
なんせ魔力が高いだけで、それを上手く使う事が出来ずスライムとさえも契約出来ないテイマーなんてそうそう居ないと思うし。
「受け継いだと言うか完成させたと言うのが近いわね」
母さんは何でもないような口調でそう言った。
まるで全てが分かっていると言う感じだ。
「ちょっと待ってよ。僕が完成させただって? 僕何もしてないよ?」
「あら? 気付いてないの? ライアちゃんがその証拠じゃない」
母さんはライアをギュッと抱き締めながら僕の問い掛けにそう答えた。
確かにライアは『絆魔法』とか言う始祖が残した遺産のお陰だろうけど、今言った通り僕自体は何もしていない。
頭の中に浮かんで来た魔法を唱えただけだ。
「禁書によると、始祖は自身の力を遥かに超えるカイザーファングとの契約によって大きく寿命を減らす事になったらしいわ」
「えぇっ! なんだって!」
カイザーファングと契約すると寿命が縮むって事?
そのカイザーファングのライアと契約している僕の寿命も短くなってるの?
どどどどどうしよう! ライアと契約解除しないと僕死んじゃうの? そんなぁ~。
僕は衝撃の事実にあたふたと焦ってギクシャクと変な動きをしてしまう。
「あぁ、安心して。その為の『絆魔法』なんだから。『絆魔法』を使わずにカイザーファングと繋がったままだったら今頃死んでたけどね」
「今頃死んでたって……。あれってそんなにやばい状況だったのか……。けど主従の力の差の問題なら普通なら強制的に契約が解除される筈じゃないの?」
「……前に話した『従魔戦争』の事は覚えている?」
「うん。平和を望む始祖の弟子の子孫達と圧政に反発する従魔術師達との戦いの事だよね? それによって『従魔術』の奥義の多くは封印され『従魔術師』は『テイマー』と呼ばれるようになった」
「そう、けど奥義が封印されたって言う言葉は他の系統の魔術師達からの言葉よ。弟子の子孫達はそうは思っていなかったわ。当時の自らの存在意義を貶める様な事を始祖の弟子達がなぜ従ったのか。本当の目的は別の所に有ったのよ」
「別の所……?」
確かに不思議だったんだ。
幾ら平和を望むと言っても始祖が命を懸けて創り上げた『従魔術』を封印する事に賛成したのか。
「古の従魔術には制限が無かったのは知っているわね。だから強大な魔物を使役する事が出来た。けど、自らの力を超える魔法なんて都合の良いものは存在しないのよ」
「ど、どう言う事なの?」
「行使する力には必ず代償と言う犠牲が存在する。普通は自らの魔力を消費したり、触媒や儀式。それに時には生贄なんてのも必要だったりするわ。要するに自分の力を超える事なんて自分の力だけじゃ無理なの。そして古の従魔術の代償は自らの命だったのよ」
自らの命……?
そ、そんな……。
「始祖がカイザーファングと契約して寿命を減らしたって言うのはそう言う事なの?」
母さんはコクリと頷いた。
そしてライアをもう一度キュッと抱き締める。
「特に始祖の手に浮かんだ赤い契約紋。それはある意味呪いの様な物だったようね。一度結んだ契約はその死によってしか解除出来なかった」
の、呪いって……なんだか一気に危ない話になって来たけど。
本当に僕って大丈夫なの?
「始祖も馬鹿じゃない。その欠陥とも言える術の代償をどうにかしようと、まず力との等価交換じゃなく周囲の魔力を緩やかに代償として変換すると言う術を開発したの。それによって自分より強い魔物と契約で即死亡と言う事は無くなったらしいわ。これが封印された奥義の一つ。それにいつでも術者の意志によって契約を切れるように紋章の改良もしたのよ。それが今私を含むテイマー達の手に浮かぶ白い契約紋の原型よ」
「始祖もその時白い契約紋にしたのかな? これ目立つし出来るなら白に戻したいんだけど」
「いえ、その後の記述でも赤い契約紋に関しての事は載っているから、始祖は白くしなかったようね」
ちぇ~見た目だけでも戻せるなら戻したいんだけどな~。
この赤い光って何故か覇者の手套以外の手袋だと結構漏れちゃうんだよね。
アーティファクトってのがバレるのが怖いから覇者の手套はあまり人前で着けたくないんだけどな。
「強大な魔物と契約出来て術者が自由に契約を切れるようになった改良された従魔術。けれどその従魔術にも副作用が有る事が分かったのよ。それは時と共に土地の魔力が枯渇していくと言う恐ろしいものだった」
「そんな……土地の魔力が枯渇なんて……」
始祖の弟子達が同胞達と戦ってまで従魔術を封印しようとした理由はそう言う事だったのか。
土地の魔力を代償として強大な魔物と契約していた古の従魔術。
それを自らの力までしか契約出来ず、それを従魔が超えたら自動的に契約が切れる様に修正した。
それがかつて強大な力を誇っていた従魔術師が、今日魔術体系で劣等と見下されるテイマーと呼ばれるようになった本当の理由なのか。
「その副作用を知った始祖は弟子達と共に『人魔大戦』を一刻も早く終わらせる為、魔王に決戦を挑む事にしたよの。禁書によると魔物との共存を望んだ始祖は大いに悩んだらしいわ。けれど、従魔の力が無ければ人類は滅ぶ道しかなかった。だから始祖は自らの命を捧げるつもりで、当時中立を保っていた伝説の魔物であるカイザーファングに味方になって欲しいと直談判しに行ったの」
母さんはライアの頭に顔を埋め匂いを嗅ぎながら静かにそう言った。
当の本人なのか分からないけど、ライアは今の話の事は全く分かっていないようでされるがままに目を閉じて気持ち良さそうに母さんに抱かれている。
「カイザーファングは魔物なのに魔物と戦う事に力を貸したって言うの?」
「う~ん、何があったのかまでは書かれてなかったわ。禁書によると始祖が一人で辺境界の更に先に有るカイザーファングの住処に向かったらしいの。そして一か月後にカイザーファングと共に帰って来た。ご先祖様の愚痴が書かれていたわ。『何があったのかを聞いても師匠は何も話してくれなかった』って。何があったのかどんな取り決めが二人の間に有ったのかは分からないけど中立を保っていたカイザーファングは人類の味方になった。それによって勝利の女神の天秤は人類へと大きく傾く事になる」
二人の間に何があったんだろう?
魔物が魔物と戦う為に力を貸す。
従魔術で無理矢理言う事を聞かせた……いや、人魔大戦の最中に魔物との共存なんて絵空事を描いていた始祖がそんな事をする訳が無い。
何故だか分からないけど始祖がそんな事をする筈が無いと僕は思った。
多分だけど始祖はカイザーファングを説得した、そして絆を結んだ……そう思う。
僕はライアを見ながら300年前の始祖とカイザーファングの出会いに思いを馳せた。
「始祖の膨大なる魔力、そして代償を肩代わりする奥義をもってしても、さすがにカイザーファングとの力の差を補える物じゃなかったようね。戦いが長引くにつれ始祖の命は確実に蝕まれていたと、後になって分かったと禁書に書かれていたわ。決戦を急いだ始祖は起死回生の案として魔王を従魔にする計画を実行した。魔王が味方になれば人と魔物が争う理由もないからね。けど、始祖の命はもう魔王と契約する余分な力は残っていなかった……。それが魔王との契約に失敗して封印せざるを得なかった本当の理由」
「そうだったのか……。始祖は最後まで和平の道を探していたんだね。えっと、それで『絆魔法』って言うのは一体何なの?」
「始祖の望まぬ結果に終わった人魔大戦終結後の事よ。始祖は自身の余命が幾ばくも無い事を弟子達に告げたそうよ。そしてこう言ったらしいの。『魔物を従わせるだけの魔法では全てが不幸となる。私とライアスフィアの間に結ばれし絆。その奇跡が光となるだろう』とね」
「ライアスフィア……! 絆が光……」
「代償が要るのは魔石に対して力で無理矢理契約させる為なのよ。意の望まない行為を魔物にさせるんですもの、対価が必要になるのも当然ね。それが力の強い者なら尚更よ。けれど始祖は強大なカイザーファングと契約し三年の月日共に戦った。そして大戦終結後に始祖が死ぬまでの五年間ずっと共に有り続けた。伝承の通りの力ならそれよりも早く代償によって始祖の命か土地の魔力か、どっちかが枯渇してたと思うわ。始祖はカイザーファングとの契約で何かを掴んだ様ね」
「何を掴んだの?」
「……分からないわ」
「分からないって……どうして?」
「だってうちに残っている禁書にはこれ以上の事は書いてないもの。分かっているのは結局『絆魔法』は未完成だって事だけね」
相変わらずライアの頭に顔を半分埋めながら母さんは目を瞑りながら眉間に皺を寄せてそう言った。
とても不満気だ。
「あ……そう」
それ以上の言葉が出ないや。
僕が『絆魔法』を完成させたとか言うから全部知っているのかと思ったよ。
「まぁ、一応始祖の死の間際の事は書かれていたわ。それによると始祖は死の原因をカイザーファングに伝えていなかったみたい。けれどふとした切っ掛けで始祖の衰弱が自分の所為だと知ったカイザーファングは驚いた事に自分の命を絶とうとしたそうよ。それを阻止する為にカイザーファングを『虚船』に封印した。全てを未来に託してね」
虚船……。
叔母さんが言っていた始祖が持つ失われた文明の遺産。
そこに始祖はカイザーファングを封印しただって?
そ、そんな、まさか……。
「ちょっと待ってよ。と言う事は始祖の従魔であるカイザーファングって……」
「ええ、そう。ライアちゃんは始祖の従魔だったライアスフィア本人よ」
母さんは顔を上げ僕をまっすぐ見ながらそう言った。
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